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開かずの塔のダンジョンマスター  作者: てぃる
神々の試練の間
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『さて、左右の森の確認だが…… ここは二手に分かれた方がいいか』


『そうだな。入り口から見て手前側の森と比べると、随分と鬱蒼とした緑の濃い森になって来てる。ここらで確認を入れるべきだな』


 道路が横断してるからね。右と左に分かれるみたいだ。


 片方はドミニク達を中心にしたチーム。


 もう片方が領主兵士ギルマスAランクの混合チーム。


『ロッド、お前はそっちのチームについていってくれ』


『わかりました』


『お? 一人貸してくれるのか?』


『ロッドは回復魔法の使い手だ。回復役がドニー殿だけでは不測の事態に対応しきれない可能性もある。何よりそちらは領主とジェスト殿がいるしな』


 ドミニクが言う。


『なるほど。ではロッド殿、よろしく頼む』


『いえ、こちらこそお世話になります』


『ある程度探索をしたら、またこの道に集合だ。音矢はあるな?』


『持って来てるっす』


 ケイブが領主の言葉に返事。


 音矢っていうのは、空に向かって撃つと甲高い音を出す矢のことだ。姿が見えない相手同士で連絡を取るのに便利な道具。


『じゃあ後で。無理はするなよ?』


『お互いにな』


 ドミニク達と混合チームで分かれる。


 両方モニターに映せるが、今回はロッドのいる混合チームを中心に映す。


『分担をしますか?』


『その方がいいでしょうね』


 森に向かい歩きながら、ドニーとロッドが話す。


『こちらは慣れているクロードとギルマスをやろう』


『では兵士長と領主ですね。楽が出来そうです』


『領主様を頼む』


 兵士長がロッドに声をかける。


「分担です?」


「多分だけど、誰がどの人間の回復を担当するかの確認じゃないかな」


 ネットゲームなんかでも回復役が2人以上いたら担当を決めたりしてた。同じ人間を二重に回復させるような無駄を減らすんだ。


 この世界だともっとシビアだ。回復魔法を過剰に受けると、受けた人間に悪い影響が出る。軽く酔う程度の物から、眩暈を起こすまで様々な症状が出る可能性があるらしい。


「アユム様の慈しみの雨のようなタイプは問題ないのですが、一瞬で回復するタイプの回復魔法やポーションですと少々危険ですからね。良くお勉強をなされていますね」


「先生がいいからね」


 シヴィーに無言で頭を撫でられた。


『ほう、ブルオークだな』


 遊んでたら連中がブルオークに遭遇した。


 そして瞬殺された。


『解体はオークよりも手間がかかりますけど、こっちのがいいですね』


 死体は手早く兵士長が魔法の袋に収納している。


『ブルオークの方が普通のオークよりは強いが、その分実入りもいいんだよなぁ』


『毛皮も売れるし、そもそも魔石のサイズがこちらの方がでかい』


『手ごわいといっても、毛皮の分だけ武器が通りにくいのとちょっと速くて力が強い程度だからな』


『一般人の目線でいえば、そのちょっとの差は決して埋められる物では無いんですけどね』


 ロッドが一般人面してるのも面白い。


『ああ、その奥の木。トレントですね、気を付けて下さい』


 そんなロッドが注意を促す。


『ん? そうなのか』


『ええ、枝の揺れが不自然です』


『良く気づけるもんだ』


『森の中は慣れておりますから。左の木の根元のキノコ、薬草の中和剤になりますよ。踏まないで下さいね』


『あ、ああ』


 そう言われて兵士長が少し下がる。


『お待ちを、後ろに下がりすぎるとリロン草が生えてますね。鎮静剤の材料です』


 兵士長がビクッとなる。


『少し採取させて貰ってもよろしいですか? すぐ済みますから。その間にトレントをお願いします』


『了解した』


 ロッドも随分逞しくなってるなぁ。


『木の上にも魔物がいますな。攻撃してくる様子はないですが、こちらを窺っています。警戒を』


 採取しながら注意を促す。


『ドミニクのところはみんな自由だな』


『こうしないと生きていけませんでしたからね』


 森の中の滅んだ村出身という設定をここで発揮。


 そんな話をしつつ、ロッドがどんどん採取を行う。


 進行速度は速いとは言えないが、混合チームは見かけた魔物を討伐しつつしっかりと移動。


 そうして森の部分でも深い位置まで差し掛かってくる。


『ん。なんだ? 奥に白いのがいる。でかいな』


 弓をつがえながら領主が言う。流石に目がいい。


 ズシリ、ズシリと足音を立てながらゆっくりと歩を進める魔物。


『おい、あれは……』


 それに気づいたクロードが思わず剣を抜く。


 ギルマスも臨戦態勢だ。


『マジか……』


『こんな大物がいるのか…』


『領主、後ろに下がれ。ロッドもだ。前に出るなよ、ゆっくり、静かに下がる。クロードは後方警戒、こちらに気づかれているかまだ不明だからな』


『了解』


 ギルマスが静かに指示をする。


 そんな中、悠然と姿を現したのはドッポライノスだ。


 ドッポライノスは足を止めると、その目を細める。


『……』


 混合メンバーの誰かからか、喉を鳴らす。


 そんなメンバーを尻目に、ドッポライノスは歩み去って行った。


『行ったか』


『ああ』


『ドッポライノス、初めて見た』


『オレは2度目だ。激昂してなくて良かったな』


『腰が抜けるかと…』


 ロッドだけが情けない事を言う。うん、ナイス演技!


「演技じゃないと思いますが」


 どんまい!


『奴から離れるぞ、その後は向こうと合流だ』


『それがいいな。Aランクの魔物、それも歩く攻城兵器の登場だ。注意喚起をしなければな』


 確かに昼手前から探索を開始している。森に入ったのはその後だが、そろそろ夕方に差し掛かる時間だ。地下第1層は外の時間と連動させているから日も傾いて来ている。


 時間的には短い時間だったが、連中の戦闘映像をしっかり見ることが出来た。


 ロッドやドミニクの仕事ぶりも見ることが出来たので、充分な戦果とも言えるだろう。

独歩羅威之須ってイメージです。

名付けしたらフィル・ミリア・ノイ辺りを超える存在なんじゃないかなって思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ノンアクティブモブっていうの?わからないけど普段温厚な人ほど起こると怖いっていうもんね。
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