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開かずの塔のダンジョンマスター  作者: てぃる
魔物の襲撃と街の危機
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高い所はこわいよね

「それじゃあ最後の仕上げネ。君、雨降らすネ」


「はい? 雨ですか? どうやって?」


「どう? 魔法ネ。他に雨なんてどうやって降らすネ」


 クシクシ、と顔を両手で拭きながらケレンセリッシュ様が言う。


 その言葉に、オレは先日出した魔法書を転移で呼び出して目次を見る。


「書いてません…」


「当たり前ネ、それ初級編ネ」


「新しい魔導書、出さないといけないかなぁ」


「魔法と聞いて!」


 エメラ様登場。ダンジョン設計するのにかなり時間かかったんだけど、まだいたんだ。


「まだいたんですっ! 美味しいお菓子を頂いていたわ」


 食べカスがお胸様に落ちてる。


「まあいいわ。魔法ね、雨を降らせる魔法。魔導書になんて普通書いてないわよ?」


「そうなんですか?」


「そりゃあ天候を左右するような、広範囲に影響を及ぼす魔法ですもの。研究されてはいても未だに確立はされてないわ。1か所2か所の畑程度の広さなら普通に水の魔法を使うもの」


「そういうものですか」


確かに日本でも日照りや天候不良で、過去に大きな事件があった。


魔法という便利なものがあるのなら、それで研究する国があってもおかしくない。


「…つまり、ケレンセリッシュ様は出来もしない雨を降らせとオレにおっしゃっていたわけですか」


「いやネ、色々と言った要望が全部通るものだから、多少の無茶もいけるかと思ったネ」


「コアに頼みますか」


 ダンジョン内で雨を降らすならコアの得意分野だ。


「ちなみにエメちゃんは出来るわよー?」


「それじゃ意味無いネ、水と豊潤の加護を乗せた雨が欲しいネ」


『あたしが加護を貰ってる訳じゃねーですから、そんな器用な雨降らせられねーです』


 敬語が変だぞコア。


「じゃあ、あゆむんやってみよー」


「はぁ」


 エメラ様はオレの手を取ると芝生に座る。


「まず、魔力を体で循環させます」


「コレですね」


「はい、良く出来ました。次は自分自身の加護を意識します、水はどのようなイメージですか?」


「えっと、青…とか、流れるとか…?」


「じゃあ豊潤は?」


「えー、緑…癒し…恵み…」


「はい、それをいっしょにー」


 オレの周りでバチバチいってた魔力が静かに流れる様に循環される。


「流石エメちゃんの加護ね!」


「いや、それもあるが高レベルのダンジョンマスターだからだろうネ」


「これで雨が降るんですか?」


 普段よりも、今なら強力な名付けが出来そうだ。


「あとは雨をイメージします。降れー降れーってやります」


「はい?」


「『はい?』じゃありません。フレーフレーでもありませんよ? 降れー降れーです」


「降れー降れーですか?」


「そう、降れー降れー。そうした雨は降るの」


 降れー、降れー…。


「何も起きませんけど…なんか魔力が無駄に流れ出ている感じしか…」


「えー? なんででしょう? あ、わかった! あゆむん魔法いっぱい使った後でしょ? ちゃんと回復

 してからじゃないと」


 ああ、魔力不足か。


「コア、魔力回復薬」


『あいよー』


 オレの手の中にコーラの瓶。中身は違うんだろうなぁ。


「…苦い」


 涙目になる。


「魔力の循環を解除させないと勿体ないネ」


 あ、そうか。


「ていっ」


 ごくん。


 まじゅーい。涙が出る出る。


 飲んだら結構すぐに魔力は回復していく。


「嫌いな物でも飲めるなんてえらいわー」


 撫でないで下さいエメラ様。


「早いね」


『いちおー、最高級のヤツだからな。マスターレベルたけぇからそれでも全回復するか不安なんだぞ?』


 そうなんだ? でも体感的には全回復っぽい。


「大丈夫だ、ありがとう」


『今日はすげーDP使ってるからいいよ』


 道理で機嫌がいいわけだ。1300万DPも使ってるからな。一日で使う量は過去最高だ。


「さて、全回復っぽいので再度挑戦しますか」


「コツは、降れー! 降れ―! よ!」


 頷いて、先ほどと同じように体内の魔力を活性化させて循環させる。


 周りに残っていた魔物達の唾を飲みこむ音が聞こえた。


 そして、静かになった。


 循環させた魔力に、雨よ降れと願う。


「こうだ!」


 オレの体から魔力が膨れ上がり、空へと吸い込まれていく。


 環境変化によって晴天となった4Fの空にオレの魔力が飛び上がっていき。


『ポタ…ポタ…』


「来たネ! ………止まったネ」


 速攻止んだ!


「ダメかぁ…」


 先ほどよりも魔力の減少による怠惰感が酷い。


 寝っ転がりたい。


「すごい魔力だったネ。でも全然ネ」


 オレの周り、ほんの一部の草原の葉っぱに朝露の様に水滴が見える。が、それだけだった。


「ダメかぁ。やっぱり無理かな」


「ダメよあゆむん。次は行けるわ! 諦めちゃダメ!」


「あー、その女神。魔法に関しては妥協してくれないネ」


「えー」


「えーじゃありません、次は行けます。魔力は十分です! 後は降れー、降れーだけですっ!」


「やってますよー」


 でもきちんと降らない。


「君は雨を見た事無いのかネ? もっとしっかりイメージするネ」


「雨くらい見た事も降られた事もありますよ」


「じゃあもっとしっかりやるネ、エメラが出来るって言ってるんだから出来るネ。この女神、魔法に関し

 ては信用出来るネ」


「信用って言うか信仰の対象なんじゃ」


「エメちゃんはあゆむんなら余裕だと思うんだけどー」


 よくよく考えたらこんなに晴れてる状況での雨なんて真夏や晩夏の通り雨くらいじゃないか。しかも空には疑似太陽(50万DP)が煌々と光ってて雲一つない。


「雲…雲か! 雲が無いじゃないか!」


「ひゃ!?」


「どうしたネ、大きい声はこの大きい耳に響くネ」


 オレは空を仰ぎ見る、雨には雲が必要だ。


「雲、水蒸気の塊…上空で纏めて…スターグリフォンだったか? こっちに」


『ギャウ!』


 地面で雲を作っても霧にしかならない。作るなら空で作らねば。


「ちょっと、空まで頼む」


 空を飛ぶなんて器用な真似はダンジョンマスターには出来ないのだ。


 スターグリフォンは嬉しそうにオレの前で伏せて、首元を向けてくれる。


「あゆむん?」


「どうするのかネ?」


「ちょっと雨を降らせてきます」


 オレはスターグリフォンの首元にまたがると、二人に言う。


「頼んだぞ、スターグリフォン…いや、【星丸】!」


『ギャウン! ギャオオオオオオオオオオオオン!』


 星丸は、名付けの影響で少しよろめいた。だがすぐに元気に声を上げると、その大きな翼を羽ばたかせて宙を駆け始めた。


「ぎゃー!! ストップ! ストップ! ひいいい! 戻れ! 戻れーぃ!」


『ぎゃう?』


 オレの声に、空を疾走し始めた星丸は急ブレーキをかける。即座に地面へと戻ってくれた。


 オレは地面に慌てて降りて、大の字で地面に転がる。うつ伏せで。


「どしたネ?」


「あゆむん?」


「………無茶苦茶こわい」


 星丸の背中。どんどん高度上がるし、尻の後ろで翼を支える筋肉が隆起して不安定だし。毛しか捕まるところないから、滑りそうになるし。

 

「やだ、やっぱりムリ」


『根性ねーなマスター』


 うるさいやい。

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[一言] (ギリシャの方を見ながら)やはり神は邪悪。
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