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開かずの塔のダンジョンマスター  作者: てぃる
騎士団の到着とお祭りと
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「して、勇者君は何をしにこちらへ?」

「あ、えっと…… 康太です。埼玉康太です」

「そーかそーか、コータ君。よろしく、オレはサードね」


 ドミニクの家に連れ込んで、コータ君をレッツ尋問。


「で?」


 サタンコックがご飯を炊いてくれてる間に話を聞くことに。ちょっと早目だと怒っていた。


「異世界の神様に呼ばれたから、テンション上がってこっち来たんです。でもステータスあるって言ってたのに何も出てこないしチートも微妙だし、そもそも女神様いないし」

「まあそもそも世界が違うもの」


 同じく席に座るのはシエンタ様だ。

 ドミニク達とセカンドはジオと一緒にお祭りを続けて満喫中なので、不在。

 オレとシエンタ様と康太君の3人だけ椅子に座り、残りは立っている。


「飛ばされた場所はなんか魔物と軍隊が戦ってる最中でそこに突然放り出されたんだ。なんとか逃げ延びたけど、軍隊に捕まって色々聞かれて…… 保護されました」


「軍隊? さっき言ってた?」

「はい。ネイヴィエラの軍です。ダンジョンから溢れた魔物の討伐をしている所だったそうです。そこの軍で剣の使い方や魔法の使い方を教わりました」


 さっきはいきなり激昂してドミニク達に剣を向けてたのに、いきなりしおらしくなったな。魔物って思ってたドミニク達がいなくなったからか? でもサードの体も魔物だし、シエンタ様も魔女だけどカテゴリ的には魔物だと思うんだけど…… 認識疎外アイテムの効果かな?


「チートだハーレムだとか思ってたのに、国の騎士よりちょっと強い程度だし、軍だから女性はほとんどいないし、いても奴隷で汚いのばっかだし……」


 ちょっと強い程度というが、ドミニク達より全然強そうに見えるコータ君。

 『軍の騎士』が粒ぞろいなのだろうか。


「そりゃなぁ」


 この街の兵士や騎士もほとんど男性だ。いないことはないが、ハーレム? とか聞かれると困る。


「そこで戦闘訓練を行って、いろんな任務について、ようやく国外での仕事を任されるレベルになったんだ。それでこの街で…… 痛っ!」

「あら」

「さっき言ってた呪いね、任務について話そうとしたからじゃないかしら」


 康太君が頭を押さえて机につっぷしてしまった。


「シャイン、今のうちに」

「は、はい!」


 シャインは腰に下げた袋から何やらシリンダーのようなものを取り出してその中身を康太君に振りかけている。

 康太君の体から黒い靄が浮かび上がって、それらが文字をかたどっていく。


「何々? 国王と軍上層部に対する服従にそれらの機密保持、魔物に対しての攻撃性の上昇に…… 許可のない指定エリア外での行動禁止? 盛りだくさんだな」


 要はネイヴィエラって国を裏切れず、命令に対して絶対服従で逃げ出せないぞ。ついでに魔物をぶったおせっていう内容だ。


「どうしようかしら? なんか急激に興味を失いつつある私がいるわ」

「まあまあ。呪いを解かないと話も出来ないじゃないですか」

「気が付いたのよ。別に話を聞かないでお祭りに戻ればいいんじゃないかしらって事に」


 気が付いてしまったようだ!


「ぐ、呪い、解けるの、か? ぐあっ!」

「あら、解呪の意思に対しても呪いが発動してるわね。解きたいって考えない方がいいわよ?」

「とけ、っ! るなら、とい、て」


 頭を抱えてよだれを垂らしながら懇願するコータ君。


「流石に可哀想なんだけど」

「斎川さんが決めなさいよ? 私はここに遊びに来てるだけでこの街の事なんて関係ないもの」

「そういえばそうですね。シヴィー、呪い解ける?」

「問題ありません」

「じゃあ頼んだ」

「承りました」


 唸る康太君の後ろに立って、シヴィーの右手の袖口から闇が現れる。

 その闇が康太君の全身を覆い、飲み込む。


「あら、食べるのね」

「食べる!?」

「頂いておりますわ」


 左手で自分の頬を撫でながら優雅に答えるシヴィー。

 そんな会話が終わった後、再び袖口に闇が戻っていく。


「う、うえええええええええええ!!」


 コータ君がなんか吐き出した!


「汚いわね」

「ですねぇ」


 コーラも出た? って観察するのも悪趣味か。


「バケツと雑巾は、っと」

「お待ちください我が主、ロッドかピエールにやらせます」


 シルバリオが言うと、ロッドを呼びに行った。




~~~~~  しばらくお待ちください  ~~~~~






「えっと、任務の話なんですけど」


 うん、彼の尊厳の為に何もなかった事になった。


「自分を含めて4人がこの街に入ってます。残りの3人はこの世界の人間で、俺みたいに異世界から来た人間って訳じゃないです」

「ほうほう」

「調査の内容としては、騎士団の監視がメインですね。この街に中央から騎士団が派遣されているを確認したので、戦争の準備かとネイヴィエラの軍上層部は睨んでいるそうです」

「あー、実際はダンジョンの調査だよ」

「この街の西の門の外ですよね? そちらの調査も命じられていました」

「どんな内容?」

「ダンジョン内での物品の回収と、言葉を操る魔物と接触出来るかどうかです」

「接触?」


 呪いが解けたからか、コーラのお替りのおかげか、どうにも口が軽い康太君。


「面倒な手順を踏めば、ダンジョンの魔物を自由に操れるらしいんです」


 その言葉を聞いた時、室内の温度が一気に降下したような感覚を感じる。


「うえ!?」

「面白いお話ですね」

「ええ、実に興味深い話です」

「そのような事を考える輩がいるんですね、勉強になります」

「うひ……」

「続きをどうぞ?」


 オレとシエンタ様以外が猛烈な反応を示しています!


「え、えっと…… その、魔物を魔法のアイテムで操るらしいです。そしてその魔物にダンジョンマスターを倒させるか、案内をさせて同じようにダンジョンマスターを操るって方法で。なんでもその方法でいくつかのダンジョンを支配下に置いているらしいです。はい」

「シエンタ様、知っていました?」

「人間に制御を奪われたダンジョンがあるのは聞いていたわ。マスターを捕まえて無理矢理いう事を聞かせてると思ってたけど」

「あー、そういう方法もあるんですね」

「まあ、やられるマスターが悪いわ。強ければそんな手には引っかからないし」

「従者が確実にマスターをお守りすれば問題ありません」


 魔女の一人が口にする。


「マスター自身を支配するアイテムの出来にもよるわね。私やサードさんクラスの人間を操るようなアイテムなんて、上級神のお手製品でも無理じゃないかしら?」

「お二人はそんなにお強いんですか」


 感心するように言う康太君。でも勘違いしないで! オレ自身は戦闘力皆無だよ!


「強いわよ?」

「いや、自分はそんなに……」

「サード様はお強いですよ」


 そこで持ち上げないでシヴィーさんや!


「それでそのアイテムは持ってきてるのかしら?」

「いえ、自分ではなくもう一人の潜入している人間が持っています。そちらの方が強いので」

「そう」


 うわぁ、興味持ってるよ!


「捕まえられるかしら?」

「どうでしょうか……」

「それってどんなアイテム? どんな人が持ってるの?」

「えっと、アイテムは金属製で茨を象っている冠です。持ってる人は、なんて表現したらいいのかな、男性で顔の彫りが深くて…… オレより背が高いです」


 参考になんねぇなぁ。


「どこを調査してるの?」

「今はダンジョンに入っているはずです。彼ともう一人がダンジョンに潜ってて、残りが街の調査ですから」


 今日は騎士団以外の人間が少ないはずだから、多少絞りやすいか?

 騎士団連中は装備はともかく、みんな同じ色のマントを付けてるから分かりやすい。


「すいません、ちょっと席を外しますね」

「どうぞ」


 ジョージ達が操られる危険性を考慮すると、今のうちに対策を打ちたい。


「一度戻るか。ノイとエディの出番だ」

「サード様、私がノイとエディに指示を出します。ここでモニターを確認した方が良いでしょう。シエンタ様もいらっしゃるのですから」


 ロットがランプに明かりを灯し、窓をすべて閉める。


「そうだな。じゃあセカンド達を戻すように。こっちじゃなくて塔に。あとドミニク達も一度こっちに戻すか」

「畏まりました」


 壁の一部が開かれ、中からモニターがいくつも顔を出す。それらはすべてダンジョンの映像だ。


「さて、コータ君には少々協力して貰いたい事が出来たんだ」

「は、ははは…… あんたらまさか…… 」


 乾いた笑いをこぼしながら康太君の尻がイスから浮く。

 まあいい加減に気づくよね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 気づかなければ幸せだったろうに。
[一言] 作者様は面白い作品を安定して書かれていますが、それらの作品の中でもこれが一番面白いです。 書籍化とかされないんですか?
[一言] この小説を探してた人がいて面白いらしかったので読みに来ました。面白かったです!
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