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ぱっちん
「要求は決まったかしら?」
「はい」
改めて前に出たオレに、ヒュッツァーベル様が問いかけてきた。
「ええ。彼らのダンジョンの正確な位置を教えて頂こうと思います。ナラヴィー様に」
「ああ!?」
「フザケルナンダ!」
「然りっ! 然りっ!」
「ありえぬ取引だ」
「じゃあ今回の戦いは不成立ですね」
オレはばっさりと切り捨てる。別に争いにならなくてもいいもん。
「生意気ぬかすなよ小僧! この場で貴様を縊り殺しても構わんのだぞ!?」
炎の悪魔のマスターが前に出て来た。その眼前に出て、オレをガードするジョージ。
「オレの要求を聞いてきたのは神々だぞ? お前たちは神々の言葉を否定する気か?」
「グヌ……ンダ」
「そういう訳では……」
「然り」
要求を求めたのは神々だ。
「ラグラック様、私の従者と彼らのダンジョンの所在地の情報。バランスは取れていますか?」
オレは天秤の神様に質問。
「これは君が望んだ事かね?」
「いえ、ウチの従者が決めました。オレ自身は別に彼らに含む部分はありませんから」
向こうが絡んできてるだけだ。しかも一度勝利しているから余裕がある。
「そうか……では調べよう」
天秤の神ラグラック様が青白い光を放ち始める。
瞑られていた目が開眼し、目と口から光が溢れ出す。
「……ふむ、同価値とは言えぬな。だが斎川が納得しているのであれば無視してよい範囲であるとも言える」
つまり、連中の本拠地の情報よりもシヴィーの価値の方が高いという事だな。
「構いません。私はそれ以外、望まないと誓います」
「良かろう。ならばこの従者と本拠地を賭けた戦い、承認する事とする」
再び目をつむったラグラック様が言葉を紡ぎ、壇上の中心にいた2人の神も頷いた。
「それで、戦いの内容についてだが……」
ちらりとヒュッツァーベル様がこちらを見る。
あの表情を見るに、あまりオレにとっては良くない内容のようだ。
「互いの魔物同士で戦わせる事となった勝ち抜き戦にしようとも思ったが、夜会の時間も考えると、まとめて戦わせた方がよかろうとの結論が出た。古参の連中は1人1体出すがいい。斎川、お前は連中の数に合わせて魔物を呼べ。特例としてナラヴィー様から許可は出ている」
「畏まりました」
オレは頷く。
「シヴィー、誰がいい?」
「そうですね。戦いに出すのはミリアとチムがいいでしょう。コロは能力が割れておりますし。銀ちゃんはサイズ的にも攻撃方法的にも味方を巻き込みかねませんから」
銀ちゃんは戦略兵器みたいな立ち位置だからしょうがない。
「じゃあ二人を呼ぶか。と、ここで呼び出しちゃ不味いか」
「そうだな。今戦場を整えよう」
神様必殺の指ぱっちん。
一瞬にして舞台だった場所がリングに、周りを見渡すと闘技場のようだ。




