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右に左に動き回って、なんとか致命傷を避けていた冒険者もとうとう膝をついた。
既に一人は、その大きな角によって腹を貫かれて激しく流血しているし、体当たりを食らったからか全身ボロボロだった。
『ここまでか』
もう一人の冒険者の男が呟くとゆっくりと地面へと倒れた。
致命的なダメージは受けていない様子だが、ダメージが蓄積されているのか満身創痍。
ドッポライノスはその姿に目を細め、ゆっくりと歩きだす。
『ガンガンガンガンガン!!』
モニター内に金属音が響いた!
騎士の一人だ。彼が剣の腹で、腕に張り付いているバックラーを叩き音を出していた。
彼がいるのは、この辺りでも特に太そうな木の上だ。
『グルル……』
ドッポライノスは首を捻って体の向きを変え、猛然とその木へ体当たりをした!
『ズブンッ!』
形容しがたい音と共に、その大きな木の幹が半分以上消し飛んだ!
『ふっ!』
そのドッポライノスの足元にドレッドが煙玉を投げた。
地面へぶつかったその灰色い玉が破裂し、思いのほか広い範囲に白い煙が充満する。
『今っ!』
ドレッドが声を上げると同時に騎士団のメンバーが動く。
音を立ててドッポライノスの注意を引いてた男が、地面を転がりながら立ち上がる。
2人が足を怪我していた冒険者を両脇から支えて移動を開始。
ジルノスは倒れていたもう一人を持ち上げて肩に担ぎ移動だ。
『グオオオオ!!』
重低音の効いていそうなドッポライノスの声が響き、地面からめちゃくちゃに土が盛り上がり木々が浮き上がる。
『走れ走れ!』
『ひい!』
『ダッシュダーッシュ!!』
『分かってますって!』
ジルノス達はそのまま安全地帯の方向へ体を向けて走る走る。
『せえいっ!』
ドレッドが剣を一振りし、浮き上がる木々を一瞬で何本も切り落とした。
カマイタチ的な斬撃が飛ぶ的な技か魔法だ。うん。
あんな技が出来るならわざわざドワーフつれて木を切らんでもいいんでないの?
切り倒された木々がドッポライノスの鼻先に落下し、ドッポライノスの進行方向の障害物になる。
そのタイミングで再び煙玉を発生。
そのままドッポライノスに背を向けて走り出した。
「エディ、ドッポライノスへ念話を繋げて追わない様に伝えてくれ。オレからの指示だってな」
「「「 聞きますか? 」」」
「聞かなくても構わない。通じて一歩でも足を止めれば儲け物の程度だよ」
「「「 了解しました 」」」
ドッポライノスが一瞬動きを止めて左右に顔を動かす。
エディからの念話が通じたようだ。
ドッポライノスが念話を了承したかは不明だが、追いかける意思はないようだ。倒れた木々を踏み倒し森の中へと足を運んで行った。
ぬああ、流石に短すぎるっ
 




