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『救援矢! 左前方! 距離不明っ!』
安全地帯の大通りから森を睨みつけるケルブ。
『行軍停止! 行軍停止!』
『行軍停止!』
ジルノスが声を張り上げ騎士団のメンバーは復唱しその指示に従う。
ドミニクとケルブ、ドレッドは馬から降りた。
『馬は預かる』
『助かるっす』
ケルブがエーリアに馬の手綱を受け取る。他の騎士達も手綱を預かる者と武器を手に構えられる者とに分かれる。
オレは映像を動かして左前方で戦闘をしていると思われる地点を確認。
倒れ伏しているハイオークと人間が2名。
そして剣を構えている男と弓を構えている男の前に…… ドッポライノス。
「ありゃぁ? 怒らせちゃいけない奴を怒らせてるなぁ」
「です?」
ノイがオレと一緒に首をかしげる。
ドッポライノスが走りこんできたであろう場所は、木々がなぎ倒されて一本道が出来上がっていた。
そしてドッポライノスの足もとには焦げ付いた跡。
戦闘中に炎の魔法でも使ったのだろう。
『どうする? ドレッド殿』
ドミニクがドレッドに聞くのは、今日の依頼はドレッドから受けているからだ。
依頼人が一緒である以上勝手な事は出来ないのだろう。
『もちろん、助けに行く』
『ジルノス部隊長』
『とは言っても、ウチの連中はガチガチの金属鎧だ。森の中の活動には向かない、任せていいか?』
『了解した。すまないが二人は手を貸してくれ』
『分かった』
『もうしばらくすると大通りが広間になってる場所があるっす。そこで馬を休ませて野営の準備でもしててくださいっす』
『聞いた通りだ!』
『『『 了解! 』』』
ガチャガチャと自分の鎧を上だけ外して地面に落っことし、ジルノスはケルブと並ぶ。
『ジルノス部隊長?』
つぶやくのはドレッド。
『…… 来るんすか?』
『ああ。もっとも、私一人じゃないがな』
視線の先にはジルノスと同様に鎧を外した3人。
『ヤバくなったら逃げるっすからね』
『構わん。緊急時だ、さっさと行くぞ』
問答の時間も勿体ない、そう言わんがばかりに騎士の一人が先行する。
『森に慣れてる人間みたいっすね』
『あんなタイプの騎士もいるのか』
『みたいっす、イノシシだけじゃないみたいっす』
先行した騎士を追いかけながら、ドミニクとケルブが並んで走り出した。
『騎士と言っても全員が剣で突撃するだけではないからな』
二人の会話を聞いたジルノスが、やはり走りながら言う。
『特に遠征なんかは様々な技量を持った人間を必要とする。今回はダンジョンへ挑戦したことのある元冒険者を中心に構成しているからな』
『左様で』
ケルブが呟くが、そこからはみんな口を閉じる。
大通りから外れて森に入ると、鬱蒼と茂る雑草や木々のせいで足元も視界も悪くなるからだ。
『!』
ジルノス達騎士と、ドレッド。そしてドレイクとケルブが救援の矢を確認した地点へ近づけば近づくほど、木々の折れる音と地面の振動が強くなっていく。
独歩でもオロチではない




