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開かずの塔のダンジョンマスター  作者: てぃる
神々の試練の間
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『闘争による褒賞を求めるか? 奉納を執り行い供物を捧げるか?』


「奉納を。供物をどうぞお受け取り下さいませ」


『神に祈りを』


「神に祈りを!」


 一人のドワーフの男が地面に頭をこすらんばかりの勢いで土下座姿勢。


 その瞬間、男は荷物ごと消える。


 後ろから歓声が上がるのもここ最近では見慣れた光景だ。


『よく来た、信心深き旅人よ。供物を台に置くがよい』


「畏まりました」


 男は自分の持っていた荷物から、黒塗りの一振りの剣を取り出す。


 その剣を神々しい台の上に置き、後ろに下がる。


 男は祈るように両手を合わせ、その場で跪いた。


「どれ、見せてもらうかのう」


 飄々とした声が聞こえると、顔を上げた男の前に一人の年老いた龍人が現れたのだった。



 ◇



「かはー! たまらん!」


「くっそお! うらやましい!」


「だから分けてやろうと言っておろうが」


「いーや! 次は! 次こそは自力で!」


「どれ、ワシは頂こうかの」


 新設されたダンジョンの最奥の白亜の神殿のような建物。


 そこの中に用意されている休憩室、そこの芝生の上でドワーフが3人座ってだべっている。


「もうちっと酒精が強いのが好みなんじゃがのぅ」


「だがこの喉を刺激する酒はなかなかだと思うぞ」


「むろんじゃ、この酒を造れぬのが残念じゃ」


「いずれ造れるように研究を進めておるようじゃがなぁ」


「必要であればいくらでも支援をするのじゃ」


 そんな話をしている中、更に一人のドワーフが登場。


「どうじゃった!?」


「はっはっはっはっ、これじゃ!」


 そのドワーフは大きめの水筒、推定3リットルは入りそうな水筒を手に持っている。


「おお!」


「素晴らしいのう!」


「今回はもう一つの酒にしたぞ。こいつが一番酒精が強い」


「素晴らしいのぅ」


 ウィスキーである。


「今回の剣は相当に圧縮をしたからのぅ。自信はあったんじゃが、痛いところを突かれた」


「というと?」


「炉の火力不足を指摘された。あの龍人、相当良い目を持っておる」


「ぬう、組合で大型炉の開発を考えておるようじゃが」


「いくつあっても足りないのぅ」


「じゃな、ここのところ鉄は多く手に入っておる。このダンジョンは宝の山じゃな、すずや銅も出てくれればもう少し粘りのある鉄になるんだが」


「その辺に宝箱でも落ちとらんかのぅ」


「なんならガラスの壁を突破するか?」


「馬鹿もん、死ぬわ」


「じゃな」


 先日、この施設に展示されている財宝を狙った冒険者が魔物に袋叩きにあって絶命した。


 ガラスを割ろうと武器を振り下ろした結果だ。


 その後、間近で目撃した別の冒険者が掃除をさせられていたのも話題になっていた。


「武器を抜いただけで警告音がなるからのぅ」


「見たことのない魔物じゃったな」


「あれだけの数に一瞬で囲まれたらたまったもんじゃぁないの」


「1匹にすら勝てんわ」


「確かに!」


 ドッと笑い声が広がる。


「しまった、酒のつまみがもう切れた」


「フルーノじゃ合わんからの」


「はあ、帰るか。誰か鉄鬼兵を売ってはくれぬか? 金貨3枚でどうだ」


 ドワーフの一人が周りで休憩してる冒険者に声をかけた。


「おう! パーツも拾ったから全身揃ってるぜ。鉄鬼馬もどうだ? 金貨5枚で」


「おお? 珍しい。買うた!」


「毎度!」


 冒険者の一人が背負い袋タイプの魔法の袋からそれらを出す。ドワーフも同じような袋を出し、即座にしまう。


「お前さんも持ってたか」


「魔法の袋なんて普通出回んねーよな。金はあっても売ってねえって昔は良く嘆いてたもんだ」


「その分護衛も雇わないといけなくなったがなぁ」


 ドワーフの使う魔法の袋、これは獲得した冒険者チームから買い取ったものだ。


「ダンジョンからも出る時があるって話は聞いてたが、まさか魔物と戦っただけで手に入るとは思わなかったな」


「宮廷魔導士やら魔女やらに大金渡して作って貰うもんじゃからなぁ。まあそういったところで買うよりもガワが大きくて入る量も少ないが」


 先ほどの鉄鬼兵を3,4匹入れたらいっぱいになる容量だ。


 袋自体も背負い袋サイズで大きい。冒険者に人気のサイズは胸元に入れられる大きさだ。


「でかい袋だと魔物と戦ってダメにする奴が結構いるからなぁ」


 魔法の袋は穴が開くと中身が溢れて使い物にならなくなる。背負い袋のタイプだと、どうしても戦闘中に傷がついてしまうのだ。


「欲張って小型で大容量サイズの魔法の袋を所望した奴は死んだしな」


「生き残りが一人おったのぅ。遮蔽物の無い闘技場で鉄鬼獅子3匹とウィザードガーゴイルとブレインアーチャーが相手という話じゃが」


「それ、騎士団が出動するレベルの相手だよな?」


「Bランクの冒険者でも20人くらい必要だろ……」


「20人おればいけるんか?」


「実力がしっかりBランクでかつ仲間割れが起きなければな…… まあ半数は生き残れるんじゃねえか?」


 自由人の冒険者だ、統率を取るのが難しい。


「あの兵士長が挑戦をしなかったって話だぜ? 自分ひとりじゃ倒しきれないし、全部倒すには部下が何人か犠牲になるという話じゃ」


「時間制限もあっからなぁ」


「人数制限も6人までだしな」


「普通の魔法の袋でも下手な新人が犠牲になってるからの」


 冒険者達だけでなく、商人達にも圧倒的な人気を誇る魔法の袋。


 このアイテムも神々の試練の間での人気商品だ。


 挑戦して、安定して獲得出来るチームは数少ないが存在はする。


 それらの人間は、総じて英雄と呼ばれる人種に足を踏み入れようとしている冒険者達だった。

今週中には新しい章に入るかなー

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[一言] 思った以上に命が軽い、なぁー これは、スレる、わぁー
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