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センスの良いいけめんおにいさんのイメージでお願いします。
「ふむ、時計というと時間を計る道具だね。人間の都市で大型の日時計を見た事があったが……こんなに小さいのか」
「えっと、1分を60秒とし1日を24時間として計ります。一番短い針が時間、こちらの長い針が分、そして動き続けている針が秒を示します」
「こんなにも美しい物を軍用として用いるか……恐れ入る」
「軍用……でありますか?」
「違うのかね? 1分1秒単位で時間を計り行動をするなど集団運用以外で何に用いる?」
「私の世界では、大人から子供まで時間を見て生活しておりましたから……」
電車やバスの時間、待ち合わせの時間。食事、仕事の区切り、取引先への連絡の時間、納期に納品……ああ、思い出しただけで悲しくなってく。
「なんと……それで時計もここまで小型化をさせたのか。しかもこの秒を示す針、常に一定のペースで動き続けている。一体どのような技術で……」
「振り子の原理……で分かりますかね?」
「その振り子の動力は? まさかこの小さな中に川が流れているなどとは言うまい」
水車を動力に振り子を振らせる何かがあるのかな?
「私が動くことで、時計の中にある振り子が振動を受けて振れます」
「そのように小さな動力で……? まさか永久機関かっ!」
くわっ! と目を見開くニーロイップ様。
「中のパーツが摩耗しますから、永久とまでは……私の故郷で出回っている物は10年前後でメンテナンスを必要としていましたし。時間も微妙にずれます」
自分が向こうで持っていた時計は電池式だったけど……というかスマフォがあったから見栄を張る時以外は付けてなかった。
「……だがこれはDPで作った物……しかもダンジョン端末ではないか! ならば摩耗など……」
「痛い痛いっ!」
捻るな!
「っ! 済まない、興奮しすぎたようだ。そちらの従者も殺気を収めて欲しい。この通り謝罪する」
「シヴィー、ミリア。相手はニーロイップ様だ」
「「 ですが…… 」」
「いや、良い従者だ。こちらが悪い」
「有難うございます、謝罪を受け入れます」
「重ね重ね申し訳ない……しかし、このような道具。やはりDPでないと作れぬか」
「えーっと、少なくとも細かい部品が作れれば作れるようになると思いますよ? 私のいた世界では、職人が手作りで組み上げていた物もありますから」
「真かっ!」
「細かい部品を作るのがキモですが……どうでしょうね。DPで一つ出して、ドワッジがいいかな? 彼らに分解させればいずれ?」
元々腕時計は懐中時計を腕に巻き付けたのが始まりだったはず。
まずは懐中を作れるようにさせるか? でも完成品があるんだから、先にそれを見せれば……いや、よくよく考えると時間に正確な生活に戻りたくない。
「やめときましょう。他所の世界の技術です。どこが禁忌にあたるか見当もつきません」
それっぽい理由で首を振ろう。
「ぬ……それは確かに。だがこれは芸術ではないか? 否、神である私が宣言する。そちの腕時計は芸術だ!」
「ありがとうございます。ですが、どのような有用な品も悪用を考える者が出ます。それはこの世界へ良い影響を与えないでしょう」
「だがっ! ……いや、そうだな。君の言うとおりだ。マスター斎川、君の意見を尊重しよう」
「恐れ入ります」
そう言ってニーロイップ様がオレの横の椅子に座る。や、あんた自分の席に戻れや。
シエル、笑顔で飲み物を移動させなくてもいいんだよ?
「ふう、美味い」
なんとなくそれに合わせて、オレもグラスに口をつける。
ニーロイップ様は何かを考えているご様子。少しの間沈黙が訪れた。
 




