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獣型連中にダンジョンコアは荷が重そう…。
「名持ちであと聞いてないのは星丸くらいですわ、アユム様」
「コロもいるぞ」
「コロ?」
あ、顔合わせさせてないな。
「塔の第1階層のボスだ。まあ今度でいいや。それよりケレンセリッシュ様にいい事を聞いた。ここはプロに任せよう」
「畏まりました、スプリガンを呼び出します」
「違うから、宝物庫になんていれないから」
あそこ空き瓶置き場だし。
『コアは使えないダンジョンコアです。宝物にも劣るコアに宝物庫なぞ烏滸がましいでしょう。漬物石にもなれない駄球など破壊してください』
ネガティーブ!
『エルダードリアード達が漬物作ってるぞ』
そんな情報はいらない。
「そうじゃなくてだな。ダンジョンはナラヴィー様の管轄なんだろ? だからナラヴィー様に献上しようと思う」
『ナラヴィー様? どなたですか?』
天然ダンジョンコアは知らないらしい。
「闇の神様だよ。ここのコアとオレを引き合わせてくれた神様だ」
『だな』
ナラヴィー様はオレ達を出会わせてくれた張本人だ。この間来た時も、ダンジョンを作るオレの同郷の人間を求めていた。
きっとこのコアにも新しいマスターを用意してくれるだろう。
『つまり、私はまたマスターを持つことが出来ると?』
「多分ね」
『漬物石以下の私でもまたマスターに出会えるのでしょうか? 破壊されませんか?』
「渡されたダンジョンコアをいきなり破壊するような人をダンジョンマスターにしないんじゃないかなぁ」
でも好きにしろって言ってたっけ。
「コア、座布団だして。以前お前に頼まれて出したのと同じような奴。あとこのミニコアがすっぽり入るような小物入れ」
『ええ~』
「ナラヴィー様にお渡しするのに裸って訳にもいかないだろ」
『…まあしょうがねえか。今回だけだからな!』
『お手数をお掛けいたします』
『まったくだ! 傷がつかない様に緩衝材も出すからな! 簡単に破壊されんなよ!』
コア、マジいい子。
いそいそと座布団を下に敷いてミニコアを箱にしまう。周りに緩衝材を敷いてぶつかっても傷がつかない様に丁寧にだ。蓋を閉めたら出来上がり。
「さて、こんな感じでいいか? ラッピングもしとく?」
『リボン付けようぜ』
「ケヒヒ、こほん。失礼。こちらで聞き取りを行った内容も、お手紙に書いて同封しませんか?」
『――――――――――』
ミニコアが何か言っている気がするので蓋を開ける。
「どうした?」
『いえ、このまま海に流されるのではないかと心配になりました』
「しないしない」
蓋を閉める。
「面白い事を言うコアですね。こちらのコア様とは違ったユーモアセンスを感じます」
『一緒にすんなよー』
「それは失礼致しました」
綺麗にラッピングをして、6Fにある神殿へ移動。
「我が主、ようこそおいで下さいました」
ミリアが綺麗なお辞儀をしてくる。
「そんなに畏まらなくていいよ。ナラヴィー様への献上品をお持ちした」
「畏まりました、こちらへお越し下さい」
神殿の清めを行っていたラッシーセルキー達、メイド服から薄手の布地で作られた神職の衣装になっていて超目が行くが、我慢してナラヴィー様の像の前に。
「ナラヴィー様、お供え物です。お受け取り下さい」
像の前にミニコアの入った箱を置いてお祈りを捧げる。
片手で持てるサイズの箱は、丁寧にラッピングした。リボンを巻いてそこにメッセージカードを挿しておいた。
像が淡く光ったと思ったら、お供え物は徐々に半透明になっていくと…消えていった。
「無事受け取って貰えたようだな」
『ああ、次はいいマスターに巡り会うといいな』
オレはコアにとっていいマスターでいられているかな? ちょっと気になる。
「そうだな。それもナラヴィー様にお祈りしておこうか」
「お付き合い致します」
「私も共に、お祈りを致します」
「あたしも来たぞ」
オレとシヴィーとミリア。ボディを持ってきたコアとセルキーとブラウニー達でお祈りをする。
ナラヴィー様の像はもう光らなかった。




