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3/8 新作『おいてけぼりの錬金術師』始めました。興味が無い方も是非!!
戦闘訓練、という名のガチ戦闘は怖かった! あと痛かった!
痛覚やら何やらも共有するらしく、ダメージを受けると痛いんすよ! 体は人形でも痛いんす!
目の前で強烈な拳を繰り出してくるジオとか、遠距離からバンバン魔法を飛ばしてくるシヴィーとか!
回避しても地面が割れた破片とか飛んで来るもんだから、そりゃ痛いさ!
コアは早々に抜け出してセカンドに代わるし、シヴィーとフィルがオッケー出さないからサードも代わってくれないし。
ガードの魔法を習っておいて本当に良かったと思う。
オレの戦闘訓練を行った後で、サードの能力確認と訓練に移行するらしく先に抜け出してきた。
ジオと居残りらしい。
一応エルフィン達が回復役として出張ってきてたから問題ないだろう。
「…… ただいま」
「お帰りなさいませ」
カプセルの中で目を覚ますと、シエルがカプセル越しにこちらを覗き込んでいたので挨拶したら微笑み返された。
部屋を整えた後、ずっと覗いてたと怖い事を言う。
「っとと」
体がふらついた。
「これは、思ったよりも魔力を食うのか……」
「マスター? 顔色が悪いですよ」
「魔力が足りないらしいな」
「…… サードの名付けをしたまま回復されておりませんよね?」
「あ」
「その状態で、憑依を行い向こうで戦闘を行えば当然でしょう! マスター!」
「ご、ごめんなさい」
怒られた。
カプセルの中から出ない様に厳しく言われて、シエルがプリプリしながらエリーゼ印の美味しい魔力ポーションを持ってきてくれる。
「ふう、落ち着いた」
「マスター、今後名付けを行ったら魔力ポーションを必ず飲むようにしてくださいね?」
「はい、ごめんなさい」
最近の名付けはそういうのが多いから本当に気を付けよう。
そんな事を思いながらこちらに戻ってきたフィル達と合流。
「魔法攻撃だけではアユム様のガードは剥がせませんね。物理と魔法をうまく掛け合わせないと…… この姿では厳しいか」
「剥がすことを目的とするんじゃありません」
シヴィーさん、目的変わってませんか?
「しかし、想像以上の強さでした。流石歩様の名付けした魔物です。しかも憑依している状態の歩様自身の魔力もある程度使えるみたいですね」
「あ、やっぱり? 名付けしたから目減りしてたのに元の体に戻ったら更に魔力減っててびっくりしたんだ」
「…… 危険ですね。次回以降は魔力が回復している状態で使用しましょう」
「その方がいいかな。シエルに顔色が悪いって怒られた」
魔力回復ポーション飲んで元気になったけど。
「名付けで魔力を大量に使った後でもあれほどの威力の魔法が撃てるとは……」
「サードの元々の魔力もあるからだよ」
「歩様がもっと自在に攻撃魔法を覚えたら面白、いえ相当な強者になられること間違いないでしょう」
そう、攻撃魔法も撃ったんです。
水の矢とか水の槍とか津波とか。
矢と槍ではジオもシヴィーも捉えられなかったから津波を撃ったら見事に自分ごと流されました。魔法は考えて撃たないとね!
『壁に当れば返ってくるに決まっているじゃねーか』
「素晴らしい威力の魔法で御座いました。私も見習わなければなりませんね」
コアとセカンドが同じ声で罵倒と称賛が飛んでくる。
「違和感すげぇ」
『慣れろ』
ですな。了解。
「色々検証した結果ですが、街に降りるのは問題ないとの結論に達しました」
「ええ」
そんな事をフィルとシヴィーが言うのでオレとコアが顔を見合わせてしまう。
「いいの?」
「マジか!」
オレとコアの言葉に二人は頷く。
「あれ? でもなんだっけ、気配がどうとかこうとか」
強い魔物がいると人間に気づかれちゃうんじゃないの?
「それに関しては、エリーゼと相談しました。使用者の気配というか、匂いというか、そういう物を人間に似せる魔道具を用意いたします」
「出来るんだ?」
「出来なくても問題ないのですけどね」
「はい?」
「せっかくですからダンジョンマスターとしての歩様のご尊顔を人間共にしらしめてひれ伏し、真の飼い主は誰かというものを分からせようかと思いまして」
そんな言葉にうんうん頷くシヴィー。
「や、そういうの期待してないですから……」
まっすぐ討伐対象じゃん!?
「護衛には私とシルバリオとジオ、ゲンリュウ様にジョージを予定しております。いざという時にはセカンドとサードも使います」
「ゲン爺とジョージ連れだす時点で終わってね?」
あの二人は冒険者達や兵士達、商人達に顔がバレている。
まあジョージは鎧姿だから偽装は可能だが、人間と呼ぶにはでかすぎだし。
「ジョージとゲンリュウ様のお二人を矢面に立たせ、この街の商人と冒険者達を制圧します。その間にジオとシルバリオの二人で騎士団と兵士達の詰め所を強襲し連中を混乱に陥れます。ある程度混乱を招いたら地下第1層からアーリマンとリザードマン達で街の周りを囲み、我らで領主館を占拠すれば確実にこの街は堕とせます」
「堕とすなや」
楽しそうに話すシヴィーと苦笑いのフィル。
「…… やはりダメですか」
「ダメです。分かってて言ってるでしょ」
「はい」
嬉しそうに頷くシヴィー。
「まあ冗談です。アユム様とコア様のお二人がお祭りをお楽しみになられる事を希望されるのですから、それを壊すマネは致しません」
「お、おう覚えてたか」
「ええ」
不安になるっ。
「ですが護衛は付けます、これは絶対です。ジオ、シルバリオ、私の3人と下級魔族のメンバーですね」
「あいつら使うのか」
「はい。冒険者として護衛任務の指名を入れます」
「そんな制度あったな」
「彼らは弱いですが、人数がいますからね。フィルは耳が隠せませんし、ミリアも天使の輪が邪魔ですから」
「邪魔は言い過ぎですよ」
フィルからお小言が飛ぶ。
「ですが、あくまでも我々の存在を隠せるような魔道具が用意出来ればの話です。私は気配も偽装できますが……」
「そうだな。オレは出来ないし」
「あたしも無理だわ」
「じおも、ごめんなさい」
「いずれ覚えればいいんですよ」
ちなみにシルバリオも無理らしい。彼の場合気配は落とせるが、限界まで落としても魔物であることはバレてしまうそうだ。
もちろん人間すべてにバレるのではなく、普段から魔物と戦い感覚を磨いている人間だけらしいが。
「ダンジョンショップに売ってないかな?」
「見てみるか…… あるけど多分無理っぽいな」
「そか」
ショップに売っているアイテムでは隠し切れないっぽい。
とりあえず1つ買ってエリーゼに渡して研究してもらおうかな。
「…… そうだ、聞いてみるか」
「あ?」
こういうのは、長くこちらの世界にいる人間に相談してみればいい。
オレは指令室に移動し、プレートで連絡先を交換していた先輩に連絡を取ることにした。




