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開かずの塔のダンジョンマスター  作者: てぃる
夜会に集うダンマス達
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魔女シエンタの憂鬱


三人称視点で進みます。

「ふう、疲れた」


 真っ白な仮面を控室で外し、一息つくのは一人の少女。


 齢400歳も届かんとする、とある森のダンジョンマスター【魔女シエンタ】だ。


 彼女は仮面を放り投げ、靴を脱ぎソファへと身を投げ出した。


「マスター、お疲れ様でした」


「ん」


「お師匠様、残念でしたわね」


 シエンタを師と仰ぐ、2人の美女と美少女。魔女ジェシカと魔女見習いのシャインだ。


 シエンタは従者である魔女を、コアによるDP召喚ではなく街や村で拾ってくる。


 シエンタに才能を認められた彼女達は、半ば誘拐のような形で連れてこられるのだ。もっとも、試験を合格し魔女として認められるとダンジョンである森から一部の例外を除き放逐される。


 その例外の一人がジェシカ。


 ジェシカは魔女としての実力はシエンタに次ぐと言われ、100人以上の弟子を取ってきた生きる伝説の一人だ。


 彼女はシエンタの元を離れなかった。何度追い出されても、何度殺されかけても戻ってきて、甲斐甲斐しくシエンタの世話をする。それが余りにも長く多く続き。シエンタが諦めた結果だ。


 シエンタが認める程、ジェシカは強い。


「いい。神々との謁見は始まると長いから。時間短縮となったと考えると儲け物」


「お師匠様、お気持ちはわかりますが口に出してはいけません」


「……そうね」


 失言とも思える彼女の意見だが、彼女は気にもせずにソファに顔をうずめた。


「お師匠様? なんかいつもより可愛いですね。どうかしましたか?」


「私はいつも可愛い」


「いつも以上って意味ですよ」


 ジェシカの言葉に、恥ずかしがりながらも言葉を返すシエンタ。


「さっきの男の子」


「新人のマスターですか」


「うん……」


「彼がどうか……まさかお師匠様っ!」


 ジェシカの敬愛する師が、まるで恋する乙女のような表情を浮かべている! こんな事態、彼女に仕えて200年経過したジェシカも初めて見た。


「まあまあ! お師匠様っ!」


 戦慄する姉弟子をしり目に、恋バナが大好きな魔女見習いは目を輝かせた。


「うん……歩…………あゆむ……」


 愛おしい彼の名前をシエンタは口にした。


「まだ若いけど、なかなか見どころが……ある」


「なっ!?」


 ジェシカの背後に起こるのは落雷か、それとも怒りの炎か。


 一瞬にして膨れ上がった殺気にシャインは後ずさる。


「私が歩の手を握った時……素晴らしいリアクションだったわ」


「は?」


「手?」


 彼と握り合っていた右手を頭の上に掲げて、シエンタは言葉を紡ぐ。


「手を強く握って、彼。すごい痛がって、声も出しちゃって……でもね? 離さないの。普通、手を強く握られてゴリゴリと痛いことされたら離すじゃない? でも、斎川さんは離さなかった。分かってたのよ、2回目も、3回目もある事を。テンドンを分かっていたのよ彼」


「テンドン?」


「あの、お師匠様?」


 現実は残酷なもので、歩の握力では逃げ切れなかっただけなのであった。


「ふふふ、二回目のリアクションも良かったわ『うきゅう』よ?『うきゅう』。見た目通りの可愛い声で……あれは狙ったわね」


「そうでしょうか? 本当に痛がってたように見えたのですが……」


「しかも変な声を出して怒られたと思ったら今度は気のない返事で……もう合図としか思えなかった

わ。私を誘導するなんて……ふふふ」


 掲げた手のひらをにぎにぎとして、歩の手の感触を思い出しながら無邪気に彼女は笑う。


「しまいには私の会心のボケに対して、2度も的確なツッコミを入れてきたわ。流石は日本人ね。ツッコミ慣れしてる」


 そう呟くと、彼女は静かに笑いを漏らした。


 【魔女シエンタ】


 17歳の時に、日本よりナラヴィーに連れてこられて早うん百年。日本人名【高町栞】


 彼女の追い求めるお笑いの時代は、まだ来ない。

2020/03/17

ブックマーク1000件突破しました~

わー! わー! どんどんぱふー!

連載開始から3か月、ここまで読まれる作品になるとは思いませんでしたねぇ。

これからもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
エンタじゃねーか!
[気になる点] タカマチシオリ…特に本名から取った名前って訳でもないのか、シエンタ。
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