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中々外に出ないね。
「こちらが斎川様の専用の個室になります。まあ個室と言うか浮島ですけれども」
空中に浮かぶ島、そこそこ広い大きさでテラス付きの屋敷に庭も広い。
「こちらのゲートで、斎川様のダンジョンと出入りが可能となっております。横のゲートはナラヴィー様のダンジョン、夜会の会場へと繋がっております」
「結構広い。周りに浮かんでいるのは他のダンジョンマスターの浮島ですか?」
「左様にございます。それと、こちらはまだ斎川様のダンジョンでございます。コア様、認識出来ますでしょうか」
え? お外じゃないの!? オレの緊張を返して!
『ああ、だがちょっと待ってくれ。情報が一気に流れ込んでくる。処理するのに時間をくれ』
「おや? ああ、なるほど。斎川様のコア様はずいぶんとこちらに接続していらっしゃらなかったんですね」
「こちらにって言うか、ダンジョン作ってから初めて来たんだけど」
初めてのご招待だ。
「初参加ですものね。初参加時にダンジョンコアがこちらに接続すると、ナラヴィー様のコア、マザーコア様からデータが送られてくるんです」
「そうなんだ! 何が出来るようになるんだ?」
「分かりやすい部分ですと、こちらへつながるゲートの固定化でしょうか。基本的には夜会の際にしかこの扉は顕現しませんが、DPを使用することでこちらにいつでも行き来出来る様に扉を置いておけるようになります。それと、夜会に出席する事により出来上がったコネクションを利用できるよう、別のダンジョンマスターと連絡を付けることが出来る様にもなります」
久しぶりにネットに繋げたパソコンのバージョンアップみたいだ。
「そうそう、斎川様が初参加ですので夜会初参加者の顔合わせも御座います。ご参加なされますか?」
「それはいつ?」
「明日の夜に御座います」
「結構時間が空くんだね。着替えようかな」
「重ね重ね、ナラヴィー様の説明不足を謝罪させて頂きます」
背の低い羊角の執事が深く頭を下げた。
「初参加の斎川様には、屋敷を整えるお時間を設けさせて頂いております」
建物だけで、中身は空っぽらしいからね。
「それと、こちらの浮島のご説明をさせて頂きます」
「それではテラスにいらしてください。お飲み物のご準備を致します」
手に持っていたバケットをシエルが持ち上げる。
丁寧にテーブルを拭き上げて、手早く紅茶の準備を行う。
プチバッフォサイズのカップとかいつの間に用意したの?
「これはこれはご丁寧に、有難う御座います」
「プチバッフォ様のお話はオレが聞いておくから、二人は戻って着替えてきな。せっかくの衣装がシワになっちゃう」
「いえ、このままで大丈夫です」
「夜会の時間になったら別のドレスに着替えますわ」
そう言ってミリアは着席。シヴィーはシエルの給仕を引き継ぐ。
「シエル、あなたは屋敷を回ってきてください。その後、フィルのところに報告を」
「畏まりました、有難うございますシヴィー。マスター、プチバッフォ様、失礼いたします」
「はいよ、魔物が必要ならコアに出して貰って」
「畏まりました、また後程」
シヴィーの言葉にシエルは退席。
「さて、では色々とご説明させて頂きます。何からお話ししましょうかね」
悪魔執事のプチバッフォが紅茶に口を付けると、説明を開始した。




