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開かずの塔のダンジョンマスター  作者: てぃる
グレたコアとダンジョン強化
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側近二人による第三者視点

難しいね。

あと硬い、楽しくないと思う。

 歩の屋敷の中、使用人達の部屋が集まる区画の個室で二人は顔を合わせていた。


 ダークエルフのフィリアーネと力天使のミリアだ。


 彼らは神々や先達の魔物により指導を受けた、ダンジョンマスターのサポート要員である。


「新たなる側近が、貴女でしたかミリア」


「よろしくね? 先輩♪」


 名付け以降、上機嫌なミリアがそこにいた。


「おやめなさい、敬意の伴わない敬称など不快です」


 ミリアは上機嫌な表情を崩さずに目を細める。


「冗談よ、あなたはいつも通り硬いわね」


「性分ですので」


 フィリアーネはコアに出して貰った瓶コーラを、同じくコアに出して貰った木のコップに注ぐ。


「コア様が好んで飲まれる飲み物です、我等も飲み慣れておきましょう」


「こんなに冷えた飲み物なのに、まるでマグマの様な反応ね」


「ええ、黒い飲み物と言うのも珍しいです」


 二人は強張った表情のままそれぞれコップに口をつける。


「なんという刺激的な飲み物!」


「それにこの甘み! 砂糖じゃ…ない? 異世界の果物かしら」


「なるほど、果実ですか。異世界産であれば我等の知らない物も多いでしょう」


 二人は思い思いの感想を口にしながら、慣れない飲み物をチビチビと飲む。


「私と貴女では、召喚されてあまり時間の差はありませんが…その分、情報の共有は密に出来るでしょう」


「助かるわ。私が我が主に召喚された時には、神々がご同席されていて我が主と満足にお話が出来なかったですもの」


「仕方ないでしょう。どう考えても異常事態です。ブルーシェル様ならともかく、ナラヴィー様までご降臨されていらっしゃいましたから」


 水の神ブルーシェルは下界を好む神として有名だ。


 なぜなら世界中の海を平泳ぎや犬かきで泳ぎ回っているからだ。運よく海上で見かけて手を振ると、機嫌が良ければ加護が貰えると言われ船乗りに人気だ。


 それに対しエメラは主に神界の学園か神殿を好み、あまり下界に降臨された話は聞かない。


 ナラヴィーに至っては、下界に降臨された話など創世記にまで遡らないと出てこない。


「何がどうなれば三柱もの神が一つのダンジョンに同時に来られるのかしら? 我が主も神格があるのかしら」


「それについては説明します。尤も、貴女が召喚される前の話は全て説明致しますが…」


 フィリアーネは自分が見ていた範囲内での出来事をすべてミリアに説明した。


「じゃあここがあの【銀龍の開かずの塔】の中なのね。ノーラグル王国の最も東、ベンネル辺境伯の領地でしたっけ」


 ミリアの言葉にフィリアーネが頷く。


「そして我が君は150年も活動を凍結処理されていたダンジョンマスターで、実際に稼働しているのは10日しか経っていない、と」


「ええ、そうですね」


「神々の言葉を信じるならば、たった10日程度の稼働で私達二人を雇い入れたわけよね」


「そうなりますね」


「しかも、屋敷や使用人も貴方が来てから用意した、と」


「そうなんですよ」


「…この屋敷、去年の夏にあなたが自由課題で発表した【ボクの考えた究極の屋敷】よね?」


「それの発展版ですね。配置している使用人達は中位か上位の魔物です。使用している魔石もグレードの高い物ですし、そもそも警護の魔物の数も増やしました」


「…あなた、我が主に一体何DP使わせたのよ」


「すいません、ですが最初に50万DP自由に使っていいとおっしゃられまして」


「ごっ!?」


「聞くところによると、一日で200万DP前後入ってきているそうです」


「200万…」


「今日だけ、というよりももう昨日の話になりますか。私を呼ばれるのに80万、屋敷の作成と設備に約3万、神殿の作成に約5万、使用人や警備の魔物に35万、そして貴女の召喚にやはり80万。その他にも屋敷の周りや神々の像、神殿の設備…」


「今日だけで200万DP以上使ってるっていうの!? 」


「驚きますよね…」


「止めなさいよ!」


「貴女を呼ぶときには近くにいませんでしたし。それに…コア様も喜んでいらっしゃいましたから」


「そりゃダンジョンコアっていうのはそういう存在だからでしょ! 主を諫めるのも私たちの仕事よ!」


 ミリアが強い口調でフィリアーネに告げる。


「ですがDPの価値を分かってらっしゃらない訳ではないようですよ? DPの計算も早く、異常な数字のDPを使うのには難色を示しておりましたから」


「計算が早い?」


「割合で物事を考える事も出来ていらっしゃいました。私どもと同程度か、それ以上の教育を受けていると言われても違和感はありません」


「…元々の世界では貴族だったのかしら?」


 元来この世界において、教育というものは一部の特権階級の者達が家庭教師を雇い受けるものだ。その対象は王族や貴族、裕福な商人など。一部の国には学校もあるが、すべての子供が教育機関に通う世界など二人は知らない。


「ですが、やはり10日程度しかこの世界にいらっしゃらないという言葉に頷ける部分は多いです。神学や魔術の知識の欠落、それとダンジョンの状況などが…」


「ダンジョンの状況?」


「この歩様のダンジョンなのですが、常に侵入者がおります」


「そりゃあ、ダンジョンですもの。当然では?」


「約8000人の侵入者が常にいるダンジョンなどは、正常だとは思えませんよ…」


「………っ!」


 その言葉にミリアがフリーズする。


「私達、こんなところで会議してていいのかしら」


「この塔は【開かずの塔】ですから、塔の扉が開かれたら侵入者に合わせて3Fを改造するとおっしゃってました」


「つまり、1Fと2Fしか侵入者を迎え入れる準備が出来てないってこと!? 出来立てのダンジョンでも5層はあるわよ!! 屋敷よりそっちを強化しなさいよっ!」


「すみません…ですが歩様とコア様のお部屋が目も当てられなくて…」


 その言葉に溜息を吐くミリア。


「もういいわ…明日、我が主に進言いたしましょう」


「そうですね。幸い、神々が降臨されたのでいつもより多くDPが入りますから」


 二人は頷き合うと、炭酸の抜けたコーラを飲んで部屋を後にした。


 明日二人にとっては、試練の日となる事も知らずに。

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[気になる点] ん? コーラの甘味は砂糖じゃなかったっけ?
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