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しんしょぉぉぉぉぅ!
『全体! 停止っ!』
『はっ!!』
大きな号令一つと共に、鎧と鎧の装飾が統一された軍団が進軍を止めた。
彼らはオレの塔を少しだけ見るが、たちまち視線を街に向ける。
『こちらはヴィード王国東部サイドヴィード地区! 辺境伯が一の家臣! ドレッド=バッツである! 代表者は名乗られよ!!』
塔の周りに配置されている街。その周りを取りかこむように作られた外壁の上から、低くも通りの良い声が響き渡った。
『ヴィード王国中央騎士団! タワーダンジョン攻略部隊! 部隊長のジルノス=ヴァラーダスである! この街がダンジョンの危機に瀕していると聞き応援に参った!』
ドレッド兵士長よりも更に通りの良い声で返答が行われる。
『この街は見ての通り健在である! 危機に瀕しているとは如何様な判断か! 我ら兵士団や辺境騎士団の実力をお疑いか!』
『事実! 魔物討伐の救援要請を受け取った! 我らの行軍は妥当である!』
『その要請は取り下げたはずだ! 我らは我らの力でこの街を守った! これからもこの街は我らが守る!』
『我らが行軍は国命であり王命である! 我らの行動を否定する事は王命を否定する事也! それでもなお我らの行動に正義非ずと言い放つか!』
『王命に否を唱える事は決してない! だが我らが街の規模で中央騎士団すべてをまかなうことは敵わず! よって代表者とその護衛一部隊、調査に一部隊のみの入領であれば受け入れよう!』
『了解した! だが我らが騎士団は長く行軍をした英雄也! そなたらの街が安全というのであれば、ひと時の休息を彼らに与えて貰おう!』
『勿論である! 街の東側の出入り口より入領されよ! 諸君ら英雄を歓迎する!』
そんな口上が続いているが、これはどちらかといえば街に住む人間に対するアピールである。
エディが監視している最中に彼ら騎士団の先触れと領主が打ち合わせしている姿が確認されていた。
当然会話も盗聴。
街に大勢の兵士や騎士が入ると街の人間が怯えるのだ。
だから街の兵士の代表であるドレッドが声を張り上げて街の人間を守ると宣言。
騎士団の代表もそれに合わせて返答をし、必要最低限の人間でしか街で活動させないと宣誓。
街の中に騎士団は入れるが、あくまでも休息の為であり街の中で自由にさせないよとの応対だ。
『諸君! 聞いての通りだ! 我らはこれよりサイドヴィード辺境伯が領都へ入る!』
『はっ!』
隊長を名乗るジルノスという男が騎士団を指揮し、南口ではなく東口へと移動を開始する。
余談だが、この街の東口には辺境騎士団の詰め所や訓練所などが集中している。
東側に国境があり、国境を守る砦が東側にある為だ。
仮に砦で有事が発生した場合、戦場になる場所に最も近い場所でもある。
『ふう』
ドレッドが息を吐く。
『お疲れ様です、兵士長』
『ああ、こういう事はもうこりごりだ』
『そうですね』
『さて、あとはブレイン殿に任せるか』
『中央騎士団の受け入れですからね。建物がガワだけでも間に合ってよかったです』
『ガワだけだからな…… 貴族の三男坊四男坊共が我慢できるかが問題だ。街の人間には再度東地区に近寄らないよう通達させよう』
『食料だけでも潤沢に用意出来るだけよかったですね』
『まったくだ、まあその騎士団を呼び込んだのがあの塔なんだがな……』
や、森から湧き出てきたゴブリンやらオークやらのせいでしょ?
ああ、でもあの辺の魔物が誘引されてるのはダンジョンのせいか。
「勝手に住み着いて好き放題言いますね」
「欲望に駆られた人間がどれだけ被害に遭うか楽しみですっ!」
「地下第1層、そろそろあやつを放ってはどうでしょうか?」
「どうせなら鋼竜も動かしますか」
「じおが行く?」
うちの血気盛んな子達をどう説得しようか……。
 




