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いざ戦いの舞台へ!
「みんな、待たせたな。これよりダンジョンマスター同士の雌雄を決する、決闘の儀を執り行う。参加者は前へ」
おお、なんか取り仕切るのは大分肌色面積の広い女性だ。大分筋肉質だけど。
「この戦い、オレ達が立ち会う。いいな?」
そこにいるのは3柱の神々。
武神オオグラム様と戦女神ヒュッツァーベル様、天秤の神ラグラック様だ。
武神オオグラム様は上半身裸で筋骨隆々な大柄の神様。
戦女神ヒュッツァーベル様は伝統と格式高い桃色のビキニアーマーだ、頭飾り。ピクピク動き出しそうな上腕筋と6個に分かれた腹筋に目が行く。
天秤の神ラグラック様は……うん。銀色のでかい天秤だね、真ん中に銀色の顔の像がついている。下に台車が置かれてるのは、自力で歩けないからなのか? ミニバッフォをスタイリッシュにしたような執事が台車を押している。
「立ち会うと言っても、顔を出している神が我らだけであって、こちらの様子を見ている神も多数いる。態度に気を付けるように」
銀色の顔が目をつむったまましゃべる。
自力で歩けないって困らないの?
っと、前に出ないとな。
「参加者は6名か。名を名乗るがいい」
「鋼鉄王、ドノヴァンであります」
ゴーレムだろうか? 黒光したロボットみたいなマスターだ。
「白黒獣、ロンロンデゴザイマスンダ」
パンダ。
「真国魔王、ブロギヌスであります」
オレ達に絡んできた魔族の男。
「ジュラグラム火山のウンデスです」
同じく、オレに絡んできた炎の魔物。
「クリムデ。カカ族族長」
同じく絡んできた蟻人間。
「斎川歩でございます。お初にお目にかかります」
そしてオレ。
名乗りを上げた後、それぞれ跪いて挨拶をした。
「ふむ。古参のマスターが新人を潰すにしては、随分と数が多いのではないかね?」
「潰ストハ人聞キノ悪イ」
「少々、礼儀を知らぬ後輩を指導するだけのこと」
「然り、然り」
「ギギ、美味ソウダカラ」
「クリムデッ」
「失礼」
話を聞いたヒュッツァーベル様がこちらを向く。
「お前はいいのか? 一人でこいつらの相手をする事になるが」
シエンタ様に止められちゃったからね。
「公平性が保たれた勝負であれば、構いません」
「そこに関してはご安心を。その為にラグラックが来ているからな」
「任せよ」
カタカタと天秤が左右に傾く。
いくら天秤の神様といっても、それを体現しなくてもいいのでは?
「さて、お互いの要求を聞こう。まず、そちらの5人はこのマスターに対し、何を望んで戦いを挑んだ?」
「奴ノ従者ハ、愚カニモ我ラノ敬愛スルセレスティアーネ様ヲ侮辱シタンダ。我ラハ、ソノ従者ニ対シ、教育ヲセネバナラヌンダ。我ラガ勝利シタ暁ニハ、従者ヲ貰イ受ケヨウンダ」
こいつらはシヴィー狙いか? それとも別の狙いがあるのか?
「然り、然り」
「故に我ら5人の従者と勝負をさせる」
「愚図共が……貴様らの下種な考え、私がわからないとでも……」
「当事者ではない我々が口をはさむ事ではないよ。ヒュッツァーベル」
「ぐぬ……」
天秤様がヒュッツァーベル様の言葉を遮る。
「つまり、お前たちの言う愚かな従者を賭けて斎川に勝負を挑むと。それでいいな?」
オオグラム様がまとめる。
「然り、然り」
「左様に御座います」
オオグラム様は今度はこちらに目を向ける。
「斎川、この勝負受けるか?」
「そちらが何を差し出すかにもよりますね」
「何!?」
「貴様ぁ!?」
「当然でしょう? お前たちはオレの従者を欲しがっているが、オレは別にお前たちの従者はいらんもの」
人のところの思想に染まった従者なんて必要ない。制御する自信もないし、そもそも使い道が無いのだ。
「では何を要求するつもりだ」
「そうですねぇ……どうしましょうか。別段欲しい物なんてないのですが……」
シエンタ様に言われた、連中を徹底的に叩く要求をしなければならない。
「バランスを取るならば、彼女を召喚する時に使った量のDPか?」
「それでは話になりません。シヴィーは進化させた個体でDPを消費しても同じような進化をするとは限らない。それにシヴィーの価値はDPで測れる物ではないとオレは考えております」
ラグラック様の言葉に首を振る。
「アユム様ぁ」
シヴィーが両手を組んで喜びの声を小さく上げる。お前、そんなキャラじゃないだろ。
「ではなんとする? DPではないならば物品か?」
「そうですねぇ……少し考える時間をいただいてもいいですか? 何せ突然の話でしたから」
「構わぬが余り時間をかけるなよ」
オレは頷くと、後ろに下がり左手を持ち上げた。




