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厄災と呼ぶか災害と呼ぶか、日本人的に災害のが言いやすいから歩にはそう言わせる事にしました。
『ご主人っ! 例の冒険者が到着したって!』
「例の? ああ、海人族だっけ。うちの人魚達の親戚?」
モニターに表示されたのは、首元にエラのある顔色の青白い人間だ。
「顔色が悪い連中だな。あと耳が丸い」
人間のような耳はついていない。丸い突起物の先が凹んでいる。最終形態のフ○ーザ様の耳と言えば伝わるだろうか。
「海人族は別の世界から避難してきた種族が祖の生物ですから、人魚達とは別物ですね」
「ほーう?」
じゃあ異世界人の子孫的な感じか。
ウチのマーマン、マーメイド達は上半身が人間で下半身が魚のスタイルだ。
パッと見た感じ、海人族ってのは二足歩行に見える。
「人魚達と違い海中で生活するほど海には馴染んでおりませんが、海に近い地域での生活を好み、陸上以上に水中機動を得意とする者が多いと聞きますね」
「シヴィーは物知りだな」
「有難うございます」
『それで、どうするです? 諜報員に言って暗殺するです?』
「いやぁ、あいつら動かしちゃダメでしょ」
投入したばかりの下級魔族、まだ街に馴染んでないのにいきなり動かすのはまずい。
「じゃあノイが行ってくるです!」
「もっとあかんて。で、連中は何をしてるんだ?」
オレが眺めていると、6名の男女の海人族の冒険者と2人の人間の冒険者が口を開けて外壁を眺めている。
「随分と立派な街だな、聞いてたのと大分違うが…」
「お、俺も驚いているよ」
ああ、外壁に驚いてるのね。
「おかえりなさい、クロードさん、ドニーさん」
「ああ。ただいま?」
「お、おう」
クロードさんとドニーさん。これは人間の冒険者の事らしい。
外壁の出入り口に立つ門番が8人を迎えていた。
「はは、驚きますよね。先日地面から生えてきたんです」
「生えて…?」
「ええ、あと塔も1階増えてますよ」
「そうなのか…やはりダンジョンは生きているんだな」
壁作ったり塔の階層増やしたり、金貨出したりお酒と果物とお菓子出したりしたからね。
もう街の人たちもすっかりダンジョンの存在を受け入れているみたいだ。
「ええ、先日はドワーフ達が大変でしたよ」
「ドワーフ?」
「あと商人も大騒ぎでした」
お酒と金貨が原因だね。
「えっと、良く分かりませんが…」
「とりあえずギルドに向かいますか。街に入るのに何かしらルールに変更はないですよね?」
「ええ、後ろの方々の話もお聞きしています。申し訳ございませんが、ギルドカードの提示をお願いします」
2人も門番の兵士にカードを渡す。あるんだギルドカード…ちょっと憧れるな。
「しばらくこの6人の動向を注視しておかないとだな」
『デーモンアイズに言っておくです! ノイも一緒に監視するです!』
「湖の調査をしに来た連中だ。だが湖までは手を出すなよ? 湖の魔物達には自分の領域から出ない様に徹底させること。こっちが覗き見してるのがバレるかもしれないからな」
その為に湖に魔物を配置しているし、銀ちゃんに名前を与えた。
『まー銀ちゃんに勝てる奴はいないだろ』
災害だしね。




