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開かずの塔のダンジョンマスター  作者: てぃる
グレたコアとダンジョン強化
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開かずの塔が勝手に完成。

「来たねぇレイヴン」


「様か領主をつけたまえ、ジーナ婆さん」


「お疲れ様です、領主様」


「とんでもないことになったな、レイブン伯」


 そこにいたのは6人の男女、比較的年齢層は高め。


 魔女っぽい婆さん。


 厳ついスキンヘッドのおっさん。


 目の細い太った小人。


 派手な装飾の装いをした、若い男。


 年齢不詳の髭面ドワーフ。


 犬耳神父。


「誰がどの立ち位置だか自己紹介とかしないかな…」


『とりあえず、あたしらが追っかけてたのが領主とか呼ばれてるのはわかったな』


「レイヴン、だな。コア。紙とペン」


『あいよ』


 忘れないように書いておこう。


「さて、夜分遅くにすまんな」


 その6人に追加でオレが追いかけていた2人が合流。


「必要な事だ、気にするな」


「そうじゃな」


 他の面々は頷いている。


「知っての通りだ、街の中から生き物の死骸が消えていく現象が起きておる。地面に直に置いてある物だけなのが幸いだが、随分被害が出たようだな」


 そう言いながら、スキンヘッドのおっさんに目線を向ける。


「解体待ちの魔物の死骸が根こそぎ持ってかれた、出た被害額は不明だ。金で処理出来る物はギルド費で対応する予定だ」


「こっちもや、他所に卸す予定の魔物がいくつかやられたで。冒険者ギルドと違うて既に額の算出は終わっとるがな、大損害やな」


「商業ギルドはまだマシじゃろう? 鍛冶場に置いてあった魔物素材が消えたんじゃ。こっちは作業の手が止まっちまってダメじゃ、受注しとった装備が作成出来んと大騒ぎじゃ」


 スキンヘッド → 細目 → ドワーフ の順でのセリフだ。


「冒険者同士での諍いが増えているぞ? 騎士団は治安維持部隊ではないんだがな」


 派手男の言葉。


「怪我人も普段より多いですね。街中での小競り合いが主だった原因のようですから、魔物被害という訳ではありませんけどね」


 肩を竦める神父。


「回復薬の売り上げが上がるのは嬉しいことだけどねぇ」


 お婆さんのところで特別被害はないらしい。


「ふむ。現在、街の中で突如魔物が出たという報告はあがっているかね?」


「騎士達からそのような報告は受けておりませんね」


「兵士達からも同様です」


 騎士と兵士の違いがわからん。


「領主も街がダンジョンになったと思うか?」


「むしろ他に亡骸が消える現象に心当たりのある者がいたら教えて欲しい。誰かいるか?」


 全員が沈黙。


「実際ダンジョンだしなー。あ、コア。お茶ちょうだい」


『魔物のデータが増えるのはいい事だな。出すのはいいが溢すなよ』


 ちょっと良さげなカップに紅茶が用意される。


「美味しいな」


『連中が飲んでるのと同じ奴にしといた』


 気が利くじゃないか。


「とりあえずダンジョンと仮定してだ、どう攻略するかだ」


「入れないんじゃろ? 【開かずの塔】なんじゃから」


「入れないダンジョンは無いという。攻略出来ないダンジョンも、な」


「らしいな。難攻不落と言われた伝説の龍の巣も人間と獣人の混成軍で攻略された」


「英雄と呼ばれた多数の戦士の犠牲の上に、じゃろう?」


「そもそも中に入れないから難易度がわからん。どのクラスの冒険者がどれだけ必要なんだ?」


「新しくダンジョンマスターが塔に現れたんですから、塔自体にも変化が起きて入れるようになるのではないでしょうか」


「確かに、塔の屋上階に人影を見たのは今日、というか昨日の昼だったな」


「目撃者は複数います。普段から塔の警備についている兵士も目撃したのは今日の昼と言っております」


「では塔及び塔の周辺に何か変化が無いか徹底的に調べさせます。これは普段から塔の周りで警備をしていた兵士を中心に探らせましょう。死骸の消失以外に塔の周りの地面が石畳に変化しているのは既に報告済の内容ですが」


 ぬう、やっぱ攻略する気か。


「ダンジョンといえばお宝やなぁ。どないなもんが隠されとるか楽しみや」


「普段街の周辺警備しか出来てない騎士団にも良い訓練場所になればいいが」


「出来て間もないダンジョンならば難易度はそこまで高くないのでは?」


「難易度の低いダンジョンのマスターが、街中から死体を消せるかね?」


「…どちらにせよ扉が開いてからだな、常設依頼の扉解放依頼の報酬を引き上げるべきだな」


「………予算を工面しよう。今はいくらだったか? 」


「金貨3枚です」


「わかった、金貨5枚に引き上げよう」


 扉を開いた人にお金を出すのか。いよいよピンチだ。







「こりゃあすぐにでも扉は開かれそうだな。3Fの強化を急がないと」


『でもこいつらマスターの謎掛け気づいてねーな。あんな分かりやすく石が置いてあるのに』


「そりゃいままで正解が無かったからな。噴水と井戸の関係にいつ気づかれるかがキモだ」


 コアが井戸を再生させたからオレは起きたんだからな。


 4つ目の井戸が突然街中に現れたんだ。すぐに気づかれるだろう。


「現状の井戸をサブモニターに映してくれ」


『4か所だな。これだ』


 一つ目、民家の横? 暗くて見えにくい。


 二つ目、茶屋の裏? 暗くて見えにくい。


 三つ目、大きな屋敷の庭。屋敷の窓から出る光が明るいからそこそこ分かる。


 四つ目、暗くて見えない。全然見えない。あ、何か横切った!


「なあコア、四つ目が良く見えないんだが」


『あー、夜だからな。見える様にするか?』


「おう、頼む」


 まるでスポットライトが降りる様に、井戸がモニターに映される。


「…なあコアよ」


『なんだよ』


「ここ、水の中じゃねぇ?」


『水? 井戸の設置した場所を決めたのはマスターだろ?』


「そうだけど…井戸を上空から映してくれ」


『なんだよさっきから、ここだよほら』


 そこに映っていたのは大きな湖…その中央付近が光っている。


 瞬間、光が一瞬強くなり、消えた。


『ウィルオーウィスプを置いたんだが、破壊されたな』


「何!? もう調査しに来た人間がいるのか?」


 慌てて井戸付近のモニターを見るが、人影はない。


 代わりに大きな魚がひっくり返って水の中を浮かんでいる。


「あれも魔物か?」


『ケイブシャークだな』


 湖にケイブ(洞窟)なサメとはこれいかに。


「お前、ダンジョンに出来た穴直したんじゃなかったのか?」


『あ? 直したに決まってるじゃねえか』


「ここ、穴開いてるじゃねえか」


『? ダンジョンの穴だぞ? 別に埋め立てた訳じゃねえし』


 何を言っているんだ?


『何言ってんだ?』


「埋めたんじゃ?」


『埋めたよ。埋まってんじゃん』


「穴空いてるじゃないか、しかも湖になってるし」


 ダンジョンの西側、ブレスが着弾した箇所。ダンジョン内では3か所もあったらしい。それぞれが繋がって湖が出来ている。上から見たらミッ○―のシルエットだ。左耳のところには川が通っている。


「井戸は同じ場所に設置したんだろ?」


『あ? 空中に井戸なんか作れるかよ。井戸は地面にしか設置できねーもん』


「…よくわからんが、湖の中もダンジョンで、そこに井戸があってそこに例の石を入れたら…と、魔物もいるうえに24時間の時間制限。無理じゃね?」


『そうなのか? 復帰してるってことは攻略不可能ダンジョンじゃないって』


 それもそうか。だがオレが想定していた時よりも難易度が高い。


 謎が分からない上に、分かっても魔物はびこる湖。石を運ぶのも一苦労なのでは?


「とりあえずキーポイントの井戸と、キーアイテムの楔石を監視するか」


 コアとの埋めた埋めないの話は切り上げることに。


「なんか知らんがしばらくダンジョンは安泰のようだ。せっかくだから銀龍を取りたいな」


『は? 人間に囲まれてるんだぞ? 何が安泰だよ』


「人間は長時間水に潜ってられないの」


『はー? 不便だな』


「おかげで井戸に石が投げ込まれない」


『…マジか!』


「マジだ! 念のため水の中に水中専用の魔物を配置しておけば完璧だぞ! 何かあるか!?」


『水はすげえぞ! マスターのレベルが上がったから上位の魔物も出せる!』


「そうか! 一応街の中だから、出来るだけ小型でかつ強い奴がいいな」


 モニターに水中で戦えるモンスターが表示される。


「ヘルギンチャクとかいいな。石を持ってる人間が近づいたら捕まえて邪魔をする。しかも強い!」


『キラークラブもいいな』


「スティングクリオネもおこう。小さい、早い、刺す、毒。完璧だろ」


『それぞれどれだけ置く?』


「リポップの魔法陣を各10づつでいこう。井戸のある湖以外には移動させない様にしよう」


『意味あんのかそれ?』


「一番手前側の湖は船とかが置いてある、つまり人間が使ってるって事だろ? そこを潰すと人間側も本気で攻めてくるぞ」


 ひゃっほーう、というテンションで他にも何種類ものモンスターを設置。


 キラークラブやスティングクリオネは水温や水質の兼ね合いで出せなかったが、なんだかんだで湖が魔物の巣になった。


『全部でDPは13000DPだ』


「まだ70万DP以上残ってんだな。3F作るのが楽しみだ」


 今のところ魔物が消える以外に人間の被害は出していない。


 塔の周りで怒ってる人はそこそこいるが、隊長さんのおかげで鎮静化している。


「…とりあえず、3Fの作成をするのにDP溜めたいな」


 あそこは拡張させて環境も変えねばならない。


 単調なダンジョンは必ず突破されるのだ。


 1Fが突破されたら、2Fで足止めしつつ情報収集して、その侵入者達にあった階層を入れるようにしよう。


『塔の階層も増やしてえな』


「そうだなー、DPあるんだし居住環境をなんとかしたいな…でも今日は寝る」


『は?』


「だって夜中だぞ。当たり前だがすげえ眠い。塔の入り口が開けられたら起こしてくれ」


『あー、しょうがねえな。今日はDPたんまり使ってくれたからいいか。寝れ寝れ』


 雑な言い方だが死ね死ね言って来なくなった。良い事だ。


「じゃ、お休み」


 部屋に戻って寝る事にする。


 中華くせえ!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そもそもダンジョンではないか、と言われていた物の周囲によく街を作ったなあ。
[一言] > 中華くせえ これはどういう意味でしょう?
[一言] よく考えたら、50m上にある屋上からちょっと顔出しただけの人間をよく見つけられたな…
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