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かくかくしかじかめしめしうまうま
「いやぁ、実はかくかくしかじかな事情でして」
神々にダンジョンが破壊され、活動状態が休眠されてた事を説明。
「なんと、かくかくしかじかな事情とは」
「カクカクシカジカなら仕方ないですよねぇ」
「なんと言ってもカクカクシカジカだもんなぁ」
うんうん、とオレと田中さんとシルドラが頷き合う。
「他のメンバーはどうなったの?」
「ああー。俺は知らん」
「私が説明出来ますから」
流石田中先生。
「まず、跳虫人の【プリンセス・ナラーリア】様は既に引退なされました。ご自身の子孫を後継者に指定し、ダンジョンマスターを辞められ天寿を全うしたそうです」
「マスターになると不老になるからな。見事な覚悟だ」
「あ、やっぱそうなんだ?」
150年間も寝てて縮んだからその辺は良く分かってなかった。
「まあ彼女の死後、彼女のダンジョンは後継者争いで大変なことになったらしいですけど」
「最悪だー」
「彼女というカリスマがいなくなれば仕方の無い事だと思いますよ」
昆虫系列の魔物の為、子孫が多くてひどい戦いになったらしい。
「グランドギガースの玲奈様ですが、残念ながら元の世界に戻されてしまいました」
「え? そうなの?」
「ええ。彼女は巨人族の中でも規格外の大きさでしたので、この世界でダンジョンを作成するのには適さないと」
「そんなの呼ぶんじゃないよ……」
「あー! 覚えてる! あいつでかかったもんなぁ!」
スカートの中身が見えそうだった彼女だ。
「コアが小さすぎて、ポケットのどこに仕舞ったか分からなくなったそうで……泣いている所をナラヴィー様が回収なさいました」
「適さないっていうか、それはもはや……」
「まあまだお子様でしたからしょうがないですね……」
ジャイアント女子高生、哀れ。
「で、最後に猫人族のエイミーだけど」
「うんうん」
「ダンジョン作ったけどあっさり突破されてしまいました。ダンジョンから逃げ出し、その後は冒険者に転身。まあ不老性も消えたのでもう死んでるでしょうね、随分前の話ですから」
「うわぁ」
「はっはっはっはっ、そんな奴もおったなぁ」
猫の獣人で、人間に猫耳と尻尾が生えた女の子がいたね。
「シルドレさんのダンジョンはどう?」
「でかいぞ!」
「斎川さん程ではないですが、この男も随分遅咲きでしたから」
「遅咲き? オレみたいにペナルティでも食らった?」
「違う。神々の為、修行をしていただけだ」
なんか修行僧みたいなこと言ってますけど。
「ダンジョンに移動した先で、一人の人間と戦ったらしいんですよ。それの戦いで興奮してダンジョンも作らずに旅に出て、とにかく強者と戦って。まったく、ダンジョンマスターであることすら忘れてるんですから」
「うむ。道中はコアに随分怒られたな」
何それ。
「ダンジョンコアを死体袋と食料貯蔵庫程度としか見てなかったんですよこの男。旅に出て、強者と戦い、魔物を倒す。死体はコアに吸収させて、腹が減ったらDPでメシを出させる。人のダンジョンを見かけたら突貫し、名付けされた魔物やダンジョンマスターを倒してコアに吸収。冒険者の中でも生きる伝説と化したんですから」
「通常の魔物と違って、名付けされている魔物はとことん強化されるから楽しいぞ。今でも許されるならあの生活に戻りたいもんだ」
「ダンジョンを作らずに、遊びまわってたんだ」
そんなコアの使い方をしてたのか。まあ確かに自由にしろってナラヴィー様も言ってたけど。
「こちらに来るまでは、城での生活で自由がほとんどなかったからな」
通り魔的な男だな。
「最終的には所帯を持って、そこに落ち着いたんだけどねぇこの人も。んでそこの部族の族長になって、集落をダンジョンにしたんだよな」
「うむ、子供が出来てからだ。今から80年ほど前の事か?」
旅先で魔物やら強い人間やらの死体を回収し続けてたから、DPは潤沢だったらしい。
「コアが集落を囲う防壁や、畑、水源などを出したからな。集落も随分大きく強くなったぞ。眷属も増えたしな」
「眷属の契約を教えろって突然来ましたから。あの時は驚きましたよ」
「眷属の契約?」
「ダンジョンコアを通さずに、外の魔物や生物をダンジョンの生物に変えてダンジョンマスターの庇護下に入れる契約です。ご存じ無いですか?」
「そういうのがあるんですね」
「ええ、完全に庇護下に入れるには魂に干渉する魔法式が必要です。対して単純に従属関係にするだけでしたら魔道具を使うことが多いですね、首輪が一般的です。ダンジョンに招き入れた魔物とDPで出した魔物では知識や経験の差がありますから、屈服させるなり心酔させた魔物を庇護下に入れる際には殺さずに契約を行う方が一般的ですね」
今度フィルに教えて貰おう。
「この男、魔法が下手なので……コアとの関係も当時は悪かったですから」
DPを使わないとコアが拗ねるのはどこも変わらないらしい。
「喧嘩を吹っかけてきた他所のダンジョンマスターも返り討ちにしてたらでかいダンジョンになっていた。今は安定しているぞ。そっちはどうだ? 中々骨のありそうな従者を連れている、上手くいってるのではないか?」
「どうだろ? 気分的にはまだ駆け出しだし。他所のダンジョンがどうかは分からないけど、まあ魔物達とは仲良くやってるよ。侵入者も多いし」
階層は少ないけど。
「身内の魔物達と仲良く出来るのは羨ましいな。ウチはコアから生み出した魔物と眷属になった部族の者達との間で諍いが絶えなくてなぁ」
「君は苦労してないでしょ、全部嫁さん達が仲立ちしてるんだから」
「ちげぇねえ! ガハハハハハハハハ!」
「田中様」
「ああ、はいはい。今戻ります」
ミニバッフォの一人が田中さんを呼びに来た。
「神々のご準備が整ったか? 今日は随分とゆっくりだな」
「普段はもっと早いんだ?」
「ああ。オレがタナカに挨拶をする時には、大体そのまま神々との謁見の間に連れていかれてた。今回はまだ準備が出来てないって言っていたから珍しいと思ったんだ。シエンタ嬢もあそこで足をプラプラさせておる、いつもギリギリに来るのにな」
シエンタ? えーっと、魔女的な人だっけ。あの椅子に座って足をプラプラ振ってる女の子か。
「それよりも肉食ったか? 今年はメシが美味いぞ」
「あー、神々との謁見が済んだら頂くよ」
トイレ行きたくなったら嫌だもん。
かくかくしかじかが分からない人は「1章~2章冒頭」へばっく!
ついでに読み直して誤字脱字くれてもいいよ? いいんだよ?




