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ダンジョン同士の食い合い……燃えるっ!
「まあ簡単に倒される状況を作らない事も大事です。それぞれのコア様同士で、同盟を組んだ上で招待し合うのが通例ですね」
「同盟?」
「今、コア様の情報更新に含まれる機能で御座います。お互いのコア同士で同盟を組むことにより、お互いのダンジョンへの不可侵を結びます。これによりお互いの所属の魔物への攻撃の禁止や、ダンジョンコア及びダンジョンの施設への攻撃を禁止する事が可能です」
「んー? そこまでしてダンジョンマスター同士でつながりって必要かな」
「斎川様、お互いの魔物の交換や強い侵入者の情報、余所のダンジョンを襲うダンジョンマスターの情報など、マスター同士での繋がりも馬鹿に出来るものでは御座いませんよ?」
余所のダンジョンを襲うダンマスとか恐ろしすぎるんですけど……。
「ダンジョンマスターの皆々様、斎川様のように礼儀正しい方ばかりでは御座いませんから」
笑顔で言われても。
「お話し中、申し訳ありません。マスター」
戻ってきたシエルが魔物を引き連れている。
「防衛にコロ様をリーダーとして、ガーゴイルとリビングガーディアンを各10体づつ。それとラッシーセルキーとリブセルキーが5体。サタンコックとチム様、リリナをお連れ致しました」
「おお、コロ! よろしくなー!」
コロ可愛い。わしゃわしゃ撫でてあげる。
「見事な防衛戦力でございますね。それと補足ですが、こちらの浮島には上空から攻める事は不可能ですのでご安心下さい」
チムにはちゃんとチュムとチェムも刺さっている。
「「 妾達にお任せありんす 」」
「わん!」
チムはしゃべらないのでチュムとチェムが返事。
「ゲート付近の警備をお願いいたします。本当は銀ちゃん様をお呼びしたかったのですが、フィルに止められてしまいました」
うん、ナイス判断だと思うヨ。
「その他の者たちもそれぞれの仕事場に移動を。後にイービルドワーフ達が家具を持ち込みますのでその前にお掃除を終わらせて下さい」
「「 はい! 」」
シエルの指示により、各魔物達が屋敷に散っていく。
「コアに出して貰った?」
「はい、サタンコックとリビングガーディアンとガーゴイルはDPで出しました。連れてきたのは屋敷に勤めていたベテランのみですが」
「うん、問題ないよ」
屋敷の中がにわかに賑わっていく。
あれ? こっちにくる扉ってチムが通れるほど大きくなかったよな?
「斎川様の従僕達は優秀ですね。コア様にもある程度権限を与えられている御様子。素晴らしく思います」
「そう?」
「ええ、コア自身にDPをまったく使わせない設定にすることも御座いますから」
「確かに……」
勝手に使うなって言うと、コアはきっちりDPを使わなくなる。すっげえ文句言うけど。
今回はオレがダンジョンの外に出るから、フィルと相談したうえでなら自由にDPを使っていいと話をしてある。まあ3000万DP以下にはするなと言ってあるが。
「さて、同盟の話ですがお気をつけ頂きたい点がいくつか御座います」
「んー? なんとなく想像つくな」
「おや。どのような点かお聞きしても?」
「ダンジョンの情報の抜き取りとかでしょ。同盟を組んだ相手の防衛能力を把握したうえで同盟を破棄とか、同盟を組んだ相手のダンジョンに部下を置いたうえで同盟破棄して内部から攻撃をかけるとか」
「……中々どうして、斎川様は油断出来ませんね」
「それほどでも」
「アユム様は優秀で御座いますから」
聞いてないよシヴィー。
「仰る通りで御座います。ですが同盟を一方的に破棄は行えませんのでご安心下さい。同盟を破棄するには一度その相手のダンジョンから自陣営に所属している魔物をすべて引き上げないといけません。それと同盟破棄後、1か月はそのダンジョンへ戦争を仕掛ける事が出来なくなります」
「戦争……1か月か、でも油断は出来ないな」
「おや、1か月では準備が間に合いませんか?」
「そうだな、ダンジョン攻略を目論む侵入者に情報を流したり、余所のダンジョンマスターに情報を流して攻めさせるとか、ダンジョンに攻略のヒントとなる物を残しておくとか……」
考えれば色々出てくる。
「恐ろしいことを考え付きますな」
「やるつもりはないよ。でもやられる危険性は考慮しておかないといけないかな」
同盟を組む相手は、しっかり考えないといけない。




