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「コータ君は日本人?」
「え? ああ、そうです」
シルバリオに肩を掴まれて立てなくなった康太君が顔を上げて答える。
「オレもだよ。こっちにきて150年になるらしい」
「ひゃっ!?」
実際には1年も活動してないけどね。
「コーラもらえた時からまさかとは思ってましたけど……」
「そう、オレはここのダンジョンの関係者。こちらの仮面の女性と黒ローブの女性2人は別だけどね」
シエンタ様達に視線が行く。
「呪いは解けたから君は自由になったわけだが、申し訳ないけど君を拘束したくなった」
「…… そうですか」
じと目でこちらを見て来るコータ君。
「今から君のご同輩を探してもらう。そこまでは協力してくれるかい?」
オレの言葉に合わせてシルバリオの肩を掴む力が強まる。
「…… 構いませんけど」
「報酬はそうだな、この街で家を買って1年くらい遊べる程度の金でいいか?」
「は?」
「ここで冒険者として登録するなら、さっきの連中を紹介するぞ。魔物だけどあいつらはBランクの冒険者だ」
「ええ!?」
「ネイヴィエラの干渉が怖いなら、しばらくの間、地下1層で匿っててもいい。現役の冒険者や兵士、騎士と戦ってくれるならバイト代も出してやるし装備も支給しよう」
流石に生活基盤とコア本体のある塔内部には入れられないが、ジョージ達のいる地下第一層であれば問題ない。
「ああ、そっちでなら屋敷が作れるな。メイドと執事とコックも付けてやろうか?」
「マジっすか!」
「まあ全部魔物だが」
「ああ、そうっすよね……」
「人型の魔物でいいか?」
「もちろんっす!」
ちょろちん。
「でもそこでブクブクに太りそうな引きこもり生活を送るなら許可は出さないぞ」
「しないっす! 自分働くっす! 冒険者! やっぱ異世界と言ったらこれでしょっ! くぅ~!」
うんうん。分かる。
「じゃあ交渉成立って事でいいか?」
「もちろんっす!」
なんか話し方の感じが一気に変わったなぁ。
オレはシルバリオに視線を向ける。シルバリオは頷くと、コータ君から手を放して半歩離れた。
「これからモニターにダンジョンにこもっている騎士以外の人間を映すから、該当者がいたら教えてくれ」
「分かりました」
エディーが監視室からこちらのモニターを操作して色々と画面を映す。
画面の中に、様々な人間が映っては消え、映っては消えを繰り返す。
「結構慎重な感じの人ですから2人で組んで潜ってると思います。どっちも男です」
「じゃあ2人以上のパーティを映した方がいいわね」
「そうなんですか?」
シエンタ様がぼそりと言う。
「道案内で冒険者を雇ってる可能性があるわ。お祭りなんかよりダンジョンに行きたいって人間もある程度いるでしょ?」
確かに。神々の試練の間周辺施設は騎士達が中心だが、それ以外のエリアにはモニターで見ていても分かるようにかなりの数の人間が入っている。
浅いエリアは冒険者以外の人間が普段から多いが、そちらにもきちんと装備を整えた人間がちらほらいる。おそらく冒険者だろう。
「あ、いました。こいつです」
そういってモニターの一つを指さす。
一番大きな画面にそこを広げる。
森と荒野の隙間辺りのエリアにそいつは5人パーティで立っていた。
「こいつか。とりあえず持ち物だけでも奪わないとな」
「ジオ辺りに行かせますか?」
「ジオが行くのはちょっと過剰かなぁ」
殺しちゃわない?
「コータ君より強いって事は、リザードマン達じゃ厳しいし」
名付けしてないアーリマン達でも、下級魔族達程度には強いがコータ君基準だと弱い。
「ここは手加減慣れしてるあいつに頼むか? でもなぁ……」
モニター越しに見てるわけだから、操られるような事態になっても対策が立つが不安はある。
「というか、その魔物を操ることが出来るアイテムに対抗出来るような装備や薬ってないですか?」
シエンタ様に聞いてみる。
「どうかしらね? 精神に異常をきたすタイプの物だからいくつか思い当たるけど、現物を見た訳じゃないからこれをやっておけば大丈夫、とは言いにくいわ」
「いくつかあるんですか」
「あるけど、ここは斎川さんのダンジョンだから出せないわよ。他所のコアの管理下ですもの」
「…… そうですね」
斎川さん言わないで!
「魔物で拘束するんでしょう? どうするのかしら」
「一人だと不測の事態に対応しきれない可能性があるので、複数で行かせるつもりなんですけど…… 連携取れないのがなぁ」
「我が主、差し出口失礼してもよろしいでしょうか?」
「ん? 何か案があるのか? シルバリオ」
「はっ、少なくともウチの魔物が操られる事態にはならないと思われます」
シルバリオの案を聞いて、オレもシエンタ様もおめめがまんまるに、そしてお互い笑顔でにっこり。
「いい案ね」
「いいぞシルバリオ」
「はっ! 我が主のお心を加味しての考えに御座います」
「素晴らしいですシルバリオ。アユム様よりお名前と魔力を頂いただけの事はありますね」
褒めてるのに怖いのはいつものシヴィーである。
嫉妬まみれになるのはいつもの事なのでスルーだ。




