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「サード=ウォーカー、起動」
「起動致シマス」
はい、現在宝物庫に来ております。
祭りに参加するにしろ、そうじゃないにしろそろそろ自動人形に日の目を見せるのは良い機会であろうという事で起動させております。
「アー、アー。あー…… こうか。こうか? ああ、こんちはご主人さん」
「おう、よろしくなサード」
「うい」
適当な返事をするサード。
エメラ様とゴース様の加護を込めて名付けした機械人形は無事進化【魔導人形】になったらしい。
殺戮人形と同格で別方向に進化した種族だ。
「サード、貴方はマスターをお守りする入れ物なんですよ?」
「あ? そりゃそーっしょ」
「『そーっしょ?』」
「んだよ? 自分の役目くらいわかるっしょ?」
こめかみの辺りを抑えるフィルとシヴィー。
「もっと歩様に敬意を示しなさい。なんですかその言葉遣いは」
「言葉遣いっつーか? それよりもご主人さんを思いやる気持ちってやつ? それはもうマックスな訳?」
「何故疑問形……」
あかん、こいつ勘違いした系のギャル男や。
「ご主人さん、おはいんなさいってね。そっちのカプセルにインすればそのまま俺っちにもインよ?」
「ああ、そうな」
「うっしゃ! んじゃ早速な!」
「「 はあ 」」
二人の口からため息が漏れる。
追加で何かを言っても無駄だろうと悟ったオレは、カプセルの中に入る。
「どうすればいいんだ?」
「カプセルに入ったら目をつぶって『サード』って呼ぶっしょ。俺っちも受け入れる準備すっから、横っちょ失礼するっすね」
サードも彼の為に用意されていた同じようなカプセル的な棺桶に入る。
「おっけっしょ」
「はいはい」
オレは瞳を閉じて、ゆっくりとその名を紡ぐ。
『サード』
軽い浮遊感を感じると共に、意識が一瞬沈んだ。
ゆっくりと瞳を開けると、別の視界が広がっていた。
「おお、これがサードか」
普段の自分の身長よりもだいぶ高い目線に新鮮さを覚える。
180センチの身長と、オレの今の顔をモチーフに作られた顔を壁に掛けられた姿見で確認する。
「なんか寝てる自分を見るって変な感覚だな」
幽体離脱したらこんな感じになるのだろうか?
カプセルの中には小柄なオレの姿。
「いかがでしょうか歩様。お体に不調などは?」
「いや、大丈夫だと思う」
体を捻ったり腕を回したりするが、違和感はない。
「瞳の色が変わりましたね。アユム様が中に入った影響でしょうか? いつもの蒼い瞳になっております」
「おお、そういえば」
改めて姿見を覗き込む。
こいつは黒髪黒目の設定にしたのに瞳が蒼い。
ちなみに顔は今のオレが成長したっぽい容姿にしてある。
「どう? 魔物の気配って分かる?」
「しっかりと」
「はっきりと」
フィルとシヴィーの感想に項垂れる。
「うーん。そもそも気配ってのが分かんないなぁ」
普通の人間は自分の気配など考えて行動はしない。
そもそも自分の周りには魔物しかいないのだ。気配だなんだ言われても正直わからぬ。
強い、超強い、弱いとかが多少分かるのはこの気配的な物を感じているからなのかもしれないけど。
「匂いとは違うんだよね?」
「匂いですか? 私では匂いはちょっと」
「獣系列の魔物以外ですと匂いでの感知はあまり行いませんね」
フィルもシヴィーも匂いでの判別は行わないらしい。
「においならジオわかる。でもにおいちがうよ?」
大人しかったジオの発言。
「みんないいにおい」
「ありがとう」
背が高いからジオの頭を撫でるには屈まないといけないな。
「ますたーがおっきい!」
「はは、でも本当はジオの方が大きいよ」
「そうだった!」
ジオも擬態中だからね。
「ちょっと体を動かしたいかな」
「でしたらお外に、いえ。せっかくだから闘技場へ移動しましょうか」
「や、軽い運動程度でいいんだけど」
「そろそろアユム様にも戦闘訓練が必要だと思っておりましたから。アユム様のお体ではないですが、丁度いい機会でしょう」
「素晴らしい案ですシヴィー。多少荒っぽくなっても歩様のお体ではありませんから問題ないでしょう」
「その発言に問題があるよね」
「危なくなったらサードに代わって下さいね? サードにこそ戦闘訓練が必要ですから。セカンドも一緒にどうですか?」
「ん? ああ、やるってさ」
「アユム様のお体はどうしましょう。宝物庫にそのままというわけにはいきませんし」
「屋敷に専用の部屋を作るか。無防備なマスターをそのままにしておくのは怖い」
「そうですね。では一度アユム様にはお体に戻って頂いてからカプセルを移動させましょうか」
「警備も必要ですね。お世話は必要ありませんが、見張りを立てましょう」
「シエルに任せればよろしいのでは?」
「そうしましょうか」
なんか勝手にどんどん話が進んでいるんですけど?
こういう状況になるとこっちの言い分は通らないと学んでいるんだぜ! 大人しく体に戻る。
「では早速取り掛かりましょう」
「マスター、いいか?」
「はいはい、どーぞーぞ」
オレの寝室の対面の部屋にカプセルを移動させた。
待機するのはシエルだけだ。
ただぼーっと待たせるのもかわいそうだが嬉しそうなのでいいか。
とりあえず机と椅子を用意してあげる。
「マスター、少々お部屋を整えさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
シエルの言。
訳:DPくれ。
「任せたー」
「ありがとうございます。お気をつけて、いってらっしゃいませ」
笑顔で見送るシエルにカプセルには触らない様に厳命して部屋を出る。
オレ達が部屋を出ると、内側から鍵をかける音がした。
リビングアーマーも扉の左右に立ち、ガードは完璧だ。
「やりすぎじゃね?」
「足りないくらいですが、シエルがうまくやってくれるでしょう」
これ以上何をどうするの?
☆☆ お知らせ ☆☆
章のタイトルを変更します。
元タイトル :騎士団の到着と神々の脅威
変更後タイトル:騎士団の到着とお祭りと
ちょっと章が長くなりすぎたのと、間に話を入れたくなったので変更しました。
 




