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書く予定ないって言ってた説明文入れちゃった。
いろいろと魔物が登場しては落札されていく光景を目にしながら、亀からの紹介が続く。
「もう参加しないのですか?」
「気になる魔物や神様関係の物が出たら、って感じかな」
先ほど、再びブロッドビッシュ様が出品された魔物が出て来たがスルー。
ビルみたいな大きさのヘドロ怪人なんかいらん。どこの怪獣映画だ。
「ドラゴンもパッとしませんでしたね」
「翼の無いドラゴンだったからね。人語を理解し話せるのはポイント高かったけど」
実際、200万DPと高額入札だった。やはりドラゴンの人気は高い。
「常に最前線を用意してくれる主の元に行きたいって言ってたね」
出品物が要望を口にするとかありなのか?
「ダンジョンのラスボス要員でしょうに。前線に置かれたら人間では太刀打ちできませんよ」
「確かに」
攻略難易度に見合った報酬を用意しないと、ダンジョンから人が離れる。
あんなドラゴンを浅い階層に置いたら人が来なくなるか、無駄に強い人たちに徒党を組まれてダンジョンを突破されてしまうんじゃないだろうか?
「どのように魔物を配置するかも、その主の腕次第だと思うんですけどね」
「まあ他所のマスターがどう考えてるかはわかんないけど」
出品される魔物は、先ほどの走り小麦や機械人形以外はほとんどが戦闘要員だった。
中にはサタンコックの劣化版のデーモンシェフや、服飾が得意だという水の魔物のニンフといったものもいたが戦闘能力を推した魔物と比べるといささか値段が付かない。
『最後の出品物になります。こちらは純然とした上級魔獣。その戦闘能力はドラゴンにも引けを取らず、破壊力は一級品になります』
モニターに表示されるのは6本の腕を持った、大型の猿。
先ほど出品されたドラゴンと比べれば小ぶりではあるが、その大きさは2階建ての一軒家くらいのサイズがある。
「ふむ、まあまあですね」
シヴィーのまあまあ発言! この人、結構辛辣な意見を言うから魔物への評価が低いので結構期待できる?
「ドワーフ種達の物品の運搬に役立ちそうです」
「確かに!」
腕が6本もあれば、一度にいっぱい物を持つことが出来る!
『キングアームズコングで御座います。その握力はまさに圧巻! 大木どころか金属の塊でもまるでガラスのように握りつぶします! その多腕で侵入者を捕まえて頭から丸かじり! 更に更に! なんと正真正銘の【魔王種】! 近隣に深い森のあるマスターの皆様! 森の魔物を傘下に収めるチャンスで御座いますよ!』
「ほう、魔王種ですか」
「魔王種?」
「同系統の魔物を支配下に置くことのできる特別なスキルを持った魔物の総称です。先日我らのダンジョンに襲い掛かってきたゴブリンキングも魔王種です」
「ほー」
「マスターに支配されているダンジョンの魔物や、意思の強い上位種の一部などは支配出来ませんが、DPを輩出せずとも魔物を部下に出来るのでダンジョン向きの魔物と言えますね」
「そうか、でも猿か……」
「猿ですね」
ウチのダンジョンの近郊に、猿系列の魔物なんかいたっけ?
そんな事を考えていると入札がスタート、どんどんと入札額が上昇していく。
『120万! 150万! まだまだあがる! 180! 200!!』
「このままじゃ300万超えそうだな」
フィルの笑顔がちらつく。
「いかがしますか?」
「…………最後だけど、値が上がりそうだからやめとこう」
「畏まりました」
「バニーさん」
「はい」
「オークション終わりに神様からの挨拶とかある?」
「いえ、過去に一度もそういった事は御座いませんでした」
「そか、じゃあ帰るか。シヴィー」
出入り口が他のマスターで混雑するかもだからね。
「はい」
シヴィーはバニーさんに金貨の入った袋を渡す。
「こ、こんなに?」
「世話になったからね。ありがとう」
「はい!! 来年もお待ちしております!」
「うん。ほら、ミリア。起きて」
ペチペチとミリアの顔を叩くと、むくりと起き上がる。
開いた胸元がせくしー。
「んう……我が主?」
「おはよう、帰るよ」
「え? あ……」
周りをキョロキョロ見て、顔を赤らめて直立。乱れたドレスを直して軽く笑う。
「まったく」
「すいません」
シヴィーのため息に顔を下げるミリア。
そんなやり取りに苦笑いをしつつ、オークション会場を後にした。




