報告書02 祭りの誘い
大型四輪はキャンピングカーなイメージで書いています
かつて人類は、自らが起こした発展に自滅した。それでも生き残った人類はその行いに恐怖し、過ぎた発展を禁じながら生活を再開した。
ただし人類が起こした愚は、その程度のみそぎでは許されなかったらしく。過ぎた科学文明に頼らず生活を始めた人類を襲ったのは、人類が造り出した人類を殺す《機械》だった。同時多発的に襲われた人類は、過去の戦争もあって交流もままならず、ただ自らの身を守ることで精一杯となった。
それからどれだけの年月が流れたのかはわからない。人類はかつての科学を忘れ、ただ《機械》と戦う日々を送っていた。
……《圏外》。人類が文化的な生活をしている壁の外、荒らされた大地の総称である。ただ荒廃しただけではなく、人類を殺戮することを目標にした《機械》――自律稼働する金属製の生き物の総称――の活動拠点であり、大陸の大半を占めた死の大地といっても過言ではない。
とはいえそんな場所だろうと、人間というのはたくましく生きていくものなようで。
「……なにこれ……」
そんな縮図を目の当たりにして、本来ならば感心するべきか感動するべきか、なんにせよ良い感情を覚えるべきなのだろうけれど。壁の中である国の人々を守る警備隊員の仕事に就いていたリスティとしては、目の前にある機械の群れに吐き気を催すほどとなっていた。
「いやぁ壮観だねぇ」
「それはマキナさんはそうでしょうが……」
眼前にある人間が運転する輸送用の機械の集合地点を見て、腕を組んで仁王立ちしたまま立っているマキナと比べて、リスティはげんなりと座っていた。機械とは敵だと教えられ、実際にその通りであったリスティからすると、人間が利用しているとはいえ機械の群れというのは見ていて気分のいいものではない。リスティが今も腰かけている大型四輪や、光刃を発生させる柄のように、意思はなくただ使われているだけなのだから、別に敵という訳ではない――と自己暗示していたのだけれど。
「じゃあ私は集会に行ってくるから、イユと仲良くね! えっと……」
「リスティです……はい」
『お任せを』
未だに名前すら覚えてくれない同行人と、手首から聞こえてくる機械音声は、リスティをさらにげんなりとさせるのに充分だった。
そもそも国に帰るためにマキナの大型四輪に乗せてもらう、という申し出を受けたリスティが、どうしてこんなところにいるのかとなると話が少し遡る。仲間たちを可能な限り丁重に葬った後、マキナの申し出を受けて大型四輪に乗ったリスティは、そもそもどの方向に行けば自らの国に面した壁に行けるかも分からなかったのだ。
「そういう時はね、ターミナルで座標を買うんだよ」
「ターミナル? 座標?」
機械巨人の姿から始めて会った時と同じような、黒いぴっちりとした服装に身を包んだマキナ――今から思えば、身体の機械部分を隠しつつ機械巨人の装備の装着に邪魔にならない服装なのだろう――から、したり顔でそう解説されるも、文字通り右も左も分からずペタりと座り込むしかないリスティには、さっぱりと理解できないで。
「時たま近くにいる人で集まってね、情報交換したり、物資を交換したりするの。目的の場所がどこにあるか、とかね。コーヒーいる?」
「なるほど……あ、ありがとうございます」
はい、コーヒー――とマキナに黒く濁った泥水のようなものが入ったコップを手渡され、リスティは苦笑いしながらも納得する。どうして何がどこにあるかも分からぬこの場所で、優雅かどうかはともかく旅が出来ているのかは、同じような者たちとの緩い協力関係が成り立っているのだろう。大がかりな基地などを用意するのではなく、破壊されても簡単に直せるほどの集団にすることで、反比例するように柔軟性に富んでいるのだ。
「では、いただきます」
「はい召し上がれー」
そうしてリスティは思索とともに淹れてもらったコーヒーを口にすると……淹れてもらった分際で口にするのははばかられるのだが、とても苦く、熱い、有り体に言ってしまえば不味い。ただ目の前のマキナは、そういったコーヒーが趣味なのか顔色ひとつ変えずにごくごくと飲んでおり、決して常人には飲めない代物という訳ではないようだ。彼女が常人なのかということはともかく。
『ミルクと砂糖をどうぞ』
「あ、どうも」
満足げに飲み干しているマキナを前に、ご馳走してもらった分際で文句をつけていいのかと、葛藤するリスティに素晴らしいタイミングで助け船が出された。差し出された機械の腕から好み通りにミルクと砂糖をいただいて――から、リスティはもう一度なにが起きたのか理解してから硬直する。
『はじめまして、リスティール。僕はイユといいます。以後、お見知り置きを』
「ああ……その、長いのでリスティでいいです……」
『ではリスティと。僕はこの車……あなた方の言うこの大型四輪の管理をさせていただいています。よろしくお願いします』
礼儀正しく一礼するマジックハンド――というとよく分からない代物だが、リスティ自身も理解できずに名前の訂正に留まったので、それ以外に言いようがない。目覚めてからこちら、様々なことが起きすぎていて、リスティの容量が足りていないということもあるが。そのマジックハンドには見覚えがあるというのも、パニックを起こさないで済んだ一要因であるのは違いないだろう。
「イユには驚かないの?」
「いえ、驚いてます。驚いてますが、その」
『人間はパニック状態が連続して起きるとむしろ冷静になるという矛盾しつつ事態を解決する機能があると聞きますが、そうでしょうか?』
「ああ、はい、まあ、そうです……」
おかげさまで自分好みにしたコーヒーを飲みつつ、リスティは二人の機械の言葉を適当にスルーする。スルーせざるを得なかったというか、とにかくあのイユと名乗るマジックハンドは、本人(?)が言った通り、この《大型四輪》そのもので。先程の戦いで、マキナが声をかけていたのは彼(?)であり、大型四輪の走行と機械巨人への換装、武器の射出をしていたのだろう。
どうにかそこまで考えることが出来るまで回復したリスティは、ミルクコーヒーの砂糖いりを飲み干すと、ずっと気になっていたことを問いかけた。
「マキナさんは……いえ、お二人は何者なんですか?」
『二人……と呼んでくれるのですね。あなた方が憎んでやまない機械を相手に』
「うん。人間か機械かって質問なら、機械だよね」
二者二様の答え方ではあったものの、問いに対する答えは同じものだった。つまり『自分が機械であることに間違いはない』という。ただしリスティにとって機械とは、くどいようだが人間を殺戮する理解できない敵であるはずだったが、目の前の二人がそうだとはとても思えなかった。
「……お二人はわたしの命の恩人です。あなた方が《機械》だなんて、思いたくありません」
「思わなくても機械は機械なんだけど……まあ、あなたがそれでいいならそれで!」
「……で、では、どうして機械が人間を助けたんですか?」
「あれ? それは言わなかったっけ?」
マキナが困ったように笑った通りに、リスティがどう思おうと彼女は機械だ。それは、もう一度あの衣装棚に入った瞬間、怪我や剥がれた顔面の皮膚が治療された……いや、新しい部品に補充されたことからも明らかだ。それでも食い下がるリスティに、マキナはとぼけて言い返す。
「他人が困ってたら、助けるのが当たり前でしょ?」
『僕はマキナの指示に従うだけですので、人助けに興味はありませんが』
「はー? 知ってるイユ、そういうの人でなしって言うんだよ?」
「…………」
やいのやいのと騒ぎ立てる機械たちを後目に、リスティはマキナの言葉はを反芻する。他人が困ってたら、助けるのが当たり前だと――リスティも、そうした気持ちから警備隊員になったのだから。だから、彼女たちを信じたい。彼女たちは、人間を殺す為だけに存在する機械などではないのだと。
彼女たちのように《機械》らしからぬ機械がいるのならば、もしかすれば《機械》と戦わずに済む未来もあるかもしれない。今まで考えたこともなかった未来だが、マキナと会話していると、少しだけそんな未来を希望してしまっていた。
「ほら、これあげる」
「え?」
「おそろいのアクセサリー。私だと思って、大事にしてね」
「はぁ……」
そうしてボーッとしていたリスティに、マキナから腕に巻けるアクセサリーがペシリと投げ渡された。ただしリスティの知るアクセサリーとは違い、明らかに機械仕掛けのものであって。マキナも同じものを装備しているところを見るに、恐らくイユと通信を行うためのものであろうか。
『かっこつけた告白が届かないほど空しいことはありませんね』
「身体もない奴は告白以前の問題でしょー」
「あー……ありがとうございます」
――そうして。今回のターミナルによる情報交換開催の連絡を受けて、イユを走らせ向かった先が、無数の車両型機械というリスティにとっての悪夢を見せつけられることとなった。物々交換にでも使うのか、マキナは《機械》の部品やらが入ったバッグを持ちながら情報交換の場に向かったため、リスティはイユと待ちぼうけだ。
『リスティ。仲良くね、とのことですが、あいにく世間話をする機能は僕にはありません。何か質問はありますか?』
「質問……車両型機械って、みんなあなたみたいなんですか?」
『あなたみたい、というのがこうして会話できるかというなら、珍しい部類に入るでしょうね』
「じゃあ……《機械》たちも?」
『はい。彼らは人間とコミュニケーションを取りません』
マキナの言葉を律儀に受け止めたのか、腕のアクセサリーからイユの声が届く。彼の本体とも言える大型四輪はリスティの座る椅子からすぐ背後にあるのだが、アクセサリーの動作チェックも兼ねてこちらで話したいらしい。おかげでリスティは、一人で自分の腕に質問をぶつける不審者以外の何者でもなかった。
『ああそうです。僕からも一言ありました』
「何です?」
『いつぞやのコーヒーの件ではありませんが、マキナには思うことを言った方がいいですよ。彼女には、人間の気持ちなど分かりませんから』
「それ、どういう――」
「ねぇ君!」
マキナが人間の気持ちなど分からないと。わざわざ警告してくる理由を聞き返そうとした瞬間、全くの第三者から声をかけられる。リスティが顔を上げてみれば、サングラスをかけた男性らしく、イユが反応しないところを見るにマキナの知り合いという訳ではないらしい。
「誰かと待ち合わせ? それまで俺の車とかどう?」
「えーと……」
今の状況は、いわゆるナンパというやつで。リスティにとって初めて起こった出来事だったが、あいにくドキドキするようなことはなかった。傍目から見て今のリスティは、自分の腕と会話をしている上に、警備隊員服が目立つこともあってそれを隠すマント姿だ。流石にこれに真剣にときめく男はいまい。
一応、マキナから彼女の着ている服のスペアがあるから譲る――という申し出は受けたものの、あの身体に張りつくほどにぴっちりとした服を着れるほど、リスティは自分に自信があるわけではなく。そんな思索をしつつ、ポカンとサングラスの男の顔を見ると、どうしようもないほどに気になる疑問が頭に浮かんだ。
「あの、あなたは人間ですか?」
「は!? そりゃ人間だよ? 見ての通り?」
サングラス男の明らかな狼狽を見るに、どうやらこちらの世界でもマキナのような存在は珍しいようだ。気になっていたことが解決したのは何よりだったが、今の質問によって、リスティ本人からしても明らかに近寄りたくない人間に磨きがかかった。それでも男は諦めないのか、面白い子だなぁ、などと苦笑いしながらもまだ離れようとしない。何が彼をそこまでこのマント女に駆り立てるのだろうか。
「俺たちの町で今夜には祭りがあるからさ。よかったら来てよ。一年に一回ある、すごい綺麗な祭りでさ!」
「あの、わたしは――」
「あー! お兄ちゃんいたー!」
「げっ……」
とにかく今のリスティにこんな誘いに乗っている暇はなく、かといって初めての経験にどう断っていいものか悩んでいると。どこからか耳をつんざくような高音とともに、サングラス男の隣にその腰ほどまでの少女がぶつかってきた。少女は見た目より体幹が強いのか、それともサングラス男が見た目より貧弱なのか、衝撃に耐えられず男は転倒する。
「また女のひとでサボって! もうつみこみ終わっちゃうよ!」
「サ、サボってたわけじゃねーし! この人を祭りに誘ってたんだよ! ……ですよね?」
「ごめんなさい。お兄ちゃんにはあたしからしっかり言っておきますから。似合わないサングラスかけて、いつもフラれてる情けないお兄ちゃんなんです」
「そんなこと大声で言うんじゃねーよ!」
そのまま転倒した兄を心配するでもなく少女は説教を始めていき、周りに聞かれるなどといった配慮など存在しない二人の掛け合いから、リスティにも大体の事情は察せられた。サボりがちな兄にしっかりものの妹の姿に、リスティは故郷の弟妹たちのことを思って微笑んだ。
「ううん、本当にお祭りに誘われただけだから……仲がいい兄妹なんですね」
「べ、別にそんなことねーっすよ……それより今のいい笑顔っすね、もう一度……」
「もう! お姉さんの優しさに免じてゆるしてあげるから、帰るよお兄ちゃん!」
「あ、ちょ、これウチの座標ですから! よければ祭り、来てください!」
リスティも少し親近感がわいて話し出そうとしたものの、少女らしからぬ力でサングラス兄は引っ張られていってしまう。最後に機械で出来たカードのようなものを渡されつつ、遠ざかっていく二人に手を振って別れることとなった。
「……この座標ってカードはなんですか?」
『そのカードを読み込むことで、彼らの町の現在の場所が分かります。読み込んでおきましょう』
「お願いします」
空気を読んでか兄妹との会話の時には口を挟まなかったイユに、渡されたカードのことを聞けばすぐさま返答が来る。それとともに背後の大型四輪から、控えめにマジックハンドが伸びてくるので、お言葉に甘えて任せておくことにして。しかしリスティの目の前に広がる光景は、機械だらけということに目を瞑れば、先程の兄妹のように活気ある人間たちで溢れていて。
警備隊員として働いていた頃は、国を守るのに必死でこちらについて考えたことはなかったが、機械が跋扈するこちらでも、たくましく人が生きている事実に――リスティはどうしてか、とても嬉しくなった。
「お待たせー!」
それから荷物を空にしたマキナが帰ってくるのには、そう時間はかからなかった。やはりサングラス男の趣味が悪かったらしく、それからマント女なリスティに声をかけてくるような相手はおらず、こちらの世界についてイユにニ、三の質問をしたのみだ。そこで今更ながら、こちらの世界にもしっかりと人は暮らしているということが分かったのだけれど。
「どうでしたか?」
「うん、バッチリ。イーユー」
そろそろターミナルも解散する時刻とのことで、リスティは帰ってきたマキナとともに大型四輪の中に入っていって。ずっと巻いていたマントを正真正銘の衣装棚に入れていると、マキナは戦利品らしい座標カードを適当に放り投げていて、すぐさまマジックハンドが回収していく光景が目に映った。
「ああ、今のはね」
「座標カード、ですか?」
「そ、よく知ってるね」
「ええ、さっき――」
リスティにこちらの文化を先に言い当てられたからか、珍しく驚いたマキナに先程の話をしていく。待っている間にサングラス男に声をかけられたこと、その男に祭りがあるんだと座標カードを渡されたこと、男は妹らしい少女に連れていかれたこと、など。そんな毒にも薬にもならない話のはずだったが、話せば話すほどマキナの瞳が輝いていく……物理的なものではないと思いたい。
「私がいない一瞬でナンパなんてやるじゃなーい。それで? お祭り? 行くの?」
「行きませんよ!」
『座標解析、終わりました』
そんなくだらない話も、イユの解析までの暇潰しにはなったようだ。リスティたちのいる生活スペースがある車両後方ではなく、車体前方のガラス張りのところに、付近の地図であると思われるものが映し出される。中でも大きな光点が三つあり、その光点を小さな点が繋いでいる。
「これが座標と……ルートですか?」
「正解。中央が私たちのいるところで、右があなたの国。おまけに下が私たちの会ったところね」
「……遠回りをしているようですけど」
なるほど、とマキナの説明通りの状況にリスティは納得する。目覚めたときは遠く離れた異界のような気分だったが、こうして見ると国の壁から工場はほど近い。ただしルートは工場からではなく、この場所からの右回りとなっているのは、明らかな遠回りだったものの。
「このルートは安全志向だからね。出来るだけ《機械》がいないところを通る経路だから」
『大抵のグループは、こうして安全な経路を通行して暮らしています』
「まあこの経路なら絶対安全って訳じゃないけどねぇ」
もちろん更なる経路を開拓し、その経路を自分のものにして利益を得ようとする者は後をたちません――とは、イユの注釈。ほとんどが帰っては来ませんが、という言葉も。
「……わかりました。よろしくお願いします」
もちろんリスティとしては、一刻も早く故郷に帰りたいという思いが強いが、自分のわがままにマキナたちを巻き込むわけにはいかなかった。それに工場近くやリスティが警備していた国境は、特に《機械》の活動が活発だというのは、そこで働いていたリスティが最もよく知っている。
「よーし決まり! ……それでイユ? 今晩お祭りがあるっていう集落は?」
「え」
『こちらになります』
リスティ当人は、故郷に帰れるという希望からすっかり忘れていたのだが、あいにくマキナは恋ばなを忘れない性質の者のようだ。そうして新たに表示される四つ目の光点は、これからマキナたちが行く右回りのルートのすぐ近くであり。
「ちょっと急げばなんとか夜に着けそうね!」
「……もうなんでもいいです」
「それじゃ、出発!」
リスティを国に届けるためのルート選択とはいえ、あくまでリスティは客というか外様であって。本格的な決断についてマキナに逆らえるはずもなく、諦めきったリスティの言葉とともに、大型四輪は新たな駆動を始め出発していった。心なしかそのスピードは速く、脱力したリスティが座り込んでしまうほどに。
そうして集結していた車両たちは、蜘蛛の子を散らすように思い思いの行動を取るべく散らばった。安全な経路ということもあってか、リスティたちと共に走る車両の姿も見られたが、いつしかその姿を見られなくなっていた。もちろんリスティたちの大型四輪が、その安全な経路から少し外れて走り出しているからだけど。
「ほら、見てみて!」
「見てって……敵ですか!」
「ああ違う違う、そういうんじゃないから」
分かってはいたが大型四輪の運転はイユに全て任せているようで、一応は備えつけられている運転席は虚しく空席のままだ。リスティは亡き友人のものを持ってきた柄の手入れ、マキナは大型四輪の屋上で外の索敵をしていたために、急に中へ帰ってきたマキナにリスティは剣を持ち立ち上がるが、そういうのではないと前を指さした。
「……わぁ……!」
つられて前方を見たリスティの瞳に映ったものは、上空に浮かび上がっていく――いや、上空から降り注ぐ白銀のオーロラだった。戦闘体勢をとって立ち上がったリスティだったが、その光景に思わずみとれて感嘆の声まであげてしまう。
「アレは……どうしたんですか?」
『機械部品のバッテリーの充填ですね。この車もですが、月光によって動力を充填します。それが幾つもあそこに集中しているために、あのような現象が発生するように見えるでしょう』
「でもあんなに目立っちゃ、《機械》が集まってきちゃうんじゃ……!」
《機械》は月光を浴びて活動のためのエネルギーを充填しているというのは、リスティも警備隊員として使う武器である光刃を発生させる柄も同様のため、その経験から知っていた。しかし最初こそ、その光景の美しさに目を奪われてしまったものの、リスティはすぐにその可能性へと思い至る。言い方は悪いがイユまでもが現象を観測しているのならば、荒野を歩く《機械》たちも同様に、この場所に人間がいると理解する筈なのだから。
「でもそのグラサン男は、一年に一回のお祭りって言ったんだよね?」
「え、ええ……はい」
ただしターミナルで会ったサングラス男は、一年に一回あるお祭りだと言っていた。祭りがいつからやってるかは知らないが、あんなことをすればすぐさまその集落は壊滅し来年の祭りはないだろう。それともあの町には、《機械》を寄せ付けない『何か』があるのだろうか。
「まあ、すぐに分かるんじゃない? ……そろそろ着くみたいだから、さ」
そんなリスティの心中を知ってか知らずか、マキナはやはり微笑んでいた。
設定の羅列ばっかじゃねーかお前の話ぃ!