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とか思ってたけど、説得などせずあっさりと解決。
入手DPが極端に増えたのが良かった、人間から搾り取るんですぅって言えば完了です。
騎士団の人間もピンからキリまでいるけど、かなりの実力者がいたようだ。
末端の騎士も、Cランク冒険者程度の実力があるらしい。
戦闘員以外にも、騎士団に追従してきた商人やら補給兵やら総勢で1000人近い人間が一気にダンジョン内、というか外層部に侵入してきたわけだ。
しかも子供や老人がいない、大人ばかりである。
DPが増えるのも頷けるという物だ。
「地下も大盛況だ」
中央騎士団の騎士達はまだ休息中だが、彼らの食い扶持を確保するために多くの人間が地下第1層で食糧調達と薪木調達に勤しんでいる。冒険者だけではない、いかにも普通の服を着てる街の人まで薪木拾いを行っているのだ。
あまり奥にいくと危ないのにどんどん入っていくバカがいるからドキドキする。
まあ巡回している兵士達に注意されてすごすご帰っていくわけだが。
「地下の仕様を変えますか?」
「そのままで。変えるなら中の人間全員追い出さないといけないし」
神々の試練の間だけは夜間は閉鎖しているので問題ないが、そこ以外は夜だろうが昼間だろうが誰かしらが入ってきている。
出入り口を完全に封鎖して一人ひとり追い出すのは、不可能ではないが結構な重労働だ。
正直なところ、地下第1層に人がいようが街に人がいようが変わらないのだ。
だって等しく侵入者だもん。
地上にいるよりも地下に来た方がDPの獲得が大きくなるとか、そういったゲーム的要素はないのである。
あえて増えるとしたら、ミスって死んだ冒険者とかの遺体を回収してDPに変換できるくらい?
「中央騎士団の連中が王都で宣伝してくれれば、もっと多くの人間が街に来てくれるようになるはず」
飢えることなく、仕事にありつけるダンジョンがあれば人間は集まるだろう。
問題はこの世界にはインターネットどころか電話すらないのでそれらの情報が行き渡りにくいところ。
このダンジョンの有用性が伝わればもっと街は拡大するだろう。
まあオレのダンジョンの範囲を超えるような大きな都市にはならないだろうけど。
「ご主人っ! 例の騎士団の人間が塔に来たですっ!」
「お? どれどれ」
モニターを切り替えると騎士団長を名乗ってた男が塔の入り口の前に来ていた。
昨日は領主の所に挨拶に行って、それ以降大きな行動は起こしてなかったから監視はノイとエディに任せていた。ミーティングとかしてたけど、こっちから見ると不毛なことしか言ってなかったから途中で飽きたのだ。
『塔の主よ! 聞こえているか! 私はヴィード王国中央騎士団! タワーダンジョン攻略部隊! 部隊長のジルノス=ヴァラーダスである!』
「はいはい、聞こえてますよっと」
向こうには聞こえないが、つい返事をする。
『これよりこの扉を開けるべく調査を開始する! だが、そちらから招き入れてくれるのであれば手荒な真似はせぬと約束しよう! 返答はいかに!?』
ん?
「何を言ってるです?」
「わからん」
ちなみに今日は4個の鍵石がちゃんと転がっている。誰かが抱えてたりしない限り、毎朝定位置に戻ってくるのだ。
騎士団の他の連中がその石を丹念に調べ始めていた。
そしてその後ろにはとある部隊が控えていた。
『…… 返答は無しか。やむを得ん。やれっ!』
『はっ!』
騎士団の連中が下がると。巨大な丸太を何人もの屈強な男たちがロープを括り付けて持ち上げている。
所謂攻城槌と呼ばれるものだ。
『せーの!』
ドスン!
『せーの!』
ドスンッ!
『せーの!!』
ドスンッ!!
モニター越しに鈍い音が響き渡るが、もちろん扉はビクともしない。
開けたければその石を井戸にぶち込んできなさい。3か所までは簡単だよ。
「実力行使ですか、美しくないですね。滅ぼしたくなります」
「人間風情が、我らが歩様の塔を汚すのは我慢出来ませんね」
「頼むから我慢してくれ」
フィルとシヴィーが怒っている。
「さすがご主人のダンジョンですっ! あの程度じゃビクともしないですっ!」
「…… なるほど、人間の愚かしさを見て改めてアユム様の素晴らしさを確認とは。私もまだまだのようです」
「ますたーすごい!」
変なヨイショはいらないよ。
『ダメです! 報告の通り傷一つ付きません!』
『やはりか……』
以前にも同じような形で強引に扉を突破しようとした輩がいたが、もちろん扉は開かなかった。
その時の報告を受けていたのだろう。
『よし、次だ!』
『はっ!』
ジルノスが声を上げると、数名のみすぼらしい服装の男たちが前に出て来た。
『指示した通りだ、実施せよ』
『へ、へい!』
『ほ、ほんとにこの塔を登れば許してもらえるんですよねぇ! 隊長サマ!』
『しゃべってないで結果で示せ! 貴様らは今すぐ切り捨てても問題ないのだぞ!』
『ひい!』
みすぼらしい男たちはオレの塔の石積みの隙間に指や足をかけて、徐々に上っていく。
全員ロープを持たされているが、命綱は無しだ。
『へえ、へえ、へえ』
『ひい、ひい、ひい』
息も絶え絶え男たちが上る。だが2階層から3階層の切れ目辺りで…… 落ちた。
『ギャー!!』
『ひええええええ!!』
『ギャーーーー!!』
悲鳴と共に男たちは地面へと叩きつけられた。
『おい』
『はっ!』
打ち所が悪く、既に絶命している者もいたようだ。
それ以外の生きている者達…… なんと騎士団のメンバーによって殺されてしまった。
『やはり駄目か。犯罪者を準備しておいて正解だったな』
『うちの団員達ならこの程度の高さから落ちても死にませんがね。一部を除き』
殺された男たちは犯罪者だったらしい。
『…… 間違いなくダンジョンだな。ダンジョンは正規のルート以外からは攻略出来ない。そして正規のルートからの攻略であれば、確実に入れるはずだ』
『ええ、それに……』
ジルノスの横に控えていた男が、先ほど切り殺した男たちを見る。
男たちの遺体は薄くなっていき、消失した。
『街の中全体でこの現象が起きるらしいな』
『正確に言うと、この塔を中心にかなり広い範囲で確認されているそうです。この街を取り囲む壁の外でも、遺体が消える現象が確認されております』
『そうか…… とはいえ、遺体も残らないとは。惨い話だ』
『盗みを働き、女性の尊厳を穢し、その上で多くの人々を殺めた者達です。野盗などに団長が心を痛める必要は御座いません』
『そうだな』
どうやら塔を登らせた男たちは犯罪者だったらしい。
行軍の傍らで捕まえて来たのだろうか? 軍隊に喧嘩を売る盗賊なんかいないと思うけど。
『ともあれこの石。ご丁寧にマークがついている。これを解析すればいずれはこの扉も開こう』
『ええ、同意見です』
『以前よりこの街の人間が調査をしているはずだ。彼らの調査結果を参考にし様々なアプローチを考える必要がある』
『置いてきた頭でっかち達が何日か後には到着するでしょう』
『宮廷魔術師の皆々様だ』
『でしたっけ?』
ジロリとジルノスが同じく騎士団の男ににらみをきかせるが、その男はどこ吹く風だ。
『ではもう一つの、入れる方に足を運ぶとするか』
『ええ。こちらはお任せ下さい』
『頼んだ』
そう言ってジルノスは乗っていた馬を引いて移動を開始する。
騎士と言っても街中を馬で移動はしないんだね。
すっげえ久しぶりに塔の正面玄関が出て来た。




