08
戦闘描写力の決定的な不足っ!
「なんだ!?」
『ダンジョン外からの衝撃のようです。認識不可能です』
咄嗟に屋上の縁に身を潜めて衝撃をやりすごす。
縁から顔を出すと、そこにいたのは…。
「ド、ドラゴン…」
『ドラゴンがドラゴンを襲ってるようです』
「ダンジョンの外ってことはここから15km離れてるんだよな? それにしてはでかくないか!?」
銀色に光り輝く鱗を持った巨大なドラゴンが、金色の神々しく銀龍を超える巨体のドラゴンに追いかけられている!
グラアアアアアアアアアアア!!
黄金の龍が咆哮を上げ、翼を広げる。
太陽の光を背負った龍が、銀龍にブレスを放つ!
「さっきの衝撃はあれかよ!」
銀龍が身をひるがえし、ブレスを避けるとその先にあった山が一つ抉り取られた…。
「なんつう無茶苦茶な威力だ…」
『強いですね、欲しいです』
貪欲な子がいた。
「ありゃあ、どうやっても無理だろ…てか銀龍こっち向かってくんな! こっち来んなこっち!」
地面スレスレに高度を下げて、銀龍がジグザグに飛行して黄金龍のブレスを回避。
その度に衝撃と振動が塔とオレを襲う!
先ほどまでアホなほど戦っていた噴水周りの魔物達も慌てて去っていく。
「そりゃそうだよな…黄金龍がブレスを吐くたびに地面にクレーターが出来てるし…」
隕石の落下地点と言われても不思議ではないような穴があちこちに出来ている。
川が途切れて水が穴に流れ込んでいくのが見える。
しかもそれぞれの穴、角度の問題もあるが底が見えない。
「うわ、くそ!」
『気を付けて下さいマスター』
「何に気を付ければいいんだよ!」
再び顔を出すと、銀龍が平原の側面を縫うように飛ぶ。
「あぶねえ!」
黄金龍が上空から銀龍に襲い掛る! その巨体を武器にし、覆いかぶさる様に爪を振りかぶる!
グオオオオオオオオオオオ!!
銀龍から低い咆哮! 打ち付けられた箇所から無数の鱗が飛び散り、キラキラと光る。
銀龍も負けじとブレスを撃つ!
黄金龍はその巨体に似合わず、俊敏な動きで躱す。
チュゴーーーン!
「東の山が…」
『抉れましたね』
「あれは消滅って言うんだと思うが…」
黄金にも負けないとんでも威力を出す銀龍。
『黄金の龍が飛びます』
翼を広げて地面から飛び上がると、銀龍に向かいブレスの態勢。
「なんでこんなとこでドラゴンがバトルしてるんだよ」
『どちらか、もしくは相打ちになりダンジョンのエリア内で亡くなってくれれば良いのですが』
「あのブレスを受けても塔は平気なのか?」
『黄金龍から神の気配を感じました。この塔も神の恩恵により作られていますが、黄金龍の方が格は上だと予想されます』
「つまり?」
『黄金龍の一撃は塔を粉砕できる可能性が十分に考えられます』
「いやだあああ!」
せっかく作ったのに!
『異世界の科学の発展した世界から来た異世界人が禁則事項に触れる物質・兵器を作成した際に神罰を執行するのが神気を纏った龍だと言われています』
「それってあいつだよねえ!?」
『恐らく』
あの銀龍なにしやがったあああああああああ!!??
『マスター! 不味いです! 早く私をコアルームへ! マスターも急いでお部屋に移動して下さい!』
「は!? え?」
『いいから! 急いで!』
コアから逼迫した声が出る!
「ああもう!」
オレはダッシュで階段を降り、コアをコアルームの座布団に安置。
『お早くマスター! お部屋に!』
「なんなんだ! てかなんでこんな目に…」
ガアアアアアアアアアアア!!
またブレスを放ったんだろう。一際強烈な振動が塔を襲う。
『………ダンジョンギミックの一部の破壊を確認。【謎解きの扉】の攻略が不可能となりました』
「は?」
『これに伴い、塔内部へと侵入する事が不可能となりました』
「まじか!?」
まさか…。
『マスターのダンジョンが攻略不可能となったのを確認。更にダンジョン内に位相空間が発生。ダンジョンに穴が開きました』
「禁則事項かよ! しかも2つ!」
どっちもオレのせいじゃないぞ!
『ダンジョンマスター【斎川歩】のマスター権限の凍結を開始致します』
「待てコア!」
『申し訳御座いませんマスター。マスターからのダンジョン接続、及びダンジョン側からマスターへの接続能力の凍結を行います…完了いたしました。同時にダンジョンマスター【斎川歩】のDPの使用権とダンジョンコアへの命令権が凍結となります』
オレは慌てて部屋から出ようとするが…部屋の扉が開かなくなってしまっていた。
『ダンジョンコアの安全を確保するため、【斎川歩】のダンジョン内での自由な行動を禁止致します』
「ふざけんな! 開けろ! コア!!」
ドアノブを何度も回すが扉は動かない。
木製のドアのはずなのに、叩くと金属を叩いたように手に痛みが走る。
蹴った足も痛いだけだ。
「そうだ! マニュアル!」
この状況を打破できないか、オレは机の上に置いてあるマニュアルを開く。
『神界、闇の神ナラヴィー様へ現状を報告いたしました。ペナルティ内容の確立が完了するまで、【斎川歩】の意識を凍結させます…マスター、短い時間でしたが今まで有難う御座いました』
「待て! 時間をくれ! マニュアルに何か打開策が書いてないか見るから!」
オレはコアの言葉に慌てて顔をあげる。
『…おやすみなさい、良い夢を』
その言葉を最後に、オレの視界が一瞬にして黒く塗りつぶされた。