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つみぶた
「えーっと、斎川さま?」
「ミルフィ、どしたの急に」
「だって、貴方は古のダンジョンのマスターなんでしょ」
「聞き耳立ててたけど驚いたさー」
「喧嘩を売ってはならない相手だったようだな」
トド男とレイっちも近づいてくる。
「おほほほほ! 妾もお近づきになって差し上げますわ~ん」
豚も来た。動物園かっ!?
「階層の少ない小物のダンジョンマスターだよ?」
「ぶひっ、それは~ん」
鼻の構造上、どうしてもブヒブヒでちゃうらしい。
「でも、睨んでる連中は変わらずだな」
さりげなく豚の横に並ぶトド男。こすい。
「しかしシルドレ様って豪快な人ね。あんな大きなお肉にかぶりついてるわ」
特攻服、後ろに文字が『死流怒檸』。れ、もっとなんかあったんじゃないっすか?
「うっふ~ん? あのお肉いいわぁ~ん」
うっふんって口にする人ホントにいるんだ。あ、人じゃないか。
「オレの事は今までと同じ扱いでいいよ。さっき聞いてただろ? 凍結処理されてたって。だから田中さんやシルドレさんと同期って言っても、ダンジョンの稼働時間は1月も経ってないんだから」
「そうなのね? って!? まだダンジョン稼働させて1ヶ月経ってない!?」
「そうだよ」
まだ目が覚めて1ヶ月も経ってない。
「150年かけ、崩壊してたダンジョンを修復していたからね。地脈からしかDPを獲得出来なくなっていてすっごい時間がかかったみたい」
「ひゃ、ひゃくごじゅう……」
「そんなダンジョン、確かに聞いたことないわ~ん」
「そりゃあオレ自身眠ってたからね。オレの事を知ってたのはさっき話に出てた同期の連中とナラヴィー様だけ、そのナラヴィー様もオレの事を忘れてたし」
コア同士の横のつながりも無かったから、コアは孤立無援で修復をしてたんだ。
「それで修復が完了したから呼ばれたのね? 150年もDPで毎日修復してたら、確かにすごいDP量になりそう……1ヶ月じゃ確かに6層なのも頷けるわ」
「コアルーム作ってなかったら、もっと時間がかかってただろうけどね」
「良くそれまで無事だったわね~ん? 150年も防衛機構が死んでたら、とっくに討伐されててもおかしくないわ~ん」
「運が良かったからかな」
出入口も死んでたので。
「よっぽど僻地なのね~ん? いいわぁ、何かあったら相談なさ~い?」
豚が懐から石板を出す。トド男と似たような形だ。
端末かな?
「どうも、よろしくお願いします」
オレも腕時計を前に出して端末同士を近づける。
「あらぁ~ん? 便利な形なのんね~ん」
「腕に巻き付いてますからね。これなら無くしませんし」
「手を塞がないで使えるのはいいわ~ん」
お互いの連絡先を交換。名刺交換みたいな感覚だ。
「あたしも早く作らなくちゃ」
「オレっちもさー」
「セ、セレスティアーネ様! じじじ、自分とも連絡先の交換を!」
必死だなトド男。
「あら~ん? デンドリちゃんとはしてなかったかしら~ん?」
「ええ、これを機に是非!」
「いいわよ~ん、妾って罪なお・ん・な」
シンプルにキモイな。
とか思っているうちに、我も我もと『ぶひぃ』に群がる獣型のダンジョンマスター。
わぁ、大人気だ。
「あの体形は、富と力の象徴さ~。まあ完全に草食のオレっちはなびかないさ~」
レイっちは草食系男子ということが判明しましたとさ。
 




