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開かずの塔のダンジョンマスター  作者: てぃる
宣戦布告と塔の完成
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 なんやかんやと騒がしい朝を迎えたが、日常という物は非情だ。


 今日は厄日なのかもしれない。


「来たネ」


「マスター歩、世話になる」


 今日はナラヴィー様のダンジョン内にある浮島でお話合いである。


 お客様がお客様なので、お外で歓待の準備。


 そんな浮島に足をお運びになられたのは二柱の神様、ケレンセリッシュ様とニーロイップ様だった。


 従者としてリグレブもいる。


 …… この神様達、今まで従者なんか連れてなかったような気がしたんですけど。


「今日はキミに、正式に依頼をしに来たネ」


「ご依頼ですか」


「南国エリアを作るのネ。前回同様、DPはこっちで出すネ」


「畏まりました、着手いたします」


 オレはニーロイップ様に抱っこされるケレンセリッシュ様に深々と頭を下げる。


「マスター歩、私の工房も頼む」


「もちろんでございます。そちらは既に準備をしておりますので、見取り図のご確認をお願いしたく存じます」


「おお、素晴らしい!」


「ニーロイップだけ随分準備がいいネ。ずるいネ」


「いえ、ケレンセリッシュ様には作成を希望される植生の確認をしてからと思いまして。南国エリアで作成出来る作物のリスト化は既に完了しております」


 ガラス製の温室でバナナの栽培をリーサ達が試していたりするからね。


「出来れば高原とセットで作成したいと思っております」


 コーヒー豆なんかも栽培して貰いたい。


 チョコレートは全種族の女性陣に人気で、コーヒーはエルフ達やドワーフ種に人気だった。


 DPで作ってもいいのだが、魔物達は自分で作れるものは自作したいらしい。


 あと単純に1階層丸々作成するとなると、一つのエリアだけでは勿体ない。


「キミ、読ませるネ」


「畏まりました」


 資料を机の上に置くと、ケレンセリッシュ様はそのリストの匂いを嗅ぎながらリグレブに声をかけた。


 穏やかな表情をしつつ、ケレンセリッシュ様を優しくニーロイップ様から預かり、隣のテーブルへと移動。こちらに一礼をして資料も移動。


 ケレンセリッシュ様が移動すると共に、リリナ・リリサ・リリアのエルダードライアド婆ちゃんズも登場。


 着席すると共に資料と睨めっこ開始だ。


「ニーロイップ様にはこちらの資料をご覧になって頂きたく……」


 資料を取り出す途中でひったくられた。


 は、はやい……。


「む、むむむむ……」


 そこに描かれているのは工房だ。


 ただ、普通の工房ではない。


 大型の資材を加工できるように学校の校庭並の大きさの部屋で2階建ての建物だ。


 1階部分には木工や石工が行えるような加工場。


 2階部分は絵画、裁縫、音楽室。


 地下1階も設置、作成した芸術品を展示する展示スペースだ。


 とりあえず思いついた芸術的な作品を作れる工房を用意した。


 木材で作ると重量物とチムのコンボで床が抜けそうだったので、鉄筋コンクリート(もどき)で作成する予定だ。そこはドワーフ達が頑張るだろう。


 大型の美術品の移動で、エレベーターは用意出来ないので転移魔法陣を利用。


 実際には体育館の上に適当に建物をのっけただけだ。


 もちろんチムが入って作業出来るようにしてある。


「マスター歩」


「は!」


「この機能に関しては中々に練られておる…… が。外観はどうなっておる?」


「は?」


「芸術品は、生まれるべくして生まれるのだ。施設の有用性、見た事のない楽器や彫刻刀などの道具類も気にはなる。だが、この簡素な建物ではたしてこの世界を超越するような芸術を生み出す事が出来るのだろうか? インスピレーションが湧くだろうか? 環境を変えれば新たなる芸術は出来るだろう。だがそれは最初だけだ。芸術とは日々の変化から生まれるのだ。美しい絵を描きたければ、美しい石を持ってくれば良い。だがそんな物は芸術か? ただの写し絵だ。私が望むのは芸術である、分かるかね? 分かるだろう? 我が信徒であり、理解者であるマスター歩が分からないはずがなかろう?」


「え、えっと…… 」


「その施設の立地、外観、内装、そして共に芸術を生み出さんと研鑽するライバル! そういった物がはたしてこの施設で得られるのか?」


 ライバルは無理だと思いますよ!


「私は技能でなら誰にも負けぬ! 神だからな。ならば道具か? 道具ならば神具を持ち込めば良い! 他には真似できぬ。しかし芸術は技能だけ、道具だけで作るのではない! もちろん最低限の技能や道具は必要だ。だがそれ以上に必要なものは何か! 情熱であり! 熱意であり!! 魂であるっ!!!」


 控えさせていたチム達が無言で涙を流しております。


「マスター歩よ、チム殿達の主であるがゆえに、驕りを持ったか? だがまだ遅くはない! さあ! もう一度設計をしようではないか! 共に!」


「は、はい」


「うむ! 建築とは芸術なのだ!」


 ……日本でも寺院や一部の建造物は立派に観光名所になってるが、確かに芸術といえば芸術なんだろう。


 しかし、ここでこのこだわりを見せつけてくるのか。


「ここでは話にならんな! ダンジョン内をくまなく散策し、芸術的建築物が完全に調和する風景を探さねば!」


 うは! 面倒そうだ!


「畏まりました、それでは案内人を用意します。チム、任せたぞ」


「「「 はっ!! 」」」


 チェム・チュム・チャム。3人の美女が口をそろえて返事をする。


 チムも頷く。


 ぶっちゃけなんでもいいのでニーロイップ様の理解者であるチム達に丸投げだ。


「マスター歩は来ないのかね?」


「申し訳御座いません、侵入者がおりますので」


 常にいるからね!


「む、それは一大事だ。いかに芸術的な建物を作っても冒険者に破壊されてはかなわんな。しっかり対応してくるがよい」


「はっ! それではこれで失礼致します!」


 挨拶挨拶。


「ケレンセリッシュ様も、ここで失礼致します」


「かまわんネ。あとでそっち行くからご飯頼むネ」


「畏まりました」


 サタンコックが頑張るはずだ。


 オレはちらりとリグレブに目配せ、リグレブは頷き神々へ顔を向ける。


「お二人のお邪魔にならぬよう、小生がマスター斎川に随行致します」


「そう、頼むネ」


「…… であるからして、自然の中で映える建物というのは……」


 ケレンセリッシュ様は軽く返事をし、ニーロイップ様は見事に聞いていなかった。

書いてて楽しいニーロイップ様

一度にこんなにしゃべる登場キャラはこいつだけだと思う。

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― 新着の感想 ―
[一言] 頭が沢山。 八岐大蛇とか阿修羅とかウロボロスやケルベロス、オルトロス... 双頭や三頭は結構いたりしますが4頭はあまりいないですね。
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