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未確認な探索者っぽい物体のレポート  作者: うんしょっ、こらしょう
その3
7/18

01 スキルの再考察

本日分、その1。


全三話。

01➡19:00

02➡20:00

03➡21:00


ようやっと呪いの洗浄が済んで解放された気分の俺。


おはようございます、昏井宙人(ぐれい・そらと)と申します。


二週間の入院を終え、無事に自宅に帰還したでアリマス。


そして今日は日曜日。明日からはようやっと復学だ。




さて、男の嫉妬は見苦しいというが、その見苦しさの根源となる情念が呪いという形を得ての感触というのは、実に、なんと例えていいかも説明のつかない暗い圧力のあるものだった。


それから解放された時の快感といったらもう。これも形容のしようが無い妙な幸福感というのが俺を満たす感覚だった。


それを家族に言ったら、『お前、絶対タバコや薬や宗教にゃ手を出すなよ』とマジな顔して言われたよ。


……うん。意志薄弱ってやつなんだろな。俺。




最近の日常も、なんか周囲の人間関係という濁流にささやかな抵抗が無力な感じに流されて、誹謗中傷という川底の岩にガリガリ何かを削られてる感じだし。




とはいえ、それからはもう解放された。


呪いは消えたし体調も完璧。入院で休学中の単位の心配はあるが、座学に関しての基本は日々の変化が激しい世界情勢の確認が基本なので、ベッドに寝ててもネットで情報は得ていたからテストに関しての問題は無い。


もう一つの、実技に関してもたぶん大丈夫。学年ごとに指定されてるダンジョン到達階層の基準は済ましているし、自身の探索者の資質査定となる成果記録のノルマも終わらしているはずだから。




気になるのは、最近、こうした感じでの入院騒ぎが多いこと。


探索者は怪我の多い類の職だが、基本はそういうダメージを受けない行動をするのが有能という評価をされやすい。


特に学生の内は学校側の管理もあるから、入院レベルの怪我をすること自体がマイナス評価に直結するものにもなるのだそうだし。




……まあ、俺の場合は探索での怪我とは言い難い内容なんだが。




さて、退院は今朝早くだったが、手続きを付属すると家に着いたのは昼近くとなり、明日には学校となると空いた時間は半日程度。自由な時間としてはあまり無いので外に行くという選択は無し。


となると家の中でやれること、となるのだが……。


さて、何かあるかいな?


入院とはいっても基本はくらった呪いの解呪空間で安静にしているだけ。だからこそ座学関係の勉強にも苦労は無かったわけで、学校関連で問題になる部分も無いのである。


つまり、家か部屋の中で済ませるような用事は何も……、あ、あった。




[グレイシップ]を足下に出す。そして中には入らず覗きこむだけにしてみると……。




「あー、やっぱり。放置して忘れてた」




二週間前の騒動は随分ゴタゴタした終わり方をしたせいで、ドロップ品の分配が中途半端に終わってたのだ。




「ドロップ品は赤重の車両にも積んでたから、二人も気づかなかったんだろうなあ」




体調的にも限界だったから……とは思うだけにしとく。


うん。あれはいろいろと封印するもんだ。主に俺の心の中にな感じで。


これから独りの時間にはお世話になる記憶な気もするし。




「入院中に活用な気もしてたけど、解呪空間って強制賢者モードの効果もあったんだよなー」




妙に達観した気分の二週間であった。その時点では自覚無いんだが、こうして社会復帰すると、あの状態の自分は本当の自分じゃないって気持ちの方が強くなる。


おそらくは患者を管理しやすいよう、精神面を多少操作する魔術が使われてるんだと思う。




まあ、思う部分が無いでもないが、過ぎたことだし。忘れよう。


ともかく今は、結果的に隠匿する形になったドロップ品の確認だ。




グレイシップと接触することで知覚できる管理機能を操作し、コクピット内の物品のリストを作成する。すると――






・ダンジョンゼラチン ×36


・ロイヤルコラーゲン ×8


・クイーンローション ×52


・プリンセスコラーゲン ×11


・フライングオクトパスの触手 ×16


・シャドーハイエナの牙 ×46


・魔物の毛皮 ×38


・魔物の骨材 ×75


・ゴブリンの腰巻 ×82


・ゴブリンのボロ剣 ×20


・ゴブリンのボロ槍 ×15


・ゴブリンのボロ斧 ×45


・ホブゴブリンの鋼剣 ×37


・ホブゴブリンのフンドシ ×53


・ホブゴブリンのブラジャー ×6


・オーガの打刀 ×3


・オーガの薙刀 ×5


・オーガの武者鎧 ×1


・美少女の秘蜜 ×2






なんとも膨大な量になっているのが分った。


ゴブリン系の物が多いのはあの附近の雑魚が如何に多かったかの証拠だろう。装備類が多いのはモノ的に重く、あの噴出に巻き込まれない位置にあったせいかもしれない。


ダンジョンゼラチンの数が少なめなのもそれで納得がいく。半分液体のアレの圧力が一番大きかっただろうし、噴出の中心として一番多く外に飛び出したんだろうな。




で、詰め直した時には気にしてなかったが、あの恐ろしい効果の麻薬の在庫数が洒落にならない。対して目玉素材のロイヤルコラーゲンの在庫は寂しいので、何故かちょっと損した気持ちなるこの不思議。




まあ、スライム系のは別枠として。雑魚の部位系素材の大半はほぼダンジョン農学の飼料用に提供か、良くても珍味な感じだろう。確か触手はあの不気味な見た目の割に加工すると酒飲みが喜ぶ肴になるらしいし。


家の親父も晩酌でたまに食ってるのを覚えている。


また所持してることに本能的な恐怖を感じるゴブリンの腰巻やフンドシも、錬金素材に重宝する特殊なキノコの苗床になるとか聞いたこともある。普通に売ればゴミ同然だが、売る相手を探せば結構高く捌けるものなわけだ。……そういうツテが無いのが困るのだが。


地味に驚いたのは……ブラジャー? えー、ホブゴブってメスが居るんだ。というか実物の見た目はどうなってんだろ? ホブゴブは何度か相手した記憶があるが、外見でオスメスの区別がつく個体は見たことがない。


というか、多少身長が伸びたゴブリンという印象なので外見は同じく腰巻一丁なのが普通なのだし。


……謎だ。




気になってブラの現物を手に取ってみたら、なんか豹柄っぽい毛皮の帯に過ぎなかった。形としては片方の肩から斜めに胸を覆う[ワンショルダー]タイプのビキニの上という感じか。


手にしたサイズからして確実にホブゴブ用には思えないので、もしかしたら自動サイズ調整の聞く魔道具装備なのかもしれない。


……ということは、微妙に高額な可能性もありなやつだ。売るにしても価格チェックをしてからということで、これはキープ決定。




ゴブリン系の武器類は武器として使うには耐久性が無さ過ぎる。だから大半は金属素材へのリサイクル物として処分になるのだが、これがオーガ以上の物となると話が変わる。


武器としても現代の合金製の物に性能は負けないし、時には魔力が付与されたレア物がある場合もあるからだ。


今回は残念ながら無かったが、武者系デザインの物は好んで使う探索者も多いので、そういう連中相手にネットオークションで捌きやすいものなので当りとなる。




で、最後に残ったのは、この鑑定名称からして怪しいモノたちだ。


なんというか……一部は魔物から出た物としての想像がつかない。


まあ鑑定は済んでいるし、その記録を確認すれば詳細は分るんだけどな。






【ロイヤルコラーゲン】


種別:食材。錬金素材。


・貴種スライムより精製された魔法食材。


・摂取吸収することで、その対象生物を魔素環境へと適応させる。また魂源情報を書き換え、その生物の精神内面に適した形状へと変化させる。


備考


・少量の摂取では生体状態の活性化した形状。主に老化未満の状態に固定します。


・適量、および過剰に摂取した場合、その生物の精神的な願望に則した新種族へと変換する場合があります。




【プリンセスコラーゲン】


種別:食材。錬金素材。


・ロイヤルコラーゲンの上位素材。効果は同質。


・魔素適性を下位素材より強化し、個体によっては魔法適正の獲得が可能。


備考


・摂取すれば確実に人間を辞めますので、ご利用ご使用は自己責任でお願いします。




【美少女の秘蜜】


種別:薬剤。イベント素材。


・クイーンローションの効果を吸収した雌性生物内で二次精製された特殊薬剤。


・精製した生物との魔力による精神共鳴効果を発現する。


・飲作用によって効果発現。


備考:1


・服用者に、この薬剤を精製した生物とのテレパシーパス回路を繋げます。


・互いの意志疎通ではなく、精製側からの思考感情を受信するものとして機能します。社会倫理上、効果を共有する互いの立場によってはセクシャルハラスメントに該当するものなので、ご利用の際は精製者の同意の元服用してください。


備考:2


・精製者・青杜ファンナ






……全部が全部、確実にヤバいやつだった。


単なる若返り薬と聞いてたロイヤルコラーゲンまで、その本来の効果の別の側面というオチだ。


というか、もしかしたら。


もう使ってるやつは自分が人間辞めたって気づいてないだけか?


いや鑑定系のスキルは随分普及してるものだし、機能効能に謎の多いダンジョン素材を社会に効率良く活用するため最も使われてるスキルでもあるわけで……、ならこの麻薬の効果が知られていないはずは無い、と思える。


が、ここで少し考え直した。




俺がグレイシップに付属する形で使える鑑定能力は、この制約が働いていることから、あまり正常な鑑定系スキルとは言い難い。


実際、確認してる俺自身が『随分意訳っぽい内容』と感じる部分も多いのだ。そしてこの意訳という概念。要は正確とか真実とかの意味合いとは似て異なるもんだったりもする。場合によっては部分的には完全に嘘となる要素も含めて全体的最終的に正しい内容を記している、という感じの概念なのだ。




「うーむむむ、なんか無条件で信用してたスキルだけど、こりゃ世間で通る鑑定機能との差異の確認は、しとかないと危険かもだなあ」




学校言ったら確認しよう。


よく観てた魔物図鑑の他にもアイテム図鑑とかもいろいろあったはず。


あれらの情報の内容は、昔の誰かが鑑定で得た情報がソースってのが大半なのだ。身近なアイテムを自分の鑑定で記録して、どういう差異があるかくらいは直ぐ確認できるだろうし。




……というか、それを通じて、一度自分の正気を疑っておこうと思う。




この超のつく危険物。『美少女の秘蜜』の鑑定内容の酷さが洒落にならんから。


意訳まみれと言うか意訳でしか無いというか、説明してある内容を簡潔にまとめたら単なる特定個人を対象の盗聴器でしかない。


ちなみに、二個あるこれのもう一つは、当然のように赤重コーラが精製者になっている。


というかだ、鑑定内容にある『イベント素材』とかどんな区分やねん!


こんなもん現実世界で表示していい内容ちゃうわ!


この鑑定が正しいって言うならっ、この世界はギャルゲーか!? もしくはエロゲーか!? 俺があの二人を攻略してキャッキャウヘヘしましょうな世界の主人公とかな設定なのかぁっ!?


……アリエナイ。


絶対ないわ、そんなもん。




ということで、現状、俺の鑑定能力には致命的な欠陥がある可能性を観たわけだ。


早々に修正か改善化か、または封印しないとヤバいスキルと自覚したので、明日は午後も探索無しの調査行動でと決めた俺であった。





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