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やまんば、ダメ絶対。
「んー…DPがあるのはいいが素体が足りないのとセンスが足りないな」
オレは指令室で階層シミュレーターを起動。
仮想の階層を組み立てている。
『センスはしょうがねーが、素体が無いのは問題だな』
海は最初からなぜか作れるが、砂漠や極寒。火山といった特殊環境が作成できないことが分かった。
「こういった素体てどこで手に入れるんだ?」
『ダンジョンショップで買うんだよ』
事もなげにコアが言う。
「ダンジョンショップ?」
『5000DP使って利用できるようになるんだよ。てか手引書の序盤に書いてあるんだからもうちょい読めや』
あったっけかなぁ。
「これか。とりあえず利用出来る様にしよう」
『ん、完了だ。あれだな、5000DPぽっちじゃ感動もなにも起きねえな』
こいつ、贅沢を覚えやがった。
『環境や魔物の死骸、完成品のダンジョンなんかが買えるぜ』
「使うのはDPだよな…」
金なんかないぞ。
『物によりけりだな。神が提供している物は基本DPだが、他のダンジョンマスターが提供しているものはDP以外にも金や武具や魔物の死骸なんかとの交換もあったはずだ』
環境はそれぞれ5000DP、安いな。
『マスター! コレ買ってくれ! 機械人形!』
「あ? 50万DPか? 高いな。何に使うんだ?」
『ダミーコア入れればあたしのボディになるんだ! 買ってくれよ! あたしもメシ食いてえんだからさ!』
なんと、コアが自立出来るようになるらしい。
「んー、いいけど。お前掃除とかしろよ」
満漢全席の片づけすげえ大変だった。
『掃除だろうがなんだろうがやってやるからさ! あたしコーラ飲みてえんだ!』
それならいいか。ん? まて、コーラだと?
「おい、コーラ出せるのか?」
『あ? 出せるぞ。マスターのスマフォ取り込んだからな。こないだだって豪華なメシ食わせてやっただろうが』
そういや満漢全席って地球の食い物だった。
「まあいいか、一人での食事も味気ないしな。購入で」
『さんきゅ! マスター! こっちで設定していいか!? 衣装でDP使っていいか!?』
「いいけど、あ。黒ギャルはやめろよ」
『………了解』
お前ちょっと考えてたろ。
『設定するから適当に見ててくれよ! 集中するからな!』
「お前同時進行で出来るだろ」
『出来たっ!』
早えよ。
「どうだマスター! これがあたしだ!」
指令室の扉を開いて現れたのは…。
「それヤマンバじゃねえか! 黒ギャルよりひでえよ!」
「なんだとマスター! これがいいんじゃねえか!」
「良くあるか! 却下だ! やり直してこいっ!」
「クソが! じゃあ次だ次っ!」
却下されたコアがドスドスと指令室から出ていく。
「何考えてんだか」
オレは再度モニターに目を向ける。
「出来たぞ!」
「だから早ぇよ。って…」
そこにいたのは聖○魔Ⅱな気配を感じるメイクとごてごてのメタルアクセ+皮ジャンの女。
「NO! ヴィジュアル系!」
「ええ!? コレもダメかよ! どうすりゃいいんだ! ファッ○だフ○ック! マッハガッデムすっぞ!」
頭を抱えるコア。
「メタルもパンクもダメだかんな」
「うがー! 先に言っとけやもう!」
ギターを振り回して指令室から出ていくコア。
「あいつ、あのギターもDPで出したんじゃねえだろうな」
きっとそうだ。
「…出来たぞ、これで文句あるか」
テンション低めで入ってきたコアはパンツルックに丈の短い白いノースリーブ姿。
腰まで伸びる金髪とちらちら見えるヘソが無駄にそそる。
ムカつくが可愛い。
「初めからそういうので来なさいな」
「マスターちいせえなぁ」
オレの頭をポンポンする。
「おお…確かに」
コアの胸の高さがオレの視界だ。
「…オレ小さくなってるな」
「そーだな。初めて見た時から50cmくらいマスター縮んだよな」
こっちの世界に来てから縮んだのだった。
ざっくり30年近くかけて育ったあと150年くらいかけて縮んだオレの気持ちは誰にもわかるまい。
「まあいいか。コーラだすぞ」
「オレのも頼む」
コアは瓶コーラを出すと、やはりDPで出した栓抜きで蓋を外す。
「ペットボトルじゃないのか」
「あれはこっちの世界じゃ再現不可能らしいからな。再現出来ない訳じゃなくて、作成過程に必要な技術の一つが禁則事項に引っかかるって話だが」
まあ味は変わらないさ。
「さて、DPが余りないのだが…」
コアの体にダミーコア、さらに無駄に購入したコアの衣装等で気が付けば60万DPも使っていた。
「あ、マスター。レベルあがったぞLv75だ」
ポイントを大量に消費したのでレベルがあがったらしい。
「とりあえずコアルームにベッドとか入れるか? 体が手に入ったんだし」
「欲しい欲しい! 服もそこそこ用意したからタンスとか」
あのロックでパンクでメロディックな衣装はまだ残してあるらしい。
「あー、1個づつ選ぶのも面倒だな。3000DP使っていいから自分で好きなの選びな」
オレは甲斐性のあるマスターなのだ。
「マジか! 素敵だぞマスター!」
コアはそう言ってコアルームに軽い足取りで歩いていった。
うむ。こうして面倒は去ったのであった。




