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メイドに囲まれる生活は人の夢。
きっと男女問わない。
「屋敷を作りましょう」
「えー? デカイ家あっても掃除大変じゃん」
「あたしもやーよ」
お前そもそも掃除満足に出来ないだろ。
「掃除出来る魔物を呼べばいいのです。それにこのお皿の山もなんですか! 統一感もなく、美しくないっ!」
「食べ物を皿ごと出してるから…」
オレもこれが問題だと思っていたわけなんですが。
「…この瓶はなんです? 逆に統一感があって美しいのに、こんなに無造作に並べて破損したらどうするつもりです!」
コーラの瓶まで怒られた!
「それ、コアが飲み物出すたびに溜まってくんだよね」
「ダンジョンの報酬に出せばいいのです。宝箱にでも入れておけば人間がこぞって持っていきますよ」
コーラの刻印が入った瓶は希少品らしい。
「…ダンジョンに宝箱なんて設置してないな」
「は? 街があるじゃありませんか」
「あいつら勝手に街作ったんだもん」
「…人間に好き勝手させているのですか?」
「オレ、最近まで寝てただけだし」
そう聞き、頭を抑えるダークエルフ。
そんな姿も格好いい。
「…取りあえず屋敷を、それと屋敷を維持する魔物も召喚させて下さい」
「何DPあればいい? 50万で足りる?」
「なっ! そんなに使っても宜しいので!? と、言いますかそこまで頂いても使い切れませんよ!?」
「元々欲しい魔物の為に集めてたんだけど、今のところ余裕があるからさ」
未だに塔の下から石が運ばれる気配がない。
「…とりあえず予算の上限無しと考えて、下の階層に屋敷を作成致します。コア様のお部屋と歩様のお部屋、指令室も屋敷に移動させます。それと、祭壇もこのダンジョンに相応しい規模に変更をさせて頂きますのでよろしくお願いいたします」
「おう…」
「コア様もご協力下さい。それと今のうちに貴重品を纏めておいてくださいね? 捨てますよ」
「んなー!」
「変な声を上げないで下さい」
テキパキと話を詰めていくダークエルフ。
指令室での仮想モードの使用を許可して、オレは横から眺める事にする。
うわあ、屋敷って言ってたよなこいつ?
「流石に空間の拡張はダメだぞ」
「3Fと4Fをブチ抜いても? 」
「良い訳ないだろう」
「なら塔の階層を増やして…」
「どんだけデカイ屋敷作る気だ! てかこの設計は明らかに城だろっ!」
「歩様に相応しい住居となると…」
「コーラ飲んでていい?」
「普通の家でいいんだっつーの! そんなに人いないからっ」
ま、まとまらないっ。
4Fに環境変化で平原を作り、出来上がったのは塔の階層の半分近くを占めた屋敷だった。
…この塔自体も半径200mくらいあるんですけど、それ半分占めるってどうよ?
屋敷の入り口には門番、鎧の魔物がひのふのやの…。
「おお、魔物だっ! てか多いよ!」
「私も魔物ですよ? 歩様。それと多くはありません、これでも少数精鋭です」
少数っていうのは50体近い事を言うのか?
「中に入りましょう」
ダークエルフの先導の元、屋敷の中に足を運ぶ。
「周りの像はすべてウィザードガーゴイルです。緊急時には戦闘に参加します」
扉が開かれると、10人のメイドとその足元に倍の数の緑色の帽子をかぶった小人が並んでいる、
「「「 おかえりなさいませ、ご主人様 」」」
「おお、夢のメイド軍団だ…」
「彼女達はラッシーセルキーとリブブラウニーです。ラッシーセルキーのメイド達はお二方のお世話や食事の給仕と洗濯などの雑事を、リブブラウニー達は施設の維持と清掃を行います」
「「「 お任せ下さい!! 」」」
「この場にはいませんが、中庭の維持を行っているハイドライアド、ゴミの処理を行うスライムキング、城内の警護の全般を行うシャドウデーモン、歩様とコア様のお部屋の警護を行うダークブロウ。屋敷内の魔道具の管理を行うイービルドワーフ、宝物庫を守るスプリガン、城の上から侵入者の監視を行うジョブイーグルなどがおります」
宝物庫? 宝なんぞないが。あと城って言ったぞこいつ。
「随分増やしたな」
「すべての者がマスターに忠誠を誓っております。ご安心ください」
「そういう心配じゃないのだが」
魔物達に囲まれて魔物達を使役して生活する、まんま魔王だ。
「城内をご案内致します。まずは玉座で御座います」
「えー、やっぱ玉座あるのー?」
「ここは歩様の居城でございますから」
嬉しそうにダークエルフは先行して玉座の間に誘導してくれる。
屋敷の中を真っすぐ歩いて、階段をいくつか上がり玉座の間に。
屋敷にある玉座の間とはコレいかに。
「こちらの玉座の間の横に執務室、更にそこにつなげる様に指令室を移動させました」
この中世ヨーロッパの貴族屋敷に、松本部屋はあわねー…。
「同じフロア内に歩様の部屋とコア様の部屋を作成致しました。既にコア様はお部屋に入っております」
いないと思ったらそんなとこにいるのか。
「食事は会食室でも食べられるようにしてあります、お部屋に運ばせても構いません。歩様の専属のラッシーセルキーにお伝え下さい」
「専属…」
「今日は私が対応させて頂きます」
案内されていたオレの後ろに控えていたメイドさんが言う。
「それでは、早速お着換え…の前に湯浴みで御座いますね。準備をさせます。コア様のご準備は? 」
「それなのですが…」
なんと着替えるのを拒否したコアはボディをベッドに放棄して本体に引きこもったらしい。
「ずるい!」
「歩様?」
『なあマスター』
「あ、コアずるいぞ! 」
『いいじゃねーか。それよりレベルあがったぞ。こいつ呼んだり家作ったり魔物出したり小物出したり魔石増やしたりで81になった』
「…前から気になってたんだけど、レベル上がると何があるのさ」
「歩様、後程執務室でゆっくりお話ししましょうか」
ダークエルフ、笑顔が怖い。
「まー風呂だ」
湯浴みと聞いてテンションが上がっているんだ。
「あ、一人で入るからいいぞ」
「ですが…」
「オレはゆっくり入りたいんだ」
なによりタグがR-18になってしまう。
「手伝うならコアの手伝いをしてやってくれ。生まれてこの方風呂入った事ねえから」
『ボディ出来てから1週間も経ってないけどな』
軽口を叩きながらオレは1人で大浴場に入る。
…中で待機していたラッシーセルキー達に結局隅々まで洗われてしまいました。
さめざめ……………………ぽっ。
余談だが風呂場にあった姿見で自分の体をみた。
縮んでたのもそうだが、髪と瞳の色が濃い青になってた。
あと顔立ちも西洋人っぽい顔立ちに変わってた。
原型留めてないよ。




