204
「ジオはもちろんだけど、シヴィーが戦闘するのをまじまじと見るのは初めてかもしれないな」
「いままで満足に、戦闘といえるイベントがありませんでしたらね。先日の夜会でもシヴィーは戦っていないとのお話でしたし」
「ああ。ジオとの模擬戦を見たくらいだ、まあ速すぎて良く見えなかったけど」
「歩様であれば、魔力で体を強化すれば視覚の強化も可能です。それを行えば彼らを捉える事は容易でございます」
「そうなんだ?」
「ええ。繊細なコントロールを自在に行えればそれも可能です。歩様はエメラ様のご加護を賜っておりますから、間違いなく使えるようになるはずです。勉強の時間に今後組み込んでおきましょう」
「え」
「以前から歩様の魔法は大味すぎると気になっていたのです。これを機に改善していきましょう」
「まあ名付けの時か雨を降らせるくらいしか魔力的な物使ってないからなぁ」
込めれば込めるほどいいって物にしか使ってないな。
「あと、魔力を隠す技術も覚えないといけませんね。先ほどの魔力の高まり、戦前の彼らには鼓舞になったかもしれませんが、畏怖を覚えた者もいるでしょう」
「怖がらせちゃったかぁ、そりゃまずいわ」
魔物達にあまり恐怖なイメージを持たれたくない。
『動き出したな』
『じゃあ、いきます!』
『頑張れジオ!』
『はい!』
オーガジャイアントのジェフが一歩足を踏み出すと、ジオも前へ走り出した。
ジオは勢いをつけて飛び上がり、ジェフの体めがけてその小さな拳を振り回す。
「え? え?」
ジェフはそれを脅威と思ったのか、後ろにジャンプして躱す。
空中で拳を空振りさせたジオ、もちろん隙だらけ。
ジオよりも先に地面へ両足を付けたジェフが、手のひらを叩きつける!
「ジオ!」
まるで虫でも振り払うように、ジェフはジオを地面へ叩き落した。
地面から爆音と砂ぼこりを舞い上がらせた。
「シヴィー! ジオを!」
『シヴィー、マスターがジオを助けてやれっていってるぞ?』
『え? ああ、必要ないかと思われますが……』
念話出来るシヴィーが離れている為、こっちのコアから向こうのコア伝いにオレの意思が伝わる。
不便っ!
「ジオがやられたぞ! あんなのくらったら!」
「ピンピンしてるみたいですね」
砂ぼこりが落ち着く先、怒った顔のジオが仁王立ちしていた。
『ふく、せっかくますたーにもらったのに……』
「無事か」
あんな勢いで地面にたたきつけられたのに、ジオに目立った負傷は見えない。
シエルが用意した汚れて良い執事服を気にしつつ、大きく息を吸い込んだ。
『がああ!!』
ジオが咆哮と共に口からブレスを吐き出した。
「てかなんで元の姿に戻らないんだ?」
あんな大きい魔物を相手にするのに、人型サイズでは不便ではないだろうか?
フィルの方を見ると、フィルも首をかしげる。
『グルウウウウ!』
ブレスを浴びたジェフが膝をつく、体中に火傷が出来ていてボロボロだ。
そんなジェフを一瞥し、ジオが再び地面を蹴った。
『だああああ!』
今度はきっちり拳がジェフの右頬を捉えた!
その衝撃でジェフの顔がブレる!
『グル……』
ジェフはジオを睨みつけると、その拳を振るう!
地面に足を下ろしたジオ、流石にそんな大ぶりは食らわず悠々と回避。
「よし、頑張れジオ」
ジオは低い姿勢で地面を走り、ジェフの右足に拳を叩きこむ!
何度も何度も叩き込む!
『グガ! グガガガ!』
ジェフも負けじと殴られていた足を引いて、小さなジオを小石のように蹴る!
『またっ!』
無事回避を行えたジオだが、衝撃で体が飛ばされてしまう。
『むう……』
無事に着地したジオが唸り声をあげる。
何か考えているのだろうか。
『ガアアアアア!』
ブレス。
『ガアアアアア!』
またブレス。
『ガアアアアアアアアアアア!!』
またまたブレス。
先ほど食らったからか、ジェフは手を顔の前で交差させてガードをしている。
だが3度目のブレスが終わった時、膝から崩れ落ちて倒れこんでいった。
ジオとシヴィーの共闘を見れるはずだったんだが……。
没話)
主人公:ジオ、なんで元の姿で戦わなかったんだ?
ジオ:おおきくなるとこわいって…… あと、せかんどさまをふんじゃうかもっておもって
主:こ、こわくないぞう! 格好いいぞ! だからああいう時は大きくなっていいからな! コアには離れるようにいっておく!
ジオ:かっこういい…… わかった! ああいうときはおっきくなる!
このあと入れようと思ったけど、他の話題が盛り上がらなかったから話自体が削除されました。
まあ裏話程度で考えて下さいな。




