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りぐれぶのしつじたましいにひがついた!
「これ、近い……」
「言い出したのはお前だぞ」
「そ、そうだけど……」
ゆっくりとした歩調で赤い絨毯の上を歩くオレとミルフィ。
後ろにはお互いの従者が続く。
女の子は柔らかいねぇ。
あといい匂い。
「こここ、こんな事になるなんて」
「声がデカい。まあ見てる奴が少ないないんだからラッキーだったな」
オレの腕を取り、肩を合わせて歩くミルフィの顔は真っ赤になっている。
オレも恥ずい。
でもミルフィが慌ててくれてる分、オレが冷静でいられる。
幸運なことに、会場入りした時はまだマスター達はほとんど集まっていないし?
まあいないこともないが。
「お二人ともお似合いさー」
牛とか。
「ふむ、化けたな」
トドとか。
「……」
睨んでくる魔族の男と、多分睨んできてるんだろうけど、良く分からない蟻人間とか。
「あうあう……」
「このまま真っ直ぐ進んで下さい。顔を上げて背筋を張る、視線も下げない。大股にならない。いけませんよ? 体をしっかり斎川様に預けて下さい」
後ろにいるリグレブがスパルタだ。
「むぐぐぐぐ」
「変な声を上げない、こっちを見ようとしない。田中様のところまで今の姿勢を保っていて下さい」
「なんであたしがこんな目に……」
「ミルフィーユ様が失敗すれば斎川様にもご迷惑がかかりますよ? それに、せっかく美しいドレスを着ていらっしゃるのですから、それ相応の所作をせねば恥を掻くのはミルフィーユ様ご自身なのですから」
「リグレブ様の言う通りになさって下さい、マスター」
「お淑やかさが大事ですよ、マスター」
ミルフィの従者のハーピィ2人も楽しそうに後ろに追従している。
「私とですと、身長差が出ますからね。アユム様にもいい機会です」
「お館様、凛々しいですぞ」
同じく楽しそうなシヴィーと、鎧姿でガチョガチョ言うジョージ。
「お前がオレの身長に合わせれば問題ないだろう?」
実際小さくもなれる癖に。
「色々アンバランスになりますから。それに一定の形を取らないと周りの魔物達も混乱するでしょう?」
「そうだけど……ん? 待て、そうか?」
「そうですとも」
ウチの身内は混乱しない気がする。ミリア辺りが文句を言うくらいだ。
「斎川様も、余り後ろを見ない様お願いいたします。正面の田中様をしっかりと見据えて下さい」
「あ、はい。すいません」
「くししし、おこられたー」
「ミルフィーユ様?」
「……ごめんなさい」
リグレブの鋭い視線に敗北するミルフィ。
こいつ、楽しそうだ。
「精一杯、おもてなしさせて頂いているだけですよ?」
「うわぁ」
絶対に趣味だろ!
「さて、おしゃべりもここまでです。田中様にご挨拶ですよ」
「はい」
「はーい」
「……ミルフィーユ様には、もう少し厳しいプチバッフォを送り出すべきでしたね。交代しておきましょう」
「いっ!」
「はい、変な声を出さない」
「ほ、ほほほほほほ」
何その笑い方。
「ふふふ、楽しそうですねお二人とも」
「田中様、ダンジョンマスターの斎川様とミルフィーユ様をお連れ致しました」
えーっと、こういう場合は到着の挨拶だけだよな。
「田中先生、先日はご指導有難うございました。無事にまた顔を出すこと出来ました」
「ありがとうございました」
「いえいえ。無事に夜会に出席頂いた事、心より祝福させて頂きます」
「ナラヴィー様からの招待ですからね」
「侵入者がいても来るに決まってるわ!」
「ミルフィーユ様は元気があってよろしいですね。謁見が開始されるまではごゆるりとお過ごしください」
「ええ、そうさせて頂きますね」
「田中先生、また後でお話ししましょう!」
簡単な挨拶を終えて、その場を後にする。
問題なかったよな?
「あんた、ちゃんと挨拶出来るのね」
「オレをなんだと思ってるんだ」
取引先のゴルフコンペに参加するようなもんだ。
「無事に挨拶も終えましたし、どなたかとお話をなさいますか?」
「そうだな。あのトドっぽいのに挨拶しとかないとだな。レイっちは後でいいや」
「デンドリブラデンドリブル様で御座いますね」
「あー、そうそう。この間少し話をしたからさ」
「左様でございましたか、それでは小生は控えさせて頂きます。何か御座いましたらお呼び下さいませ」
「わかった、お前も何か用が出来たら呼んでくれ」
「…………畏まりました」
リグレブはミルフィの案内役のミニバッフォと共に後ろに下がる。
リグレブのせいでミニバッフォは空気だ。




