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「がー!」
「だー!」
「いけませんよ」
不満を言ってもフィルは顔を縦には振ってくれない、今回はシヴィーも反対意見である。
「むう」
強行してもと思ったが、オレ達の為にと言ってくれている二人の意見を無視して強行するのも忍びない。コアもその辺はわかっているらしく、眉がしょんぼりだ。
「おまつりぃ…… 」
そう、お祭りである。
秋も深まり、冬が近づこうとするこの季節ではこの世界では収穫祭と称したお祭りが毎年行われていたのだ。
今年は魔物の襲撃から始まった森の延焼、騎士団の来訪もあった。冬の備蓄を考えてお祭りはやらない予定だったと聞いていたが、どうやらやる事になったらしい。
街では一部の人間達がお祭りの準備をしていた。
そして一部の人間達は既にお祭り状態になっていた。ドワーフや冒険者達である。
「行きたい……」
「行きたいな……」
オレとコアは呟くが、フィルとシヴィーが却下してくる。
「こういう時の為にマスター用の自動人形を入札したというのに……」
宝物庫で眠っているアレである。
宝物庫、向こうの世界のお皿とかそんなんしか置いてないんだけど……。
「あれを使えば安全じゃない?」
「あたしは元々セカンドの中だし! ほら、セカンドも任せて下さいって言ってるぞ?」
「聞こえません」
オレにも聞こえん。
「シヴィー」
「さすがに容認出来ませんよ? アユム様が仮初のお姿で降りられるとしても、護衛が必要ですから」
「シヴィーとジオがいればいいんじゃないか!」
「私はともかくジオが街に降りたら人間は恐慌状態になると思いますよ? うまく気配が消せませんから」
「むううううう」
護衛の意味がないっ!
「ドミニク達を護衛にするとか……」
「あれらでは能力が足りません」
「でも人間社会の中では強い方なんじゃ……」
「強い方ではダメなんです。確実に強者でなければ」
「シヴィーが……」
「私一人ではお二人をお守りできない事態に発展する可能性が御座います。最低でも5名は護衛に付かなければ」
「5人…… 何か出すか!」
「それだ!」
「教育が終わる頃にはお祭りが終わっている恐れがありますね」
「ぬぐっ」
「ダンジョンモンスターとして出すのとは訳が違いますから。ドミニク達もすぐには街に降ろさなかったでしょう?」
「そういえば……」
難しい問題だ。
「フィルと私、それとシエルにゲンリュウ様くらいじゃないでしょうか。魔物としての気配を消せるのは」
「いっぱいいるじゃない!」
「ゲンリュウ様は顔が割れておりますから」
「ぬがー!」
キレるコア。
「ミリアを訓練すればっ!」
「天使は擬態を嫌う傾向がありますね。羽を隠すのはともかく、頭の輪はしまえませんし」
「ゲン爺は擬態が!?」
「今擬態してますよ」
「素顔じゃなかった!」
人間の顔っぽく見えたのに。
「龍人族はもっとドラゴンよりの顔です。アユム様に合わせてくれているのですよ?」
「知りませんでした……」
ナラヴィー様から紹介されてきたときから人の顔だったんだもん。
「何より、アユム様とコア様のお二人が問題です。上級クラスともいえる自動人形、コア様の場合は殺戮人形ですよ? 気づかれるに決まっています。隠せますか?」
「か、かくせるもん!」
コアの目が泳いでいる。
「ではどうぞ」
~ しばらくお待ちください ~
「コア様、湯気出てますよ?」
「違うんだ! もうちょっとでこう! こう!」
「お、オレも試さなければ!」
「アユム様は機械人形を使いたいだけでしょう?」
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