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何気にオロボスがお気に入り
「あれ? オロボスどしたの?」
チムとチュムとチェムと一緒に、植生研究所で魔道具や魔法薬の作成を行っている馬面レディのオロボスがいた。
「チムにマスター達の衣装に使う魔法糸の相談を受けておりまして」
「チムに?」
チムは下半身の蜘蛛の部分だ。
「なんでも頭の上の2人が、それぞれ衣装の作成で意見が合わないらしく」
なんと、3つの意思がそれぞれ独立していると聞いていたが……。
「チム単体だったらそのようなことはなかったらしいのですが、上の2人にもお名前を頂いた事で、少々対立しているようでして」
「対立なんてしたことありんせん」
「喧嘩なんかしたことありんせん」
お互いの肩を組んで仲良く左右に体を揺らす。
2人とも顔腫れてるよ?
「んー、なんだかなぁ。まあいいや、出来た?」
「それはもちろん」
「ご覧になって頂ければ」
そう言うと、二人はチムからいそいそと抜け出してオロボスと並んで歩く。
「え? 離れて歩けるの?」
普通に人間にしか見えない女の子2人が出てくる。
下半身が蜘蛛に突き刺さってて、そこから這い出てくる様はちょっと異様。
「ええ、糸でつながっておりんす」
「糸が切れても戻りんす」
「「 それではご案内させて頂きんす 」」
なんか違和感のある半端な花魁調の言葉が気になるが、とりあえず無視して2人(2匹?)の後を追う。
「星丸様はご遠慮を」
「羽毛が衣装に付くのはごめんでありんす」
「ぎゃううん……」
すっごい残念そうにこっちをみる、そんな目で見てもダメだよ。
「星丸、ステイ」
「ぎゃう!」
抗議の声を上げるが、大人しく待っててくれる。
うん、いい子だ。
「コア様に見せて頂きんした【かたろぐ】なる資料、大変興味をそそられんした」
「おかげでここのところ、毎日新しいアイディアが止まりんせん」
そう、ここにもモニターを設置してあるのだ。
「アユム様、いつの間にこの者達に名をお与えに? しかも私どもの衣装を用意してくれるなど」
「ナラヴィー様がいらした時、ビーチから戻る前にね」
すぐ移動したし、シヴィーも片づけ手伝ってたからいなかった時だね。
「ああ、あの時でしたか」
「ドワッジに彫金も頼んだし、ドワッジが作成した装飾品にオロボスが防御の魔法の付与をしてくれてる」
武装なんて重そうで動けなくなりそうだったから、普通に衣装にした。ちなみにオレはこちらに来た時
と同様にスーツの予定だ。
「「 それでは、ご覧に入れんす 」」
ロッジのような山小屋の一つ。中に入り更に奥に、左右開きの扉をチュムとチェムが手をかけて開く。
いくつものハンガーラックが並ぶ……多くね?




