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車掌さんにするか迷った。
「おお、艦長服じゃないか」
髪を魔法で乾かされた後、用意されていた服は艦長服だ。そういえば松本部屋用に着ようと思ってたんだった。
「コア様に準備して頂きました。指令室で指揮なさるのに、最もふさわしい服装だと」
「うむ。気が利いている」
「ではこちらに」
ダークエルフの案内でバルコニーに立つ。
…わあ、コアがドレス姿だ。金髪ロングに赤いドレスってエロいよね!
「似合うじゃないか」
「殺すぞ、歩きにくいったらありゃしねえ」
ドレスだと普段みたいに大股で歩けないし、ヒールも履いてるからね。
「彼らがこの屋敷で働く者達です。手を振って下さい」
オレとコアは顔を見合わせた後、諦めた表情で手をふった。
『わああああああああああ!!!!!!!!』
歓声と武具を叩く音がすごい。
「も、もういいよな、中に入るぞ」
「お、おう。そうだそうだ、いいだろ!」
こんな大人数に囲まれた事のないオレは早々に退散を希望。
コアなんか引きこもり歴150年のベテランだ、すぐ逃げたいだろう。
「もう少しお付き合いください」
笑顔のダークエルフがやっぱ怖い。
言われるがまま手を振ったり、適当にねぎらいの言葉を言って退散。
何やっても歓声と金属音がすごい。
「リビングガードナーやリビングスラッシャー達は声が出せませんからね。ああやって喜びを表現しているのですよ」
そんな言葉を聞きながらダークエルフの案内で5Fへ移動。
4Fから5Fへは階段が無くなって、屋敷の中に転移陣が用意されていた。
「コアルーム残ってるんだな」
「コア様のお部屋には誰も配置致しません。出入口に警護を配置。中に控室を作ってメイドを1名配置しているのみです。コアルームは余り人の出入りがあっていい場所ではありませんから」
まあこの塔の心臓部だからな。コアに何かあればダンジョンは崩壊する。
「歩様には是非、コア様の強化をお願いしたく思います。コア様専属の端末は数があればあるほどダンジョン内での情報収集に役立ちますから」
「ん、コア。適当に見繕っておいて」
「あのなあ、まあいいけどよ」
オレとコアとのやり取りに、ダークエルフが苦い顔をする。
「まあ言い出したのは私ですから…」
そんなコアルームをしり目に、祭壇に目を…目を…。
「あれは祭壇じゃなくて神殿だよな」
そこにあったのは高貴な気配漂う白亜の神殿。
とても闇の神様が祀ってある雰囲気じゃない。
「出来ればなのですが、ナラヴィー様以外の像も置いて頂ければと思います」
「んー? そういえばナラヴィー様以外の神様は知らないな」
「歩様は異世界出身でしたね。今まで教えてくれる方がいなかったのですから仕方ないでしょう。今後は私がお教え致しますのでご安心下さい」
えー、勉強きらいー。
「ひとまず、ダンジョン内での素体などを用意して下さる【魔法神エメラ様】ダンジョンの理を管理なさっている【秩序の神ゴース様】魔物達に最も崇められている【瘴気の神ブロッドビッシュ様】マスターやセルキー達の属性である【水の神ブルーシェル様】ドルイドやブラウニー達の属性である【地の神アーシア様】の像を用意して頂きたいと思っているのですが…」
「コア聞いてた?」
「はいはい、出しゃいいんだろ出しゃ。1体1万DP、5万DP使うぞ」
「頼んだ。配置は任せていいか?」
「あの…5万DPですよ? 屋敷で大量にポイントを使いましたし、私の召喚でも大量にDPを使い…よろしいのでしょうか? 」
「後回しにすると忘れるかもしれないから今でいいよ」
まだ1300万DP以上あるし。
そう思ってたらダークエルフと後ろに控えていたラッシーセルキーの二人がオレに跪いた。
「我等に信仰の自由を頂き、有難う御座います。この御恩、決して忘れません」
「「 有難う御座います 」」
「え? え?」
「ダンジョンマスターのほとんどが自分のダンジョン、自分の世界の頂点に立つ存在です。ほとんどのマスターは下僕に信仰の自由などお与えになりません」
「あー…そんなのあるのか」
「知恵ある魔物はすべて神の存在により自らが生かされている事を知っております。特に自然に生まれたのではなく、ダンジョンの力によって生まれた我等は…」
なるほど、DPを消費してるとはいえ生き物を作るのは神の仕事なのか。
「もちろん、マスターである歩様への信仰も欠かしません! ご安心ください!」
ダークエルフの言葉に二人のメイドも頷く。
「まあ堅苦しいのはいいよ。神像の設置よろしく。どうせなら植物とか生やしてもっと雰囲気だしたら? コア、出してあげて」
「りょーかい」
今は闇の神ナラヴィー様の像とそれを祀る祭壇と照明代わりの燭台くらいしかない。
「早速準備いたします。しばしお待ちください」
神殿に設置してあったテーブルセットにオレとコアを誘導すると、メイドの一人がどこからかお茶の準備をしてくれる。
たまにダークエルフがきてコアと一言二言しゃべると、DPを使用していいか聞いてくるので許可。
「…完成致しました。歩様、コア様。有難う御座います」
気が付くとメイドさんも増員。物を運ぶためか鎧の魔物と清掃の為ブラウニーも合流。
あと緑色の髪の女性はドライアドだろうか? 先ほどから花壇の手入れをしている。
「神の御前でオレに跪かないでくれ、どうせならこのままお祈りでもしていきなさいな」
「「「 はっ!! 」」」
それぞれがそれぞれの属性の神様のところにいって思い思いのお祈りをする。
それを眺めながらお茶をするオレとコア。
「…ついていけねーな」
「同じくだ、が。一応オレもナラヴィー様にお祈りしとくか」
座ったままだけど。




