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まっするまっする
「エメラ…いい場所に呼んでくれたな」
「おおおおおおおい! なんだなんだ!! お前からの呼び出しなんてマッスル珍しいな! 思わず大胸筋が上下するっ」
お久しぶりのナラヴィー様と、水の神(?)様。
「おおおい! おおおお前! ううう海の一族か! 200年ぶりじゃないかっ! 良く生きてた!! おおおお俺様感動だぞおおおおお!!」
『お』が多いっ!
「よしよしよーーーーし! 俺様のテンションダダあがりだああ!! 良し! 加護だ! 加護だ加護!! 加護をやろうっ!」
「待てブルーシェル。落ち着け、あと少し黙ってろ」
ナラヴィー様がオレの前に立つと、どこからともなく剣をだした。
「え?」
「ナラヴィー様っ!」
「マスター!」
突如剣を出したナラヴィーの前に飛び出すダークエルフとコア。
「退け」
「ざけんなっ! なんでナラヴィー様がマスターに剣を向けんだよっ!」
「ど、どきませんっ! 主より先に死なない下僕が何処にいましょうかっ!」
その言葉を聞いたナラヴィー様の顔の表情が更に引き締まる。
「そいつは俺達、神の理から外れた存在かもしれん。俺の把握してないダンジョンマスターだ」
…やっぱり忘れられてる?
「先週から突如大量のDPを消費しだして、目立った動きをしてるダンジョン。それがここだ。久しぶりに大規模で動き始めたダンジョンはどこだと調べてみるが、誰もそのマスターを知らないと来ている。そして先ほどダンジョンプレートが発行された。地球、日本出身だという。魔法の無い世界から、世界の壁を越えて更に他所の神の結界を通過できるような存在が日本にいる訳ないだろう?」
ナラヴィー様の剣が怪しく輝きだす。
やべえ、オレ死ぬかも。でもエメラ様のナデナデが止まらない。緊張感が伝わらないわー。
「あなた、外からの侵略者なの? エメちゃんに正直に教えなさい」
「あの、エメラ様。そろそろ離していただけると」
「ダーメ、正直に言わないと何万年でも撫で続けるんだから」
それはハゲそうだ。
「えっと、オレがこの世界に召喚されたのは150年程前になるらしいです」
「ほう、そんなに前から潜伏していたのか。随分計画的じゃないか…召喚されたと言ったな。誰に呼ばれた」
ああ、やっぱ忘れられているわ。
「ナラヴィー様です」
「は? 俺?」
「そうです。オレは召喚されてすぐ、黄金の龍と銀色の龍の戦いによりダンジョンが破壊されてペナルティを受けました」
「ペナルティ…」
「ダンジョンのギミックが破壊されて、攻略不可能なダンジョンになってしまったのです」
「まあ、大変だったのね」
「オレは凍結処理されただけでしたから。大変だったのはコアですよ。150年もマスター無しの状態、一人でダンジョンの修復をしてくれていたんですから」
「マスター」
「お前には世話をかけたなコア。今まで言わなかったけど、150年もありがとう」
「ふんっ、それがあたしの仕事だからいーんだよ」
「あとでコーラ飲もうな、ポテトもだすぞ」
「………おう」
そんなオレ達のやり取りを見ていたナラヴィー様は剣をしまう。
「ちょっと待て、確認する…コレか? 違うか。コレ?」
ナラヴィー様が本を開いては閉じて、新しい本を出してを繰り返している。
ドラ○もんのポケットみたいだ。
「これかっ! 違うっ! イヤ、合ってる! 斎川歩っ! お前かっ!」
「そうです」
「マジか、お前。ペナルティうけて150年も生き残ってたのか、すげえな」
「ナラヴィー様のおかげだぞ、温情を受けたからな」
「そうなのか?」
「覚えてないな…」
そんな話聞いてない。
「ヴィー様。忘れてただけなのね?」
「え、あ…ハイ」
「ヴィー様のうっかりでこの子達に剣を向けたのよ? 何か言う事は」
「歩、コア、それにダークエルフ。剣を向けてすまなかった。許してくれ」
「おおお終わったか!? もう黙ってなくていいな!? 加護やっていいか!? いいよな! おおおおおおおおい!」
台無しだよ。




