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今回も少し長いですが読んでくれたら幸いです。





体を魔力で覆い身体強化を施しながら移動していると。

少しの異臭と微かな違和感を覚えた。


身体強化での移動を中止して周辺の探索をした。

すると頂上へ向かう道の端に人が通れるくらいの洞窟を発見した。


洞窟を発見したルシールは俺や田崎さん達に知らせた。洞窟の前に集まると田崎さんが口を開いた。


「この穴の大きさからしてゴブリンか?千斗君やルシールちゃんはどう思う」


田崎さんからの質問にそれぞれ答えた。


「今魔力を飛ばしてみましたがどうやらこの先に少し開けた場所があるみたいです」


「開けた場所?」


「魔力の反射からして縦3メートル横8メートルほどの意外と広い空間が確認出来ました。………何か嫌な予感がします。皆で確認して異常があってもなくても洞窟から出ましょう。そのまま切り上げようと思います。結構ゴブリン狩りましたし、僕のパフォーマンスが見たいのなら帰り際にゴブリンでも見つけたら相手すればいいですし」


「千斗君の魔力は相変わらず便利やな〜!」


「1パーティーに1人は欲しい人材だな」


「「羨ましい。教えろ……」」


ルシールから素直な称賛、田崎さんからはしれっとパーティーへの誘い、他の2人からは妙な圧を貰った。


(隠すもんでも無いから言ったら教えますよ……)


苦笑いをしながら4人に向けると洞窟の中の確認を始めた。


中を通りながルシールや田崎さん達が壁際を見ているが皆の顔は顔面蒼白だった。

それもそうだろう洞窟に入ると際立った死臭、壁面に張り付く血とその肉と思わしき物体、ルシールはその凄惨な絵面に吐き気を催したのか口に手を当てている。


男衆は顔を顰める程度で我慢している。

俺も流石にこれはおかしい事に気付いている。

洞窟の最奥に着くとそこには夥しい程の子供サイズの白骨死体だった。僅かに皮膚が残っている死体もあり確認した死体の肌色は霞んだ緑色だった。

子供サイズの死体、霞んだ緑色の肌から想像出来るモンスターは1つだけだった。


「…………ゴ、ゴブリン


震えながら口を開いたのは田崎さんの後ろにいた男衆の1人の池沼さんだった。


「な、なぁ千斗君これはどういう事か分かるかい?」


「だっておかしいじゃ無い!普通なら()()()()()でしょ?!」


皆が口々に指摘している()()は俺も気になっていた。

それは死体の有無である。

本来ならモンスターは魔石の破壊による生命活動を終わらせると動かなくなりポリゴンみたいな欠片となって消えていく。


単純に魔石を破壊しなくても従来の生物と同じように首を切断したりしてもポリゴンとなって死ぬ事に変わりはなかった。

ただし例外はある、超が着くほどの位の高いモンスター程になると稀に死体が消えずにそのままになるらしい。死体の皮などが有効活用出来るおまけ付きで。


例外は存在してもここにいるのはゴブリンだ。

ゴブリンの最上種エンペラー・ゴブリンでさえ強さは精々Cが上位が限界だ。

田崎さん達のチームワークなら時間は掛かるだろうが問題なく仕留められる程度の力しかない。


超が着くモンスターはAランク帯のごく一部とSランクの一部を除いた殆どのモンスターだけだ。

しかもこいつら滅多に姿を現さないから事例がまだ死体が残った事例が2件しかない。

だからゴブリンの死体が残っているのは異常事態なのだ。


「これは緊急事態と捉えるべきです。今すぐ戻りましょう。俺のパフォーマンスとかの話なぞどうでもいいです!これはもしかしたら噂になっている例の住処かもしれません!早く!」


俺はルシールと田崎さん達を探すと急いで洞窟から出たそのまま麓まで下山を開始して走りだしたその一瞬、頭上に影が走った。

そして次の瞬間


ドゴォォォォォォンン!!!!


()()()洞窟の入り口に着地した。

振り向き確認をすると目を疑った。

そこには冒険者専用施設のガイドブックにも載っていない明らかな()()があった。


『シュルルルルゥゥ』


息を吐いた。

普通息は口から吐くものだろう。しかしその《異形》は体から息を吐いた。

2メートル程の巨体に人間では考えられないに筋肉のつき方、そして特異な身体構造明らかにおかしかった。

通常人間やゴブリンでさえ顔に口が付いている。

だけどこいつは!

顔すらなく頭すらなくなかった。

首のない胴体に人の顔ほどの大きな口があった。


「ヒッ!」


その姿に思わずルシールが小さく悲鳴を上げた。


「ルシールゆっくり音を立てずに後退して」


ルシールにそう囁くと怯えた表情をしながら「ズッ………ズッ」っと後退していった。

俺は田崎さんを見ると田崎さんも俺を見ていた。

頷き合うと田崎さんは後ろ控えている。池沼さんと環田(かんだ)合図を出し武器を構えた。


「手筈通り俺達3人はアレを食い止める千斗君は1番戦力の低いルシールちゃんを流してくれ」


「分かりました。麓に送ったら直ぐに駆けつけます。ルシール麓に着いたら直ぐ人を呼び避難させろ。いいな?」


コクコクと健気に頷くルシールを尻目に田崎さんに激励を送った。


「ヤバイ相手です死なないで下さい。それとこれは餞別です」


そう俺は言いながら左手に魔力を込め組み慣れた魔術陣を形成すると田崎さん達の体に吸い込ませた。

田崎さんの体に掛けた魔法は身体強化の魔法だ。送った魔力量は普段絶対使うことの無い魔力量でこれなら強化時間も伸び時間も稼げるはずだ。


「サンキュー……ルシールちゃんとの一瞬の別れは辛いが……逃げろ!!」


田崎さんが吠えると全員一気に散開した。

その異形が俺の行使した魔法に反応して殴りかかってきた。そのまま俺を殴りに来るかと思ったがどうやら後ろに立っている田崎さん達に反応しているみたいだった。


地面に叩きつけた拳をゆっくりと持ち上げ田崎さん達に向き直ると


砲声し、殴りかかった。


「ボァアァァアアァァァァァァ!!!」


「ルシール急ぐぞ!」


ルシールの手を引き走り出した。走りながら手を介して身体強化を施した。

これなら内部からの魔法の行使だから魔力も漏れ出ていないし《異形》も反応しないはずと思いチラッとそちらを見ると予想が当たり田崎さん達の相手をしていた。

身体強化した足でスピードを上げていくと木の根に躓いたのがルシールが転んでしまった。


「あぅ!」


「大丈夫か?!」


俺は直ぐにルシールの元に駆け寄り体を起こすと怪我をしていないを確認した。

とりあえず外傷がない事を確認した俺はルシールを抱き上げた。所謂お姫様抱っこである。


「だ、大丈夫だって!」


「足首をやられてるかもしれないからこのまま行く文句はひと段落してからだ!」


俺は更に内部の魔力で自身に身体強化を施すと勢いよく走り出した。


「………嬉しいけどさぁ(ボソッ」


何かルシールが呟いたが今の俺には気にしている余裕は無かった。







田崎side


「行ったな」


「ルシールちゃんが怪我したと知られたらモンスターに殺される前にファンの人達にヤラレマスヨ」


「言えてるな」


《異形》の攻撃を器用に避けながら田崎達は茶化しあっていた。

田崎達は個々の実力が既にCランク上位クラスの為連携も含めた実力は中堅Bランクほどもあった。


「うるああああああ!!!!」


田崎が一気にペースを上げて攻撃に転じた。

池沼がボウガンで胴体にある口を狙い牽制、環田が鉄昆で足を叩き動きを止めその隙を田崎が剣で3連撃を斬り込むという見事な連携だった。


「ル、ルァァァァ!!!」


《異形》が邪魔と言わんばかり声をあげ無茶苦茶に暴れ始めた。

近くの木を掴み引き抜くと田崎達に投げつけ引き抜いては投げつけを繰り返した。

3回ほど続くと木を投げるのをやめた。

何をするか?と足を止めるとスゥゥゥゥ……と《異形》が息を吸う音が聞こえた。


吸い終えると力を入れるように握り拳を作り震えていた。

みるみるその体は大きくなっていき力を入れ終える頃には体長が3メートルにも届いていた。


「う、うっそーん」


田崎が発した間抜けな声が今の3人の気持ちだった。


体が大きくなった事により圧倒的身体有利を生かして猛威を振るった。

地面を殴ると岩盤がめくり上がり、岩盤に足を掛けていた環田が宙に浮いた。その隙に《異形》が浮いた環田を殴り飛ばした。


環田は近くにあった木を何本もへし折りながら飛ばされ地面に転がるとぐったりとして動かなくなった。


「環田ぁ?!」


動かなくなった環田に気を取られ池沼は近づいた《異形》に気が付かなかった。

両手を大きく開き思い切り閉じると池沼の頭はパキッ、ブチュッという嫌な音を立てて潰れてしまった。


「っ!!」


田崎は流石チームのリーダーと言うべきかすぐさま後退し剣を構えた。

右手で剣を構えると左手は腰に回され何かを握った。それはドス黒い色の短剣だった。


普通の片手剣サイズとこの短剣の組み合わせが彼本来の戦闘スタイルだ。


「池沼が死んで環田も動かなくなっちまって俺1人だが、簡単に殺せると思うなよ?!」


走り出した田崎は周りの木々を利用して攻撃を始めた。

右手の剣で斬りつけたが薄皮を切る程度だった。

それならばと左手の短剣を思い切り振り抜くとスパッ!と腕に吸い込まれた。


(これなら……いける!!)



《異形》は斬られた左腕を持ち上げると胴体の口の部分に持っていき……舐めた。

すると深い切り傷があった左腕は元に戻る所か元の傷口が結晶で覆われ補強されていた。


「はは……嘘だろ?」


田崎が呟くと微かに《異形》が笑った気がした。







只野side


なんとか麓に着いた俺はルシールを降ろし近くにあったポールに手を掛け息を整えていた。


「ハァハァハァ…キッツイ。ハァハァ」


「ご、ごめん大丈夫?」


ルシールは俺といる時だけのような本来の明るさではなくよそ向きのような大人しい雰囲気で心配してきた。


「大丈夫だ。最近まともな運動していないからその弊害だよ」


俺はそう言うと俺が降りて来た山を見た。

時々土煙が上がり《異形》の声が聞こえた。

ここら辺に住んでいる住民の人も何事かと山を見ていた。


「ルシールさっきも言った通り俺は今からアレを殺しにいく。住民の避難誘導を迅速に済ませたらルシールも逃げろ。あまり言いたくないがお前の実力じゃ足手まといだ」


ルシールは俯いていた。


「強く言ってすまん。このままでいたら田崎さん達が危ない俺はもう行く分かった?」


「分かったよ」


「頼む!!」


俺はルシールに周辺の住民の避難誘導を任せると田崎さん達の元へむかった。




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