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第三者視点によるコア中心の話になります。
『………黄金龍のブレスの影響により、地脈が分断されました。この影響により、初日の獲得できた1500DPから300DPへと減少いたしました』
ダンジョンは、マスターがいなければ地脈からしかDPが獲得出来ない。
DPを消費すればマスター不在の状態でもDPを獲得出来るようになるマスター権限を獲得出来るが、マスターがいなければ自由にDPを使用する事が出来ない。
DPをコアの意思で自由に使用するには、やはりマスターが必要だった。
『闇の神ナラヴィー様にご報告いたしました』
ナラヴィーから返事が来れば、現状を鑑みてDPの使用が許可されるかもしれない。
少なくとも、ダンジョンの修復を行う為のDPの使用は許可されるはずだ。でなければダンジョンがダンジョンではなくなってしまう。
『………闇の神ナラヴィー様の命令により、闇の神ナラヴィー様に顕現して頂く為の祭壇を作成致します。作成する為、2万DPを使用致します―――所持ポイントが足りません。闇の神ナラヴィー様に通達…。完了致しました』
ポイントが足りず、ナラヴィーに足を運んで貰う事が出来ないようだ。
『闇の神ナラヴィー様より支援DPの受信を確認。特別DPを3万DP入手しました』
『塔エリア最上階の空きスペースに祭壇を作成。完了致しました。祭壇に闇の神ナラヴィー様の依り代となるナラヴィー様の石像を作成致します。作成する為、1万DPを使用致します。完了致しました』
ダンジョン監視の機能がまだ獲得できていない為、ダンジョンコアには確認する事が出来ない。
現状、ダンジョンマスターである歩との接続も切れているため侵入者の感知が行えない。
侵入者とは違うが、ナラヴィーが来たかどうかもコアにはわからない。
「やあ、2日目にしてペナルティとはスピード記録だな」
『ご足労有難う御座います、ナラヴィー様』
「へえ、既にいい部屋を与えられているんだな。他のメンバーはまだ裸で机の上に置いてたりポッケに突っ込んでる連中ばっかだぜ?」
『マスターにお願いしたら、ご自身の部屋より先に賜る事が出来ました』
普通のダンジョンマスターは自分自身を守るため、魔物やトラップの作成を優先する。
地脈からのDPも侵入と撃破のDPと比べると雀の涙、コアルームに力を入れるマスターはほとんどいない。
コアルーム自体が無いダンジョンの方が圧倒的に多い現状だ。
「そうなんだ? 良かったねえ………で、そんないいマスターをどうして諫められなかったんだい?」
『何故、このダンジョンが攻略不可能のダンジョンになってしまったのか、ご説明をさせて頂いても宜しいでしょうか?』
「生まれたてのダンジョンコアは硬くていけないや。もうちょい柔らかくしゃべってくれてもいいのに」
『申し訳御座いません。まだ二日目の新米コアなのでご容赦下さい』
「はいはい、じゃあ説明してよ」
コアはナラヴィーに、ドラゴンによってギミックが破壊された経過を説明。
「…あの阿呆龍、迷惑かけやがって。まあ原因はわかったよ」
『ご理解頂き、有難うございます』
「とは言っても、ペナルティは解除出来ないよ。少なくともダンジョンの修復が完了するまでは今のままだ」
『やはり、そうなりますよね』
「ペナルティは神々で決めたルールだ。同情の余地はあるけど優遇は出来ない」
神だからこそ、違反できないルールがある。そうつぶやくナラヴィーの目は少し優しい。
「だから、君はダンジョンの修復を最優先でやってくれ………ああ、それと【謎解きの扉】のギミックは一番最後にするように」
『ナラヴィー様!』
本来であれば、ダンジョンの解放が最優先のはずだ。
そして、解放されたダンジョンの中で身動きが取れなくなったダンジョンマスターが悲劇を迎える。
それが本来のダンジョンの姿である。
「今回の騒動は神の不手際だよ。あの金銀の龍はどちらも神だからね。だから神ならざる者にはどうしようもない。このダンジョンの修復、すぐには終わらないだろう?」
『申し訳ございません、被害の状況が把握できませんので、どのくらいの期間がかかるかは不明です』
「監視がまだ使えないか。まあダンジョンとしての格がまだ低いからな、2日目じゃしょうがない。空間のゆがみはこちらで修復するからお前はダンジョンの穴の修復に集中するように。DPは優遇出来ないから、地脈から地道に頑張ってくれ」
『了解いたしました。ナラヴィー様、感謝致します』
ダンジョンコアはナラヴィーに感謝の言葉を贈る。
「素直でいい子だね。あと地脈からのDP回収と、そのDPでのダンジョンの修復だけじゃ暇だろうから…ちょっと待っててね」
そう言い残すと、ナラヴィーはコアルームから姿を消し…3分もしないうちに戻って来た。
「あったあった。日本人だから持ってると思ったんだ。君にこれを組み込んでおくから、暇つぶしに遊んでなよ。それじゃあ修復頑張ってね」
『精一杯修復に励ませて頂きます』
「おう、じゃあよろしくー」
ナラヴィーを見送ると、コアは手持ちのDPをすべて修復に回す。
手持ちのDPで修復できる箇所はたかが知れているし、DPの消費と結果は基本的にすぐ行われてしまう。
『………マスター、コアは頑張ります。待っていてください』
コアは自身に組み込まれた新たな機能と向き合い、残った時間を消化するのであった。
長い長い年月をかけて…。




