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血沸かず、肉踊らない箱庭章が続きます。
「ドミニク、ヘレン、ロッド、ピエール」
『『『『 はっ! 』』』』
モニター越しに跪いて頭を下げる4人。話しにくいなぁ。
「予定もあるだろうにすまないな」
『我らの予定などあってないような物です!』
『マスターとのお言葉に勝る用事などあるでしょうか!』
『なんなりとご命令を下さいっ!』
『どのような内容でも完璧に遂行してみせます』
「や、違うから」
彼らの言葉にひきつるオレ。そして興味なさげなコアと満足げな顔の他の面々。
「まあ話にならんから椅子に座ってくれ」
『『『『 はっ! 』』』』
キビキビとした動作で椅子に座る4人。器用ね。
「さて、本日のお題だが……」
「第1回っ! ダンジョン拡張会議ー !!」
言いだしたのはコア。
そしてどこからともなく横断幕を広げるノイとシヴィー。超嬉しそう。
「いつの間に」
「今。DPで」
「第2回、第3回でも使いまわせよ?」
DP勿体ない。でも横断幕みたいな演出は好き。
「さて、先ほど人口流出の件をロッドから細かく聞いた。短い期間でよく調べていたな、助かったよ」
『オオ!』
『やるじゃねえか』
『勿体ないお言葉っ!』
褒めたたえられるロッド。そして涙ぐむ。
「調子に乗るなです」
小声で文句を言うノイ。聞こえてないよー?
「でだ、騎士団の方は放っておこうと思う。商人が減る以上の人数が来るだろうからな」
騎士団の構成がどういうものかわからないが、それなりの人数が来ると睨んでいる。
東にあるという国境の要塞からの援軍でも300騎も人員がやってきたんだ。王都という国の中心からくる人数がそれ以下って事は無いと思う。
「問題の方は冒険者の流出だ。商人が護衛で連れて行って、戻ってこない冒険者。それと単純に物価の上昇を嫌がって街を出る冒険者。騎士団連中を煙たがって街を出る冒険者も中にはいるだろう」
この街で家を持ち家庭のある人間は中々出ていけないが、身の軽い冒険者は外に出て行ってしまうかもしれない。
「まあ単純な話、薪や食料の値上げが抑えられれば人が出ていく率は低くなるって思うんだ。騎士団を嫌がる冒険者も実入りが増えれば踏みとどまるかもしれないし。本当に嫌な奴らや犯罪者はいなくなるだろうけど。とりあえず西の森が半分以上焼失したからそれの代わりになる部分が用意出来れば物価の上昇はある程度収まる……はず」
オレは言いながら冒険者ギルドの掲示板を表示させる。
「お前たちも街に入って日があまり経ってないから分からないかもしれないが、ここの依頼で最近値上がりしてたり、件数が増えたと思う依頼書を可能な限りピックアップして欲しい」
下級魔族達の拠点のモニターにも同じものを表示させる。
彼らはそのモニターを食い入るように見つめる。否、睨みつける。
いや、そんなに目力込めなくてもいいんだよ?
それと商人組見てわかるのか?
『まず薪、というか森の木の伐採の力仕事、それとその護衛任務が以前と比べて増えておりますな』
ふむ、やはり木材。
『ええ、街を囲んでいた柵も取り壊して今年の冬をやり過ごそうって意見も出てるくらいです。マスターが壁を外したらどうするのかとの意見もあり、未だに実施はされておりませんが』
『ワシらも聞きましたぞ。外壁の近くに兵舎を建てる計画もあるとドレッド殿から聞いておりますじゃ』
ピエールも続いて口を開く。
『北のダンジョンでのオーク討伐依頼も増えておりますね。冬を見越して今まで以上にオークの肉を蓄えるつもりでしょう』
森の面積が減り、鹿や猪が街の近くで取りにくくなったからだ。
『下級冒険者達は常設依頼のウサギ狩りに勤しんでいるらしいです。半分はギルドに卸し、もう半分は直接肉屋に持って行って加工して貰っているって聞きました。ウサギの狩り方を教えてくれって少年に詰め寄られて困りました』
それはヘレン目当てでは?
一応メモ。
『ポーションの材料、薬草採取も件数が増えましたね。元々常設依頼で在庫は十分にあったらしいのですが、最近は下級冒険者も持ち歩く事が推奨されておりますから』
やっぱり森で取れてたらしい。
『今まで歩いて1時間もあれば往復できる場所にあった森が焼失、後退したせいで往復の時間は3時間に伸びたらしいです。更にこれまで使ってた採取場所や狩場も消えて森の深部と言われていた場所に足を運ばなければならなくなった為、下級冒険者達や中級の冒険者達の動きが鈍っております。ダンジョンは魔物を誘引しますので獲物はおりますが、先の戦いでオーガ達が荒らしたので大物が少なくなっています。上級冒険者と言われる面々は何をしているかまではわかりかねますが』
「そうか。まあ上級冒険者ってのの1チームはマークしてるからお前たちは下級、中級メインで頼む」
『『『『 はっ! 』』』』
漁師の補助してる。あと魚の捌き方を習ってるね。
「うーん、じゃあ基本フィールドは森にして一般的な猟師でも狩れるレベルの食べられる魔物や野生動物。それと薬草の元となる植物の生える環境があればいいか?」
なくなった森の代用品だ。まあ森はまだ残ってるけど。
 




