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『ばいん』より『ぼいん』派。『ばいん』も好きよ? 『すとーん』も好きだけど。
煌びやかな衣装が立ち並ぶ室内に足を運ぶ。
「わあ……素敵」
ミリアが感嘆の声を上げ、一番近くにある衣装に触れる。
「アラクネ一族の総力を結集し、防刃・防魔・防打に優れ、汚れが付きにくく臭いの残りにくいまったく新しい布で作成しやんした」
「手触り、肌触りにもこだわり抜き、重さも軽く、着ていてもストレスにならない品質でありんす」
そう言いながら、チュムが緑色の布を。チェムが藍色の布をこちらに差し出す。
「染色にも気を遣いんした。色ムラがおきんせんよう、布1枚作るたびに染料を交換し布に十分に色を染み込ませてありんす」
「匂いが残らない様、二度染め三度染めを行う度に魔法と天日の両方を実施しんした」
更にずずいと渡してくる。
オレはミリアとシヴィーに視線を向けて、2人に受け取らせる。
チュムとチェムが不満そうな顔をするが放置だ。
「2人共、どうだ?」
「素晴らしい肌触りです。こんなにも美しく、煌びやかに光を受ける布なんて見たこと御座いません」
「よろしいのではないのでしょうか」
ミリアは嬉しそうに微笑み、その布を大事そうに抱き留める。
シヴィーは興味が無さそうだ。
「お二人のサイズに既に合わせてありんす、気になる衣装をお試しを。左側3列がミリア様、右側3列がシヴィー様のものでありんす」
「どれにしようかしら」
「ではこれで」
シヴィーが徐に手に衣装を取ると、魔力で作っていた服を解除し裸に。
「ちょっと!」
「? 着替えるのでしょう?」
シヴィーが全裸で首を傾げる。
同時にその大きな胸が揺れる。
「そういう問題じゃないでしょ!」
「ああ、そうですね。このドレスならばもっと髪が短い方が合いますか」
そう言って長く黒い髪が短く。
ああ、髪の毛で隠れていた部分も見えるな。肌色面積が……。うん大人しく後ろを向こう。
「アユム様? いかが致しました?」
「チェム! チュム! 試着室!」
「「 は、はい! 」」
「あ、コラ! なんですか! 持ち上げないで下さい! 担ぐな! アユム様!」
「いってらっしゃーい」
ちゃんと試着室も用意していたらしく、4人の声が遠ざかっていく。
カーテンの閉まる音が聞こえた。
「ちょっと! なんで下着が無いのよ!」
「下着ですか? 普段から付けてませんが」
「チュム! チェム!」
「「 すぐ用意しんす! 」」
「この姿は擬態ですよ? 汗もかきませんし」
「そういう問題じゃない! 胸の形も崩れるでしょ!」
「いえ、だから擬態ですから崩れるものでは……」
「なんで崩れないのよ! あたしより大きいのに理不尽じゃない! 大体擬態ならもっと小さくしなさいよ!」
「いえ、アユム様がお好きそうですので」
いえーい! 聞こえなーい!
「ぐぬぬ……スタイルだってあたしよりいい癖に! なによこのくびれ!」
「エメラ様を参考にさせて頂きました」
「神様を参考にしない! 勝ち目無くなるでしょう!?」
ミリアも好みだヨ。
「こちらのお召し物に変更しんす。下着もセットのイブニングドレスでありんす」
「ミリア様も、シヴィー様の事はお任せを。ご自身の分をお選び下さい」
衣装を選ぶのも大変だね。
「マスターはこちらにどうぞ。マスターのお召し物も出来上がっておりますから」
「オロボス?」
オレはスーツだよ?
「マスターのお召し物もご用意して御座います。ご要望のスーツも含めて普段着から式典用のお召し物もご準備しました。ご試着をお願いいたします」
そのまま連れ去られるオレ。笑顔で待機しているセルキーの数が多いよ……。




