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一族といってますが、実際には一つの種族というわけではないんですね~
「きみはじゃしんにのまれるまえのうみのいちぞくのようだね」
当時を知っているというアクエリアスが事も無げに言う。
「そうなのですか?」
「うん。うみのかみのちからをかんじる。うしなわれたうみの、かんりしゃのはどう。たましいが、ふるえる」
表面を震わせながらアクエリアスが語る。
「でもふしぎ、ここすうひゃくねん、うみのいちぞくをみたきおくがない」
「あー、オレは転移してきた転生者ですから」
「てんせいしゃ……しえんたとおなじ」
「そうなんですか?」
「そうよ? でも今は斎川さんの話が優先」
オレに視線が集中。説明した方が良いって事?
「んと、オレは別の世界からナラヴィー様にこちらの世界に連れて来られたんだ。元々はこちらの世界で死んだ生き物の転生体だったらしくて、この世界に呼び戻されたんだってさ」
「そう、私と同じね」
「元々は人間だった……と思うんだけど、気が付いたらこんな姿に」
黒髪だった自分の頭髪を軽くつまむ。そこには青い髪の毛が生えている。
「そこも同じね。私は黒髪で昔のままだけど。何年かこちらの世界にいたら種族が人間から魔女に変わっていたわ」
「まじょもきしょうだが、うみのいちぞくはもっときしょう。うみのかみウェイバラングさまがいないいじょう、もううみのいちぞくはうまれない」
「そうなんですか? たまたま血が濃い生き物が生まれたりは?」
「ありえないとはいわないが、そのばあいはじゃしんのちからにおせんされたもの。それはもはや、うみのいちぞくではない」
「邪神の呪いね」
「呪い……」
「それはうみのいきもののてき。うみのいちぞくとはいわない」
海の生き物全部を敵に回すのか、そんな進化は嫌だな。
「きみのばあい、いまはなきうみのかみのはどうをもっている。かいようせいぶつに、ぜったいてきなゆういとなるそんざい」
「ああ、思い当たる節があります」
イカとかトドとか。
「でもちからあるいきものにはきかない。わたしもはどうをかんじるが、あくまでもうみのせいぶつげんてい」
オレよりも強い存在や、淡水魚系列やらには抵抗されるって事かな?
「……まあ、あんまり関係ないか」
よくよく考えると、塔から見える範囲に海が無い。
オレ自身が海に赴かない限り、海の生き物関連で話は気にしないで良さそうだ。
自分のダンジョンに疑似的な海もあるし、生の海に行きたいって思う事もなさそうだし。
「お話中失礼いたします。そろそろ謁見の時間になりますので、会場まで移動して頂いてもよろしいでしょうか?」
「ん? ああ、了解了解」
「結構話し込んでた。仕方ない」
「かみがみにそそうのないように」
「了解です。アクエリアス様、貴重なお話有難う御座いました。」
「もんだいない」
「連絡先の交換をお願いしてもいいですか?」
「いいよ。たんまつ……たんまつ……でた」
見えないけど?
「たんまつもみず。からだとどうかさせてる」
「そうなんですね」
良く分からないけど、とりあえずアクエリアス様の丸いボディに腕時計を近寄らせる。
「もっとした、エッチ」
「えっち!?」
「したすぎ。そう、もうすこしみぎ」
いっぱいしゃべると波紋が増えるアクエリアス様。空中に浮く丸い水の端末に合わせるのは変な感じだ。
「できた。それとミルフィーユもきにかけてあげてほしい。あれはわたしのけんぞくのこ」
「そうでしたか、了解です」
「どれすをおくったときいた。けっこんしきにはよんでほしい」
「ぶっ!」
「へえ? 見た目よりも手が早いのね」
「そんなんじゃないですから!」
「斎川様、そろそろ」
「言い訳する時間もないっ!」
分かってやっているのか、声をかけて来たリグレブもどこか楽しそうだ。
「はあ……ではお二人とも、お時間を取って頂き有難う御座いました。それでは失礼致します」
「え? 一緒に行くわよ」
「こんかいのそうどうでかみがみにどれだけみられるようになったか、きょうみがある。しんじんはえっけんのときに、おおくのかみがみがかおをだされるからたのしみだ」
そいつは面白そうな見世物ですね!




