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未確認な探索者っぽい物体のレポート  作者: うんしょっ、こらしょう
幕間・青杜レポート
10/18

01

本日分、一話目。


今回は幕間なので全体的に短めの全三話。


01➡16:00

02➡18:00

03➡20:00


と、なります。


日本式の古い慣習な感じでか、週の後半は探索実習しかスケージュールが無いにも関わらず学生は朝に教室へ集まり、HR(ホームルーム)の時間をとって簡単な業務連絡を受けてからが探索開始になっています。


実際のところ、オール実習の期間のHRへの参加は既定の成績さえ残せばペナルティも無いので、クラスの1/6程は居ないのが普通。出欠の記録は学生カードの登下校記録でチェックしているので、担任も教師のマニュアルだから出欠確認をしているのですし。


けど、最近のわたし達にはこの決まりが“すがるよすが”というもので、明らか避けられてる存在を物理的に確保するためのチャンスとして活用しているのです。




HRで連絡する内容も学内ニュースとして何時でもスマホで閲覧可能なものなので、『キーンコーン……』と終了のチャイムが鳴れば途中でも終了。


担任は毎朝お馴染みの『怪我なく謙虚に探索しろよー』と無関心丸出しの言葉でわたし達を送りだす。最初の頃はその言葉の終わりを合図にの行動としてましたが、徐々にそのタイミングは短縮されて、昨日は『謙虚』の“謙”の時点で、今日は『け』の時点で席を立ち背後の目標へと視線を向けました。




「目標確認っ、確保――っええっ!?」


「ざっ……残像、だと!?」




わたしと並びとび蹴りしてでも捕まえると踏み込みかけてたコ―ちゃん(コーラ)が、何処かのコミックで聞いたような驚きの言葉で固まってます。


いえ、固まっているのはわたしも同じ。


もともと、教室の一番後ろの、廊下に接する逃げやすい位置に座っている昏井(ぐれい)君ですが、流石に目の前に霞み消える残像を残すような速さで逃走されたことには……驚くしか無かったのですから。




「くうっ……なんか私、玩ばれてる感じがしてきた!」


「ううう確かに。こう毎日一枚上手な対応をされると、そうとしか思えないです」








わたしは青杜(あおもり)ファンナと申します。


高等二学年、17歳、小等学年時代からの親友赤重(あかしげ)コーラとコンビを組んで探索者として活動しています。


わたし達は本家筋の魔術士ほどでは無いですが魔力の素質に秀でていたため、探索者寄りで学ぶ学生では挫折しやすい女子にも関わらず、結構上位の位置をキープしての活動を続けれています。


ライオンより大きい魔物とガチで格闘ができる部分が女子としてのプライドに誇りと嘆きの二つを併せ持つ感情に触れたりもしますが、そこは将来の暮しに必要なものと……最近は割りきれてきた感じになりました。


それでも、そんな自分が頼れる存在が隣にいたらなあ……という願望は棄ててませんが。


ただ現状では、残念ながら同年代には期待できないものとして諦めてます。


彼らからは少々、発散されてくる性欲の視線がマイナス過ぎて、そういう対象には見れないのです。


いえ、それが全てダメとか。生理的に消えてほしいリスト入りの理由とはならないのです。けどタイミングというか、せめて最初にわたし側から好意のフィルター越しにでも見れない限り、ちょっと、そういう人はゴメンナサイという感情が消えないのでして。


いつも一緒に行動しているコ―ちゃんも同じ状況を共有しているせいか。そのあたりの感情は同じのようです。というよりも、男子視点でいう女子力はわたしの方が高い評価らしいので、むしろコ―ちゃんの方が悪い気分になってるでしょう。




でもね、コ―ちゃん。




胸やお尻が大きいのって、それはそれで苦労するの。


手を動かすにもいちいち胸がどっちに転がるかを意識しないとだし。


サイドステップとかな行動で起きる筋肉以外の反動も考慮してじゃないと姿勢は直ぐ崩すし。


もっと単純に言うと、全力で走ろうとするだけで左右に振られる遠心力を抑えるためにの苦労が凄くて、苦しい。


わたしが遠距離攻撃のスタイルで行動してるってのも、厳しい環境での活動で、少しでも無駄な負荷を減らしてたいってとこもあるんだよ。




「あいたっ!? コ―ちゃんっ、なんで急に叩くの?」


「あ、いや、悪い。なんか私の本能がファンファン(ファンナ)の後頭部に鉄槌をと叫んでたから」


「なにそれー!」




さすが武闘派だけど一応ヒーラー。神託系の直感が侮れない。




とにかく、そういう感じで。同年代の男子への興味が共に薄いわたし達だったのだけれど。ある日コ―ちゃんが一人の男子の話をしだした。


それが、わたしと昏井くんとの出会いだ。




わたし達は現状に悩んでいた。スキルも技量も順調に成長してダンジョンの42階層まで進んだけど、二人だけの活動に限界が近いという気持ちになっていたのだ。


戦闘力、探索力、少ない人数で蓄積する精神的疲労。そういう総合的な意味での限界だ。この際、戦闘力は増強は捨てても疲労の分散だけは何とかしたい。そうしないと、実力の足りる状況でも凡ミスで致命的な失敗を招きそうだったから。


その相談の中で出たのが、昏井くんだった。




彼の到達階層は34階。わたし達に比べたら10階層近く浅いものだが、問題はそれをなした時期にある。ほぼ高等学年に上がって直後の記録なのだ。同じ時期のわたし達は、高等学年最初の関門になる25階層のボスも倒せていない頃の話だ。


コ―ちゃんいわく、昏井くんは何時でも到達階層を伸ばせるが、それをしてないだけなのだという話だった。


その根拠となったのが、『オーク肉』。


34階層にはオークの上位種がいて、これを倒して特殊な資格スキルを得ると、オークからのドロップ率が劇的に上がるのだそう。


詳しい習得方法は公開されてないそうだけど、昏井くんがこの階層に到達して以降は活動する階層が浅層へと戻ったということで、需要が途絶えないオーク肉を得る活動中心になったのではと、予想したそうだ。


わたしも気になって調べてみたら、コ―ちゃんの話の信憑性が大きくなった。


学内のドロップ品買い取り窓口にて、彼が卸すオーク肉の数は疑いようもなく異常。さらに言えば、その行動がほぼ毎日というペースも異常。総売却額自体は上位に行かないのでランキングの中間に埋もれてしまうが、品目別でオーク肉を検索すれば不動の一位に昏井くんの名があったのだ。しかも一学年の夏以来、ダントツで。




もう、わたしの中にコ―ちゃん説を疑う気持ちは存在しない。




そしてわたし達の、昏井くんスカウト作戦がスタートした。





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