172
伝わるかなぁ……
不安だなぁ……
「そして、あそこがここの目玉っと」
岩場の先には1つの建造物が用意してある。ドワッジ達には悪いが、ここは破壊されたくないのでDPで出した。
森からは見えない様になっているが、岩場をある程度進むと視界に入る。
星丸から降りて大きく堅牢な門を歩いてくぐる。
門の先は清潔感のある一本の広い通路。
流石に馬車では入り込めないが。
左右の壁にはガラスが嵌め込まれて、その中には様々な武器や防具。
もちろん通路の中央にもガラスのショーケースが点在。
「念願のサンダーソードも置いてあるぞ」
ちなみに神様の加護は無い。アイスソードもあるぞ? 正式名称は違うが。
それと大量の金貨の上に派手で豪華で下品な宝箱、そこからはみ出んばかりの金貨をカリブな海賊置きをする。武装した人骨とおしゃれな海賊船長帽子も忘れない。
ついでにDPで出せる宝玉や豪華な装飾品に魔道具。大粒の魔石なんかも置いた。
上から照明も設置して煌びやか。というか眩しい。
ぶっちゃけ下品だと思わなくもないが、ピカピカでキラキラでゴージャスであればあるほど格式の高く、高級感が出るらしい。
「この光景は目を奪われますね」
「ぎゃうん」
「まあDP掛かってるからなぁココは」
ここの景品は階層の空間拡張の次ぐらいにDPが掛かっている。
「モッドガーゴイルにリビングガーディアンですか。ここの武具や宝玉に目をくらませていると、気づけないかも知れませんね」
通路の上に魔物も配置済み。全部魔力で強化してある連中だ。
ただ通るだけだったり、金目の物を見ていて涎を垂らすだけならば問題ないが、絶対にガラスを割って盗めないか試す阿呆がいるはず。
そんな阿呆をさっくり片付けるのが彼らの仕事だ。
天井や柱の飾りの様に待機している為、ぱっと見では分かりにくいが結構な数がいる。
「警告も出るからしつこいヤツだけに攻撃する仕掛けだけど。多分死人が出るまで挑む奴が出るだろうね」
人間は欲深いからなぁ。
ついでに目撃者には掃除道具一式をプレゼント。
死体はダンジョンだから消えるが、ガラスや床に飛び散った血や体液は掃除しないといけない。
掃除道具のバケツの中には、実は銀貨が3枚入ってるからきっと掃除してくれるはず。
豪華な景品のディスプレイを横目に先に進むと、そこには広間だ。
ここは通路と違い、部屋の中央に樽を4つほどセット。
それとダンジョンのギミックとして切れない鎖でくくられたコップ、そのコップを洗えるように用意した湧き水が出る小さな台座。
個人を認証し、1日に1杯いずれかしか選べないが、注がれるのはワイン・ビール・ウィスキー・魔力回復ポーション。
価値により、注がれる量も変わるのもポイント。
「これでイービルドワーフやドワッジ達からの要望も叶えた形になる……はず」
元々は用意する気のなかった物だ。
褒美としてお酒を与えて以降、もう2度とあの酒が呑めないのかもしれないと落ち込んだ街の中のドワーフ達。
彼らの作成意欲が落ちている、このままでは連中の腕が腐ってしまうと騒いでいてなんとか彼らにもオレが用意する酒を供給出来ない物かと言ってきたのが原因だ。
ドワーフ種達は、腕のいい職人が良い酒を呑めないのが許せないらしい。
理解できない異世界の文化だ。
「これ、必要なんですか?」
「うん、いらないと思う」
試飲場所として置いておくけど、いらないよなぁ。
「テーブルや椅子まで置いたのですね。おや、ここの左右の部屋は?」
「まあ休憩所だな」
この先に進む前に英気を養って貰えるようにしてある。
と言っても湧き水が出て地面が芝生になっていてだだっ広いだけだけど。
あとノンアクティブのフルーノが湧くくらいか。
「アユム様のご慈悲に咽び泣く人間達が目に浮かびます」
「それは無いだろうなぁ」
「……泣かせましょう。物理的に」
「やめてあげて!」
泣くだけじゃ済まなそう!
広間の奥に進むと大きい【闇の神ナラヴィー様】と【芸術の神ニーロイップ様】【美の神エンリエッタ様】の神像が安置してあり、それ以外は何もない部屋。
この先の催し物がナラヴィー様がご自身で運営なさっているダンジョンの催し物と同じだからだ。
地面にはナラヴィー様の紋章も彫ってある。
「【神々の試練の間】ねぇ」
ナラヴィー様達にお祈りをする事によって、あるワードが飛んでくる。
『闘争による褒賞を求めるか? 奉納を執り行い供物を捧げるか?』
答えによって飛んでいく場所が違うが、とりあえずこの施設の上の階に転移する事が出来る。
浮島のレドリックに手紙を持たせ、リグレブを通してナラヴィー様にマネしていいかどうか確認もした。
わざわざこちらのダンジョンまで足をお運び下さって直々にご指導して頂いた。
更に目利きが出来る魔物まで連れてきて下さったほどご機嫌だった。
ニマニマ。
「移動しますね」
シヴィーがオレの手を繋いで転移をする。
上の階に移動だ。




