6〜覚醒の神雷
昨日は投稿出来なくてすいませんでした!!
「アアァァァァアアアア!!!」
「くそっ!止まれぇ!」
俺は両手に魔力を集め魔法を構築するとそれぞれ《異形》に向けて放つ。
しかし放った魔法は《異形》の体に当たると弾かれた雨のように霧散して消える。
しかしそれでも俺は魔法を構築する手を休めず、少しでもこちらに反応するようにと次々と魔法を構築して放っていった。
《異形》はそれすら気に求めずに走り続け遂に
ルシールと対面してしまう。
「………あ」
「避けろ!」
パリッ
何が走ったような音がしたが無視して最大限の身体強化を施しルシールを抱き跳躍して逃げた。
次の瞬間
3メートルもある巨体が飛び上がってルシールを押し潰そうとしていた。
しかし俺はルシールを抱えて跳躍しているため被害はない。
地響きのような重い音を響かせ地面に沈むと同時にすぐ様立ち上がりながら辺りを見回し先ほどから標的にしているルシールを探していた。
俺はルシールの一際太い木の枝の所に座らせると木の枝を伝いながら逃げるよう言った。
「ルシール、俺はここで全力で足止めをするその間に麓まで逃げてくれ。それと助けはもう呼んだ?」
「一応」
「ならそのまま逃げて」
「なんで?!私も戦うよ!足手まといにはならないでしょ?!」
「なる。アイツは魔法が効かないけど身体強化で肉弾戦をすればいいだけの事。もう時間が行けよ!」
ルシールにそう言い残すと最大限まで肉体を強化して《異形》に挑んだ。
どうしても《異形》はルシールを追いかけようとするが強化した脚で遠くに蹴り飛ばすなどの対処をして意識を無理やりこちらに移した。
コイツには感情があるのか分からないがルシールと分断されてまるで怒ったかのように攻撃が苛烈になっていく。
俺は効かないと分かりきっている魔法は目眩しとして使用した。使用する魔力の割に得られる恩恵がただの目眩しっていうのは詐欺感溢れる物だが相手が魔法が効かないのだからしょうがない。
そして周りが木だらけで障害物がある分撹乱は簡単に出来るが《異形》は木を引っこ抜き投げつけたりしてくるので逆に邪魔になっていた。
「うぉぁああああ!!」
ブウゥゥン!
無造作に放たれた《異形》の拳を避け武術もクソのないただの全力のパンチを《異形》の肩に狙いを定めて放つ。
バキィィン!
という明らかに骨が折れる音がした。
だが
「シュゥウウウウ」
鋭く息を吐くと変な方向に曲がっていた腕がうねり元の形に戻る。
その光景に俺は嫌な汗を覚えると、ならば回復出来ないほどのダメージを
と考え今度は骨を折るのではなく斬り落とす方針に変えた。
もし魔法を避けられたり効かないと相手が現れた時のために持っている護身用の変刃刀を左腕部にセットしていたホルダーから抜き出し構える。
黒い刀身がスラァッと伸び本来の形を作った。
「すぅぅぅ……ハッ」
深く息を吸い短く息を吐くと一足で《異形》に近づきそのまま腹に一閃を放った。
腹の肉に刃が阻まれる事はなくまるで豆腐を斬るかのような感覚だ。
(これなら…………)
懐から離脱すると《異形》を睨む
(いける!!!)
ヒュッーーバスン!!
一筋の矢が《異形》の口を射抜いく。
流石の《異形》も口の中を矢で射られるのは堪らないのか叫び声を上げてその場を暴れ回った。
俺は矢の飛んできた方を見て怒りの声を上げる。
「ルシール!何度言ったら分かる!逃げろ!」
聞こえていないのか何度も《異形》の口に目掛けて矢を放った。
今度こそ俺はルシールに説教をする為に近寄ると堪えれずに怒声を上げた。
「何度言ったら分かる!!そんなに俺は弱いか?!頼らないか!!アイツはお前が相手して止められるような相手じゃないんだよ!自惚れるな!」
俺に本気で怒られるのが初めてなルシールは涙を浮かべ反論して来た。
「魔法が効かないんだろ?!だったら物理攻撃の手段が少しでもいるだろう?それなのにその手段を持っている私に逃げろだなんて馬鹿じゃないか!」
「俺は田崎さんみたいな剣技なぞ持っていないし体術も素人だ!それでもアイツと渡り合えてるのは魔法で自分を強化しているからなんだよ!お前に注意を向かないように相手取るなんて無理だ!」
俺はルシールに現実を突きつけた。
それでも何か言おうとしたのか口を開きかけたが躊躇い、そして閉じた。
「……ごめんなさい」
嗚咽を漏らしながら涙を流し謝ったルシールの手を握る。
「こうなったらお前を麓まで送っていく。こんだけ時間が経っていれば応援も来る頃だろうよ」
「ブ………ァァアァァァァアァァアア!!」
矢の痛みから立ち直った《異形》は「もう理性があるフリもやめだ!」とばかりになりふり構わず突撃してきた。
「行くぞ!」
握った手をそのまま引いて走り出すとするりと手が抜けた。
勢いがつき過ぎで今の瞬きだけで20メートルも離れてしまった。
「おい!止まるなぁ!」
俺が走りだした地点にまだルシールが居て魔銃を片手に持ちながら応戦していた。
「おい!逃げろ!!こんなの勝てっこない!殺されるのがオチだぞ!」
「でもここで止めないと被害が出るんですよ?嫌じゃないですかそんなの」
「なら俺が時間を稼ぐ!だから!」
俺は彼女を助ける為魔力を脚に集中させ強化をすると力いっぱい地面を蹴り手を伸ばした。
だけどその伸ばした手は彼女きてに届く事は無かった。
「私が居なくても頑張ってね?」
死を決意した顔で彼女が走り出すと掴めそうだった肩がなくなり俺はバランスを崩して転んでしまった。
「うぐっ!」
転んだ衝撃はそんなに痛くないと自覚してすぐに彼女を目で追いかけると必死に敵の攻撃を避けながらボウガンや魔銃を使っている姿があった。
もう一度逃げろと告げる為に息吸った時にそれは起こり俺は動けなくなった。
「よし!なんとか……うわぁ!!」
敵の攻撃をギリギリで避けた彼女は安堵の表情をしていたしかしその表情が絶望に変わったのは次の瞬間だった。
敵の振り抜いた腕の脇からもう一本の黒い腕が勢いよく生えて来て彼女を掴み思い切り地面に叩きつけた。
「ぎっっ!!!」
そして《異形》はルシールを持ち上げた。持ち上げられた彼女の目は見えているのかと心配になるほどに虚だった。
そしてもう片方の脇からも腕を生やすと彼女を掴み握りしめた。
バキバキバキバキィィィ
「ぃあああぃぁぁぁぁぁ!!!」
骨の折れる音と彼女の悲鳴が辺に響いた。
俺は直ぐ立ち上がり助けようと魔法を準備したが僅かに敵の方が早かった。
口だけの大きな上半身を開く手を持ち上げ抵抗しようとしていた彼女の頭をなんの躊躇いもなく噛み砕いた。
その瞬間に弱々しく抵抗していた腕は垂れ下がり響いていた声も聞こえなくなった。
「……………は?」
何も分からなくなった。
理解できたのは1年、たった1年だが仲良く冒険者をしていた彼女が本当に嘘偽りなく死んでしまった事だけだった。
「……あ……あ!」
嗚咽が漏れ出てくる。
「ああああああ!!ルシールゥゥゥ!!!」
パリッ
「っそたれが!!」
パリッ!
「なんで死んだ」
パリィッ!
「俺が誘ったから?」
バリィッッ!!
ドスン、ドスン
《異形》が茫然としている千斗にゆっくりと近づく。
「田崎さん達も……全部、全部!!」
バリィィィ!!!!!
ゆっくりと千斗に手を伸ばす《異形》その手が千斗の首を掴もうとした時ばっと顔を上げた。
その顔は後悔という名の涙に塗れ、怒りという名の表情にだった。
「魔力制限‥…全開放」
突如《異形》が耐えられず吹き飛ばされるほどの風が吹いた。
俺が転生したのは2度、1度目は異世界へ
一応ラノベ見たいな感じで貴族に生まれなんの不自由もなく暮らし魔法を極めた。晩年には魔神を殺せる程までに自分を高める事が出来た。
2度目は今。記憶が引き継がれて生まれたのはいいが何故か魔力のある地球に生まれる。
そこまではまだ良かった、駄目だったのは俺が生前の魔力をそのまま持って生まれた事。まだ魔力知らない人達からしたら違和感の塊だっただろう。
だから俺は一般人と同じくらいの魔力を制限してそこか魔力が増えたように偽装した。
そしてその偽装は今でも続いていた。
そう今でも。
目の前で大切な人を亡くした今でも!!!!!
「魔力制限……全開放」
解放された魔力は純粋な暴風となって《異形》を遠ざけ。
俺は立ち上がると変刃刀をもう一本取り出し構えた。
すらっとした刀身が2本並ぶ
暴風から立て直した《異形》にその2本を向けるとたった一言だけ宣言した。
「殺す」
魔力制限を取っ払った身体強化は先ほどの比ではなくなり姿さえ霞むほどの速さを持って肉薄した。
この戦いの中で成長している《異形》でさえその速度にはついていけず無防備な背中に回り込まれてしまう。
水平で十字に構えた。左手の変刃刀を左へ全力で斬り払い右手の変刃刀は刃を逆さまに持ち斬りあげた。
本来なら左右の攻撃に誤差が生まれる攻撃だが有り余る魔力を持って強化した肉体で行うそれは常人の目には同時に攻撃している見えるだろう
「ァァアァァアアアアアア!!」
獣にでもなったかのような声を上げながら千斗はひたすら《異形》の体を切り刻んでいく。
その中でさえも成長するのか《異形》は今度は体を縮め出した。その間にも千斗は罠である意図も考えずひたすら変刃刀を振った。
「ブゥゥアアァァァァァァァァアァァァァァァアアアァァア!!」
最終的に《異形》は千斗と同じ大きさの175程にまで小さくなった。
その分千斗にとっては的が小さくなった分攻撃の手段が制限された。
「ちっ!」
舌打ちをすると1度飛び退いた。
《異形》も《異形》で千斗に対抗する為に剣が必要と考えたの石の剣を魔法で作り出していた。
構える、それは《異形》がたった今千斗と戦いの中で学習した構え。
「俺と同じ構えとか俺好き過ぎかよ……」
睨み合う、遠くで警報音がしたそれは近くにモンスターがいてそのモンスターが暴れていることを教える合図それと同時にそのモンスターを討伐する冒険者が到着した時の合図だった。
俺は一瞬その方向に注意を向けるとチャンスと見たのか《異形:人型》がさっき俺がやったのと同じ動きをして後ろに回りこんだ。
それに全力で反応して回転蹴りを放つが剣の峰を足裏に添えると体をくるっと回転して避け得た遠心力を巧く利用して切り掛かってきた。
避ける事が叶わず俺は右肩を負傷してしまった。
傷口を抑え肩で息をしているが《異形:人型》は最初の構えを取りこちらを恐らくじっと見ていた。
その様子は完全に理性があるようだった。
「訳の分からないモンスターの癖に一端の武人気取りかよ………!」
俺は斬られた傷口の具合的に次の一合で決まると感じ護身用魔法の最終手段を使った。
その瞬間先ほどまで無意識に放っていた小さな雷が徐々に大きくなり身に纏い始めた。
「属性強化:神雷」
白い雷を纏った千斗はそう呟く。
異世界、前世の頃も何度か使ってみたがまともに使えたのは魔神の一回だけだった。
それはただの雷の属性強化ではなく転生の際に神にもらったたった一つの俺だけの力。
身体強化の分とは別に膨大な魔力を神に捧げることによって使える。
そして神から直接雷を増やしてもらう事によって完成する文字通り神の魔法。
その雷を見て《異形:人型》は幾らかたじろいだがそれは一瞬だった。それを誤魔化すように千斗に切り掛かった。この《異形:人型》の動きは田崎と戦っている時に覚えた動きを千斗の動きを合わせたものだった。
だが
「‥…死ね」
真正面から斬り掛かって来た《異形:人型》に向けて俺は右手の変刃刀で居合を放った。
魔力制限を解放した身体強化に上乗せで行った属性強化は前世の自分さえも叶わぬ速度を持って石の剣と交差するがどちらかの剣も壊れる事はなくただ変刃刀が雷化して石の剣を透過した。
「る、ルァァアーー?!」
振り切った変刃刀は元に戻り微かに雷を纏っていた。
一方の《異形:人型》は変刃刀が体に触れた時に上半身が焼かられたのか炭と化していて回復する事も出来ずにそのまま呆気なく死んだ。
俺は振り抜いた体勢から直ると変刃刀をしまいルシールの遺体へ駆け寄り隣に座り物言わなくなった彼女に向けて話しかけた。
「ごめん……守れなかった。嘘をついていた。こんなくだらい嘘を隠していて君を……殺してしまった…!」
ルシールの遺体に縋り付きながらただただ泣き叫んだ。
必死にごめんと、もう何も隠さずに嘘をつかずに生きていくからと必死に生き返るわけでもないのに謝り続けた
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