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その英雄、機械仕掛けにつき  作者: 24
第一部 憎むべき隣人たち
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報告書08 想いの発芽

マキナ視点より

 大型四輪が丸ごと駐車できるような大きさの、行きずりのガレージ。しとしとと降り注ぐ雨の音を聞きながら、マキナは手持ちぶさたに立ち尽くしていた。


 眼下には一人の少年が熱病の様子で倒れており、それをリスティが必死で看病していて。普段は彼女が使っている毛布で少年の身を包んでやりながら、大型四輪の設備で温めた粥を飲ませて身体に熱を取り戻そうとしている。相手は会って五分もしていない少年と思えば、非常に手厚い介護だった。


 リスティの故郷を目指しての道程と言いたいところだったが、先の集落や町で起きた事態のために、予定の航路からは大きく外れていて。とにかく自分たちが今どこを走っているかも危うく、とにかく近くに大きい町がないと走っていた。


 その道中に雨が降り、飲み水が確保できると喜びながらも、走るのは危険だと雨宿りが出来る場所を探したところ、倒れている少年を見つけた。まだ辛うじて意識を保っていた少年の誘導で、この廃墟のガレージへとたどりついていた。


「すいません、マキナさん。汗を拭く布をもう一枚」


「あ、うん。ちょっと待っててね」


『どうぞ』


「はいどうも……リスティ、ずいぶん手慣れてるわね」


「え? いえいえ、そんなことないですよ、警備隊員としては初歩ぐらいです……まあ、病気の弟妹にもよくやってあげたので、少しは」


 他の住民から見えないようにイユから受け取った清潔な布を渡した程度でも、リスティはまるで命を助けてもらったかのように感謝して笑う。その笑顔はマキナがしている、ただ人間を安心させるための笑顔の真似とは違う、真実の笑顔だ。


 それだけではない。あの夜、リスティが自慢げに話してくれた彼女の弟妹たち。その誰もを心の底から誇りに思っており、本人は気づいていないかもしれないが、自然と親愛に顔がほころんでいる。


 しっかりとした対処をしているにもかかわらず、褒められなれていないのか、今まさにしている謙遜の笑顔も。親愛の笑顔も。感謝の笑顔も。そのどれもがマキナにはすることが出来ない表情だ――マキナが考えているなどとは、まったく考えずにリスティは必死の看病を続行する。本来なら病気に感染しないマキナが代わるべきなのだろうが、リスティの手際が遥かに勝るためにマキナは手持ちぶさたに戻る。


「……大丈夫? リスティが病気になっても困るし、私が代わるよ?」


「大丈夫です。この程度で病気になるほどやわじゃありませんし、たまにはわたしも役に立たせてください」


「そう……」


「わざわざありがとうございます。マキナさん、やっぱり優しいですね」


 触らぬ神に祟りなし、という旧文明と人間たちが呼ぶ時代からの言葉がある。その言葉に従うように、少年と同じく廃墟に隠れ住む人間たちは、病気の少年やリスティに関わろうともしない。


 とはいえ、それがこの世界において正しいことだろうし、リスティもそんな人間たちを責めることはない。眼中にないというべきか、ただ黙って看病を続けていて。


 それでもマキナのことを「優しい」などと言うことを忘れない――ああ、優しいなんて言葉はあなたのためにあればいいのに、そんなイユのような皮肉をリスティはつい思考してしまう。すると看病された少年が、今までとは違う動きをして。


「ん、んっ……」


「……起きましたよ! 大丈夫ですか? 分かりますか?」


「……お兄ちゃんは……どこ……?」


「お兄ちゃん? ううん、あなた一人しか」


「お兄ちゃん……《機械》に……連れていかれて……探したんだけど……」


 そんなリスティの必死の看病が実を結んだのか、寝ていた少年がようやく目を覚ました。とはいえ意識は虚ろなままなようで、要領を得ないうわ言がただ呟かれた。


 兄はどこか。その問いにマキナとリスティは視線を交差させるものの、どちらも少年は一人しか見ていない。周辺を観測しているイユからの言葉もない以上、マキナたちが見落としたという訳でもなさそうで、放れていた住民の一人がおずおずと話しかけてきた。


「その子には年の離れた義理の兄がいて……さっきこの廃墟に《機械》が来た時、囮になって連れ去られたんだ……」


「それをっ……いえ、連れ去られたんですか? その……《機械》に?」


「殺されたんじゃなくて?」


「マキナさん……!」


「……ああ。足が何本もある、上半身だけ人の《機械》。そいつが連れていった……」


「……お兄ちゃん……」


「……マキナさ――」


「私が探してくるね。その義理の兄さんの特徴かなにか、教えてくれる?」


 《機械》に連れ去られるという自分と同じ経験からか、言葉を濁してしまうリスティの代わりに、はっきりと聞いたマキナに住民は苦々しい表情を隠さないで頷いた。どうやら少年の義兄を見捨てた罪悪感はあるようで、ある意味それも人間らしくてマキナには好感が持てる。


 そして人間を殺害するではなく連れ帰るとは、明らかに一般的な《機械》の行動ではない。ただし以前に出会ったあの音楽好きの機械のように、妙な行動をする《機械》はわりと珍しくない。なにせマキナがその一人だから、と自嘲しながら。


 とはいえそれならまだ救えるかもしれないと、リスティの言葉に被せて義理の兄さんとやらの特徴を聞きつつ、マキナは大型四輪の中に入っていく。もしもリスティの時と同様に、リスティが呼ぶ《寄生型》が宿主を欲しがっているならば、少し急ぐ必要がある。


「マキナさん! わ、わたしも……」


「リスティがいなくなったら誰がその子を診るの? ……他の誰かが面倒を見るならいいけど」


「……隠れる場所の提供ぐらいはしてやるよ」


「っ……はい。こっちは任せてください!」


「よろしい。リスティはここを守ってね、必要そうな物資は置いてくから」


「マキナさん、イユさんも……お願いします」


 大型四輪から適当な食料やタオルケットを置きながら、マキナは住民たちの方を見てニッコリと微笑むと。住民たちは目を合わせようともせず、こぞって廃墟の中に入っていく。ただし一人だけ隠れる場所を提供してくれる、非常に親切な住民がいたのは幸いで。


 病気の少年を見捨てるわけにも、戦場に連れていくわけにもいかず。リスティは少し悩んでいたようだけれど、少年を背負って住民に着いていく。イユとの通信アクセサリーもあり、光刃も忍ばせているし、リスティは大丈夫だろうとマキナは大型四輪の扉を閉める。


 リスティの言葉を背に受けながら、大型四輪は雨の中をそこそこの速度で走り出した。


「イーユー。もっとスピード上げて」


『了解。時に、リスティと離れられてよかったのでは』


「なに言って……あんたにごまかしても仕方ないか……ちょっとね、思った」


『リスティが嫌いなのですか?』


「そんなことないわよ! 初めて人間を個人として見て、どう扱っていいか分からなくて……でも、すごくいい人間だってのはよく分かるし」


『では?』


「……今日はいつにもまして意地悪じゃない、どうしたの?」


 目的の《機械》がどこにいったかの見当は、周辺を観測しているイユからは大体ついていた。このコンクリートまみれの大地でも、《機械》が活動拠点としているところは限られる。そこを順番の回っていけばいいだけの話だ。


 とはいえそんな危険な真似をする上に、雨中でスピードを出すのが嫌なのか、言葉には出さないものの大型四輪の速度が雨中ということを考慮しても遅い。イユからすればやる気のない話だということは分かっているが、有無を言わせず速度を上げさせると、反撃のように突きつけられたくない言葉を抉られる。


 マキナは今、確かにリスティと離れて少し落ち着いている。しかして嫌みったらしくイユが問いかけてきたように、リスティという少女を嫌っているわけでは断じてない。むしろ人間としては、青臭くて優しくて目標があって、珍しいタイプの人間で見ていて楽しい。人間を守るべき対象でなく、そう思ったのは初めてだ。


 ただしそんな彼女の笑顔を見て、説明できない気持ちになることがあるのも確かだ。リスティが個人として見た初めての人間なら、そんな気持ちになるのも初めてで。


 ……ただマキナが今一番イラついているのは、やたらと突っかかってくるイユだったが。


『いえ。今までのマキナにはそんなことは、ありませんでしたので』


「……だから困ってるんじゃない……」


『ならばそれは、マキナが人間に近づいている証拠なのでは?』


「は?」


『到着しました。恐らく、ここに目標はいるでしょう……人間を救う機械だった時には、まるで感じなかったことを感じる気分はどうです?』


「……あんまりいい気分じゃないわね」


『参考にさせていただきます』


 リスティに会うまでは、ただ何も考えずに人間を救っていればよかった。こんなことを考える必要はなかった。しかしイユは、マキナが感じているそんなことが、人間に近づいている証拠だと語る。さらに問い詰めてやろうとするも、どうやら《機械》の拠点にたどり着いたようだ。


 マキナは嘆息しながら大型四輪から出て、雨の中に躍り出る。兄を連れ去ったという《機械》にいつ接近してもいいように、初めからマキナも『本来の姿』に換装したかったものの、あの姿では人間を助けることは出来ないのが悩みどころだ。


 中ほどから大きく折れたビル。その入口に、男ものの靴が落ちていて。まだ新しいもので、恐らくは連れ去られた兄のものだろうと、マキナは拾いながらここで当たりらしいと考える。


 かつては電気も通じていて自動であったドアを、無理やりにこじ開けていく。電気も通っていないため、中は当然ながら暗かったものの、マキナには特に問題もない。視界を暗視に切り替えると、エントランスには瓦礫の他に中小様々な《機械》の残骸が落ちていて。それもまだ新しく、今しがた破壊されたもののようだ。


『二階に機械の反応、一体です』


「生体反応は」


『同じ位置です』


「了解。いったん戻る」


『いえ、近づいてきます。接敵まで五秒』


 マキナを端末に建物内の索敵を行ったイユの報告からすると、恐らくこれら《機械》を部品として散らばらせたのは、その兄を連れ去ったという《機械》と同型種だろう。その反応が人間と同じ場所にいるというのならば、やはり換装せざるをえない。


 そう判断したマキナが一度建物の外に出ようとした瞬間、その相手が二階から眼前に降り立ってきていた。マキナたちが建物内を索敵していたように、相手も索敵していたのだろうか。いや、囮となった兄以外の隠れた住民を見つけられなかった索敵能力なら、この建物に入ってくる者を見張っていただけか。


 住民から聞いていた情報の通り、人間の上半身に蜘蛛のような下半身で構築されている。両手にはそれぞれチェーンソーを持っており、本体に繋がっているケーブルで電力を供給しているようだ。明らかに友好的なようには見えず、無駄だろうがマキナはコミュニケーションを試みた。


「こんちは。私はマキナっていうんだけど、あなたは?」


『わ、わたし、は……』


「ここに人間がいるみたいなんだけど、知らないかな?」


『人間……人間……わたしは……』


「……やっぱりダメかな」


『わたしは……人間を……守る!』


「…………」


『後退してください、マキナ』


 マキナの問いかけに対し――リスティに倣って《多脚型》とでも呼ぶべきか、相手は何も答えない。正確には受け答えが成り立たないというべきか、コミュニケーションを諦めてさっさと排除しようと、マキナが外に出ようとすると。


 私は人間を守る――その言葉を聞いたマキナの動きが、一瞬だけ止まってしまう。


 イユの警告が室内に響き渡るとともに《多脚型》のチェーンソーが作動し、伸縮した腕から放たれマキナの腕をあっさりと切り裂いた。


「……人間を守るんじゃ私は敵よね」


『人間を……守る……!』


「それはもう聞いたわ」


 目前の《多脚型》の目的は人間を守ること。確かにその目的ならば、マキナは敵でしかないだろうと、切り裂かれた片腕を拾いながらマキナは他人事のように思った。あの廃墟から少年の兄を連れ去ったのも、自分の手で人間を守りやすくするために。


 とはいえこの恐らく食事もないだろう環境で、人間が生きていけるとも思えない。ただ殺すと守るを勘違いしてバグを起こしただけの個体だろう。


 拾った片腕を投げつけて目眩ましとしながら、マキナはとにかく建物の外へ走り出した。しかして逃がしてくれる気配はないらしく、イユが用意していた大型四輪へと駆け込んでいく。


『いい格好ですね』


「うん、手を外す手間が省けた。よろしく」


『はい』


 大型四輪が《多脚型》に追われている間に、マキナはさっさと済ませようと衣装棚の扉を開ける。先程チェーンソーから切り裂かれた片腕を含めた四肢を、マジックハンドが張りついて新たな――いや、本来のものに換装する。次いで胸部や胴部の装甲がついた後に、最後のパーツである仮面が差し出される。


 動作確認も兼ねているのか、この仮面を付けるのはイユではなくマキナだ。今までは何とも思っていなかったが、まるで「優しいマキナ」から「機械の巨人」になれ、とマキナ自身に選ばせているようだ。


 ……そんな妙な哀愁を覚えてしまったのも、リスティと出会ったからなのだろうか。一瞬の躊躇とともに、マキナは本来の姿である機械の巨人へと換装を果たした。


 後退する大型四輪から飛びだし、雨を全身に浴びつつ《多脚型》の前に機械巨人として立ちはだかる。突如として現れた巨人を警戒してか、《多脚型》がその場に立ち止まった隙に、大型四輪から射出された機械槍を手にとった。さらに今回は槍だけではなく、《多脚型》の持つ小型チェーンソーと同じものも射出され、切っ先に取り付けることでリーチのあるチェーンソーへと変貌する。


 しばしのにらみ合いの後、目前の機械巨人が脅威だと判断した《多脚型》が、その素早さを活かして距離を詰める。振りかざされるチェーンソーに対し、機械巨人はバックステップで避けて距離を取りながら、槍型チェーンソーを突き刺した。


 ただし《多脚型》も、それをまともに食らうわけもない。当然のように槍の切っ先を見切ってみせると、手持ちのチェーンソーで防いでみせて。チェーンソーとチェーンソー、無限軌道のぶつかり合いに、周囲にはけたたましい破壊音が撒き散らされる。


 その状況を先に打開したのは《多脚型》。もう片腕に持っていた小型チェーンソーで、槍の持ち手部分を切り裂くことで、切っ先にあたる部分のみ切り落とした。得物が槍ではなくただの棒となってしまった機械巨人は、たまらず槍だった棒を高く掲げながら退いた。


 その退いた隙を逃すまいと接近した《多脚型》は、彼自身が命取りになることを気づけなかった。機械巨人が高く掲げた棒の先端に、新たな武具が射出されるとともに装着されていたことを。


 もはや機械巨人が持っている武器は、槍でも棒でもなく両手斧。片手斧を大型四輪から射出し、棒の先端に装着することで、新たな武器として換装したのである。


 これは思考回路を大型四輪を操作するイユと連動し、武器の射出も含めて、タイムラグなく車両との連携を可能とするために出来た芸当である。そんなことを知るよしもない《多脚型》が、機械の身体を難なく崩壊させる斧に気づいた時には、もう手遅れだった。


 処刑人が振るう鎌のように。上段から振り下ろされた両手斧による一撃は、小型チェーンソーによる防御を無視して《多脚型》本体へと叩きつけられた。


『人間を……まも……』


『警告。対象はまだ沈黙していません』


『人間……にんげん……』


 ただし小型チェーンソーによる防御も無駄ではなかったのか、本体を完全に破壊するまでには至らなかったようだ。イユからの警告も発せられたが、もう見るからに《多脚型》は戦闘できる状態ではなく、内部回路を晒しながら火花をあげている。


 トドメを刺そうと両手斧を振るった機械巨人だったが、それは予想外にも空を切った。目前にいたはずの《多脚型》は、その脚部を活かして近くの建物の側面を走っていた。


 明らかにその損傷度合いでは不可能な動き。事実、動く度に部品は自壊していっており、もはや機械巨人が何の手を加えずとも沈黙するだろう。とはいえ放っておくわけにもいかないと、機械巨人も脚部のローラーを起動した高速移動で、道路から《多脚型》を追っていく。


『どうやら拠点だったビルに戻るようです』


 イユの予想は正しかった。そのまま元の拠点に戻ってきた《多脚型》は、建物の外壁から割れた窓に飛び移ると、最初にいたであろうビルの二階へと戻っていた。


 そしてそこは生体反応があった場所――つまり、さらわれた少年の義兄がいるところだ。機械巨人もビルの二階近くの破片にワイヤーを伸ばすと、跳躍して地上から即座に二階へと躍り出た。


「ま、また来た!?」


『特徴が照合。さらわれた人間です』


『わたしは……にんげんを……まもる……』


 そこにいたのは、手足を拘束されて動けなくなっている人間。恐らくは連れ去られた少年の義兄とやらで間違いはないだろう、拘束されている以外は特に外傷も見当たらない。


 そしてその少年に、手を伸ばすようにして自壊している《多脚型》。まるで少年の元に戻るために、命の限りを尽くしたかのような有り様だった。安全な場所に拘束するという方法はどうあれ、マキナと同じように人間を助けようとしていた機械の、あまりにも人間らしい最後だった。


 その残骸を躊躇なく踏みつけて完全に機能を停止させると、機械巨人は連れ去られた少年へと向かっていく。機械巨人からすれば、少年の拘束を解いてやろうと、ただそれだけのつもりだった。


「来るな! 来るなぁ! うわあああぁ!」


『まずマキナに戻らなくては』


「…………」


 少年は拘束されながらも、命の危機に身体を転がして機械巨人から逃げ始める。少年の目から見れば、《機械》どうしの同士討ちから、今度は機械巨人が自分を襲おうとしているようにしか見えなかったのだろう。


 少年の行動とイユの警告によって、機械巨人は今の自分がマキナではないのだと思い出して。ピクリと、少しだけ動きを止めた後、二階の窓から飛び降りて待機していた大型四輪と合流した。


 そこからは……簡単な話だ。機械巨人からマキナの姿へと換装を果たした後、少年を助け出してやって拠点の廃墟へと戻っていった。そこでちょうど雨も止んだために、兄弟と別れてその拠点を走り去っていった。


 これまでにも幾度となくやって来たことだ。リスティという同行人が、新たに加わったことを除けば。


「兄弟二人、再会できてよかったですね!」


「うん、リスティには看病任せちゃってごめんねー」


「いえいえ、たまには役立てて……マキナさん、どうかしました?」


「え? あー……うん、ちょっと疲れちゃったかな?」


「では、見張りとかはわたしがやっておきますから! ゆっくり休んでてください!」


「あ、ありがと……そうするね」


 そうして走る大型四輪の車内。お互いの仕事を果たしたマキナとリスティは、車内に座り込んで普段通りに休んでいた。そう、マキナは普段通りにしていたつもりだったが、リスティにはどうしてか疲れているなどと言われてしまって。


 そこからはただ流されるまま、カーテンで仕切られたスペースまで誘導されてしまう。着替えなどのために作られた手狭な場所で、特にそういったプライバシーが必要のないマキナにとって、ここで暮らしているにもかかわらず初めて使う場所だ。


 機械なんだから疲れることなんてないのに、と内心で思いながらも、マキナはそのスペースでゆっくりと座り込む。


 リスティへの複雑な感情。人間を救うだけだった自分への感情。ただ破壊するだけだった《機械》 への感情。それら全てがごく最近になってから、初めて気にしたことばかりで。それらの処理に困っていることは、疲れているといっても言いかもしれない。


 生きる意味を見つけられることを――以前に出会った、そして壊した《機械》のカツはそんなことを言っていた。人間を助ける、と決意しているリスティが眩しくて、自分もそうなりたいと思ったけれど。


「何も考えてない方が……楽だったな」


心の底からスカッと爽やかな話が書きたくてしょうがねぇぜ

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