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あげたと思ったら上がってなかった
「これが神様効果かー、すげえな。緊張するけど、たまにならいいかもしれない」
「ほんとな。まさか一人頭100万DP近く入るって超お得じゃね? 塔伸ばそうぜ」
「それもいいなー、でもまずミリアの話を聞いて神殿の管理に必要な物を出してあげないとな」
仕事を与えておいて、はい終わりではいけない。
「その前に、歩様にはやって頂きたい事が御座います」
「何?」
「塔の強化です」
フィーの言葉にミリアも頷く。
「失礼ながら昨夜、ミリアと二人で話し合いを行いました。神殿の前にまず我が主の身の安全の強化が必須であると具申致します」
「私もフィリアーネと同意見です。本日は我が主が作り上げたダンジョンを確認した上で、我々の意見を取り入れて頂ければと思います」
「お、おう」
「なんかすげーなこの二人」
強い意思のある瞳で見つめられ、タジタジになるオレとコア。
「ん? フィリアーネ?」
「…私の名で御座います」
そう言えば自己紹介とかされてなかった。当初はダークエルフと呼んでたし、エメラ様がフィーって呼んでたから自然とフィーと呼んでいた。
「この男、自分の名前が好きじゃないのですよ」
「神々から賜った名に不満を思うのは大変不敬ではありますが。その、女性の名前ですから…」
なんでもエメラ様が見た目で付けたらしい。
確かに中性的な顔立ちだ。名前を先に聞いてたら女の子だと思ってしまったかもしれない。
「まあ、声は男じゃん」
「声以外も男ですよ? 歩様」
そうだけどね。
「じゃあフィーって呼ぶよ。それでいいよな?」
「はい」
そんなやり取りをして、一時会話が止まる。
「お茶のお代わりは?」
給仕係が話の切れ目のタイミングで聞いてくる。
「ありがとう、オレはもういいよ。美味しかった、ご馳走様」
「あたしはお茶じゃなくてコーラの気分だな」
「やめとけ、溶けるぞ」
「溶けるんですか!?」
「そんなっ! コア様!?」
「解毒薬で治りますか!?」
「フィー、私達も昨日…」
「っ! 我々も溶けてしまうのですか!?」
「おい、嘘つくな嘘」
一瞬にして顔を青ざめた二人の反応に対して、コアの反応がつまらない。
「うそ…うそ? つまり?」
「好きな飲み物しか飲まない子供を躾ける時の常套句なんだよねコレ。コーラは安全な飲み物だよ」
溶けるどころか太る。
「そうなんですか、溶けないんですね。良かった」
「つーかあたしはガキじゃねーよ」
「まあお前は好き嫌いないからなぁ、そういう意味では子供より手が掛からない…掛からない?」
掛かるな。こいつ中身は人間じゃないから止めないと延々と食事を続けるし。
「あんだよ?」
「なんでもねー」
変な所で鋭い。
「えーっと、なんだっけか」
「コーラ出すって話だ」
「塔の強化の話です、コア様」
「コア様、ワガママはダメですよ」
「ぶー」
ぶー言うな。かわいいけど。
「つってもなぁ。3Fはボスのみの部屋にするつもりだったし、4Fは屋敷入れちゃったし。塔を伸ばすかぁ」
「賛成です。そもそも出来立てのダンジョンでも大体5層くらいはあるんです。1Fと2Fにしかダンジョンが無いのは少々ボリューム不足かと」
「私もそう思います」
「えー? 1Fも2Fも突破には相当時間かかる作りになってっぞ? あたしとマスターの自信作だ」
「3Fはいま空いてますよね? がらんどうで何も無いとおっしゃってましたが」
「ああうん。作ろうと思ってたんだけど色々あってね…」
作ろうとはしたんだ作ろうとは。
「ひとまず確認を致しましょうか…」
フィーの一言にオレ達は指令室に移動することになった。
コアはなんか台所に向かうから行かないらしい。まあ本体がいるからいいけど。




