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~ 真夜中のダンジョンマスター ~
領主達の話し合いは中央騎士団が来た時にどこに滞在させるか、どのような接待を行うかなどの話に移行した為、デーモンアイズに監視を任せる事にする。
「井戸ですか。確かこの塔の扉を開く鍵の一つだとお伺いしておりますが」
塔の手前に設置してある噴水を中心に、ダンジョンの四方へと歩くとそれぞれの井戸に繋がる。
その井戸に、やはり塔の周りに配置してある楔石を投げ込むことにより噴水が反応を起こし、塔の扉が開くギミックだ。
「井戸の周りには魔物を配置しておいたんだが、今はどうなってる?」
『モニターニ出シマス』
デーモンアイズはこちらの会話にも参加できる出来た子だ。
『オオ、中々ニ粒揃イ! マスター、アノデスギンチャクニ名ヲ与エテハイカガデショウカ? アヤツガイレバ人間ノ冒険者ノ百ヤ千、物ノ数デハアリマセン!』
デーモンアイズがうねうねしながらうねうね動くイソギンチャクの魔物を推薦する。
「あー、名前か。てかオレ、こんな奴出したっけか…」
『マスターが水の神ブルーシェル様の加護をもらった時にヘルギンチャクから進化したんだ』
「おお、コアおはよう」
『おはよ、まだ夜中だがな』
ヘルギンチャクの時と比べると、大幅に大きくなり触手の数も恐ろしく増えている。
「あ、なんか掴んだ」
『ケイブシャークだな。夜中になると湖の中に出てくるんだ』
2mくらいの目の無い鮫を、木の幹くらいの太さの触手が縛り上げてへし折った。
鮫は口から色々と出しちゃいけない系の物を出しながらデスギンチャクの体の中心の口に運ばれ、噛み砕かれていく。
『ケイブシャークは獰猛で、血の匂いを嗅いだら例え同族だろうが親だろうが子だろうが襲い掛かるんだ。ヘルギンチャク時代からああやって毎日ケイブシャークを倒してるから、あいつ相当強いぞ』
コアの言うように、次々とケイブシャークがデスギンチャクの触手に襲い掛かって…掴まれ潰され食われていく。
「食べ放題だな。あのケイブシャークはどのくらい強いんだ?」
『ソウデスナ、ウチノ人魚連中デモ1対1デハ苦戦シマショウ。アーリマン共ナラバ1人デモ余裕ヲ持ッテ倒シマスガ』
なぬ? そこそこ強いじゃないか。
「じゃああれを軽く潰して食らうデスギンチャクって」
「デスギンチャクはいわゆる災害生物ですわ。水生生物が死滅しないのはデスギンチャクの移動速度が非常に遅いからと言われております」
災害生物…。
「基本的に水の中が好きですが、水陸両用です。地上にでたデスギンチャクを討伐するために、各国がその垣根を越えて英雄を投入。地上の一部の地形が変わる程の高火力を持ってなんとか海へ帰したと言われています」
倒せなかったのか。
『火ノ魔法ヲ大量ニ食ライ、肌ガ乾燥シタカラ海ニ帰ッタト後ノ証言ガ確認サレテオリマス』
「弱点は一応あるんだね。でも水の中で火の魔法はきついなぁ」
「それは並のデスギンチャクでしょう? アユム様に魔力を与えて貰い、名を授かればどのクラスになるか…ケヒヒ、こほん。失礼。楽しみですね」
『マスターニヨル強化ガ施サレレバ、伝説ニ聞クヨウナ海ノ一族デモ苦戦ハ免レマセン』
でた海の一族。
「まあ呼ぶか。名前何しようかな」
「アユム様、指令室では狭いので外で出しましょう」
うん。明日ね!




