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2020/03/03
西渡島 勝之秀様よりレヴューを頂きました。有難う御座います。
この人、昔あった作家サークルの仲間です。
読んでくれてるんですねぇ。嬉しいです。
「頼んだのはこちらなのだが……良いのか?」
「まあいいんじゃないですかね? 綺麗になれるのを嫌がる女性はいないと思いますし」
「それはそうだが」
「ですが、やはり女性の身支度でございますから。お時間は大丈夫ですか?」
「問題ない、神々の衣装は既に出来上がっている。夜会本番の2日前にあの布を持ち込んだ二人が悪い。一着の服が一体どれだけの時間をかけて作られているか理解を出来ていないのだ……まあ私にかかれば即座に仕上るが」
「はあ」
流石は神様。
「だが、作成を始める前に様々なデータが必要だ。着る者の体形、夜会本番の髪型、本人の好む色、神としてあがめられる際のモチーフ、その時の流行している色彩や形、付けるアクセサリー、好むアクセサリー……様々な要因がある。それを『これ、一昨日もらったのー、これでドレス作れるー?』などと気軽に持ってきおって。そもそも一昨日貰ったんならスグに持って来いと」
ああ、なんかスイッチ入ってる。
「ただの反物であれば切り捨てるところだ。だが持ってきた布の素晴らしさを理解できていないあいつらは『出来るならよろしくー』とかふざけた事をぬかしおる。
出来るならだと!? 私は芸術の神ニーロイップだぞ!? 事、服飾において『出来ない』などと言える訳がなかろう!
しかも創造の神ジェイドリードもいる場所でだ! 私が出来ないと言えば嬉々として奴が名乗りを上げるに決まっておる!
あいつは素材の素晴らしさを理解できても機能美優先に物を作る! ドレスという名の芸術作品ではなく、ただただ着るためのドレスを作るに決まっている!
そんなものは芸術に対する冒とくだっ! そうは思わないかね!」
「えっと……」
「いや、みなまで言うな。それほどの芸術品を身に着けている君には愚問であったな。よくよく見れば靴も中々に良い。
『どうせ靴なぞ汚れるから』だとか、『目に入らないからサイズさえ合えば良い』とか考える武神や戦神連中に見せてやりたいものだ!
おっと、だが彼らに君の靴の様に磨かれた靴は履かせられないぞ? 連中は靴を履いた瞬間に戦いに支障が無いかその場で素振りを始めるような連中だ。
いきなり履き潰されるに決まっている。大体物には役割があるのだ! 分かるね!」
「は、はい。動くときには相応の物を履くべきかと」
「その通り! 戦いに赴くのであれば戦いの為の靴を、夜会や舞踏会に参加するのであればそれに相応しい靴を、それぞれ役目が違うのだ! 存在価値が違うのだ!
それなのに『こんな靴は履きにくいからー』とか『あー、悪い。いつもの靴できちった』などバカにするのもいい加減にしたまえ!
私の指示に従えないのであればそもそも私に依頼などするなと! そう、靴だ。そこの従者、不思議な靴だな。踵の部分が長く出来ているのか。
うん? ハイヒール? ちょっとこちらに、あ。そこで止まりなさい。ふむ……そうか、足首からすらりと伸び、足全体が長い印象を受けるな。
細身のパンツが映えるし姿勢も自然と良くなるな、靴も綺麗に磨き上げられている。そこでターンを、そうだ。
うむ、美しい。そう、こういった細やかな気遣いが一つ一つの道具だけでなく、身に着けている人間すべてを一つの芸術へと昇華していくのだ。見事だな、あ。すまん、加護飛んだ」
「ちょっ!」
この神様、しゃべりながら加護飛ばしてきた!
「まあよかろう。遅かれ早かれ加護は与えていただろうからな。それよりもそのハイヒールの話だが……」
「いや、それよりも加護の話を」
「加護なんぞどうでもよかろう? 私はもう君を含めて5人もの人間や魔物に与えて来たんだぞ?」
流さないで! そもそも5人って少ないでしょ!? 貴方何年生きてるの!?
加護ってそんなぽんぽん飛ばす物じゃないんでしょ!?
「そんな事よりもだ、ハイヒールと言ったか。他にどのような靴があるんだ? よもや普通のダンスシューズやブーツではなかろう?」
「くっ、コア」
腕時計に『ヤダ』の文字。
変な逃げ方覚えやがった!!




