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感想有難う御座いますっ!
「ちょっと! あんたいつまで控室にいるのよ! 男ならあたしのエスコートをしに来なさいよね!」
「わあ、そう来たかぁ」
アイドル衣装のミルフィーユが扉からツカツカと入って来た。
待ち人来ずっ!
「何よ?」
「いや、別に……リグレブ、時間は?」
「少し早いですが、お二人は初参加のマスターです。後から来る常連の方々よりも先に入っておくのも悪
くはありませんな」
「ちょっと! なんであんたの案内人は名付きなのよ!? あたしのところは普通のミニバッフォなのよ!?」
あー、そこに噛み付きますかぁ。
「ミルフィーユ様、こちらの斎川様は今回の来客の方の中でも特別なのです」
「特別っ!? だったらあたしも特別じゃない!」
「いいえ、残念でありますが」
首を横に振るリグレブ。
「どう言うことよ!」
「斎川様は神殿を既にお持ちで、ナラヴィー様に多くのお酒やお食事、お花などをご奉納して頂きました。我らが主たるナラヴィー様を手厚く崇め奉る斎川様には、最上のお持て成しをと、小生らスタッフ一同の総意に御座います。先日頂いた黄色い果物、大変美味しゅうございました」
黄色……? バナナか!
「あんた、そんなことしてたの?」
「ああ、まあね」
選んで送ってるのミリアだけど。
「ナラヴィー様から下げ渡して頂いたお品を、小生らも頂いておりますので」
こちらにウィンクをしてくるリグレブ。
そういうことにするらしい。
「もちろん、ご奉納頂くだけではこの様な扱いにはなりません。斎川様がご用意下さった品々、とても貴重で……正直、小生も見たことの無いものばかりでしたから。これを機に少々お話と、あと他にも珍しい物があるかという小さな下心も御座います」
「そういえば、あんたの所で食べたご飯美味しかったわね。デザートも見たことない食べ物とか、見慣れてるのに味が全然違ったりとかしたし」
よだれがドレスに付くぞ。
「あ、お弁当だっけ? あれも美味しかったわ! うちの魔物達も喜んでたし!」
「そりゃどうも、ところでリグレブ。別のマスターをエスコートするって有りなのか?」
「ええ、構いませんですとも。同盟同士のマスターや、良好な関係を築けているマスター同士で良く見ます。同性の方をエスコートされている場合も御座いますよ」
「そっか。じゃあ問題ない……のか? でもオレ、エスコートなんて上手く出来ないぞ」
そもそも良くわからん。
「あんたそこの従者をエスコートしてたじゃん」
や、されてた。が正解だ。
「あんな感じにあたしがやればいいでしょ!? 簡単よ!」
「ミルフィーユ様。アユム様の左側は譲りませんよ?」
「いいじゃない! あたしはこーいう場でエスコートされたいのよ! 憧れるじゃない! ちょっと小さいけど」
「好きで小さいんじゃないやい」
もっと背が高いいけめ……、に、日本人の標準だったんだ!
「エスコートならレイクロス様にお願いすれば宜しいのではないでしょうか?」
「牛じゃない! あんた分かってて言ってるでしょ!?」
確かに牛だが、その言い分は可哀想だ。
「しゃべってないで行くわよ! ほら!」
オレの腕をミルフィが掴む。一瞬ジョージが反応するが目で制する事に成功。
頼むから問題を起こさないでくれ。
「分かりました……ご案内させて頂きます」
「いいのか?」
「ええ、夜会を彩る美しいお客様のご機嫌を損ねる訳には行きませんから」
「ふふん! 当然よ!」
そんな事を言うリグレブ。
『アユム様。執事長殿とは私が念話で情報交換を続けます。ミルフィーユ様と共に向かいましょう』
『念話は傍受される危険が御座いますが、シヴィー様程の腕前であれば並のダンジョンマスターでは太刀打ち出来ないでしょうな』
『そういう執事長殿も中々ですよ』
『ありがとうございます』
頭の中でそんな会話が流れてくる。
ちょっと混乱しそうだ。
「分かった、行こうか」
「ええ! えすこーと♪ えすこーと♪」
ちょっと生暖かい目で見守りたくなる子だ。頭が痛い。
『お薬が必要ですか?』
『医者も待機させておりますよ?』
『そういう事じゃないやい』
変な所を傍受しないで欲しい。




