#26 要塞化
さて、今日のお話は、ここフリーダムの所有する山の山頂から、物語を始めよう。
「皆の者、キリキリ働け」
「「「「はい、インドニア・ザブラック様」」」」
朝もはよから、ロングスカートタイプのメイド服を着た一人の女エルフと、四十人の足軽風の男が一緒に作業中。何やら建設してる模様。
インドニア・ザブラックとか呼ばれてるエルフは、金髪で手足がすらっと長い、巨乳の美少女。だが、声が男。それも声質の悪い、鼻が詰まったみたいな酷い声。こいつも魔法の窯で融合した者だろう。
一方、足軽の方は背格好はもとより、顔の形まで全て同じ。いわゆる量産兵と言った所でしょう。
そんな彼らが何をしているかと申しますと……。
「今日中に基地を完成させるぞ」
エスポア軍との戦いに備えた拠点を作っていたのです。その為に木を切り倒し土台作りに励んでおります。
魔法の窯も山に移されて、今まで拠点として使ってたワタルの家から、拠点を本格的に入れ替えられる模様。
「おい! 水蓮サボるな!」
木陰に隠れていて分からなかったが、ポニーテールが似合う可憐な女の子が一人。食玩プラモなんぞ作っておりますが、こいつもれっきとした作業メンバーです。
水蓮は童顔に腰まで届く黄色いポニーテールにインドニア・ザブラックと同じメイド服を着たコンパクトグラマー。顔も凛として真面目そうですが、与えられた仕事をさぼり、プラモ作っちゃったりして、根は不真面目。これでは両津〇吉みたいなもの。大原大〇郎部長に叱ってもらわなくてはいけないな。
まあ、それはともかく。外見と中身 (性格や声) が一致しないのも、魔法の窯で理想のキャラクターになったからであり、理想のキャラクターに見た目が変わったからといって、都合よく中身が変わるものではない。だから水蓮のサボり癖もそのまま。
こんな奴に作業を任命したワタルの人選に問題があるな。
「まあまあ、インドニアそう怒らないで」
物陰から、中学生ぐらいの白髪のボブカットの少女がひょっこりと出て来て、水蓮を庇う。
体操着に真紅の襟付きマントという奇妙な格好のこいつの名はラセツ。無論、ラセツもトトイス一味の一員です。
しかし、こいつらを見ていると、コスチュームの統一感に欠ける。ま、それは軍団全体にもいえることだけどね。
「さ、水蓮。作業をしよ」
ラセツは水蓮を庇うのも程々に、作業する流れに持っていく。
「えー。めんどくさいなぁ」
けれども水蓮はかったるそうにして、腰を上げる気はまるでない。
「そう言わないで。それに、さぼってるとワタル様に叩きのめされるよ」
「わかった。やる」
ワタルの名を出されると、水蓮は身を震わせながら重い腰をどっこい上げて作業開始。それもこれも前の見せしめが効いたのだろう。皆、ワタルのことを恐れているので、完全に絶対君主としての地位を確かなものとしたと言える。
「あ~。めんどくさいな~」
しかし、水蓮のやる気のないのは相変わらず。だらけきった気持ちで取り組んでいる。
◇
「無理だ~~~~」
作業開始から数時間。お昼時になるとヤケクソ気味に、水蓮が大の字で地面に横たわる。
「おい、水蓮! またサボる気か?」
またしても作業をほっぽりだす水蓮に、インドニアは口を酸っぱくする。
「そもそもこの程度の人数でなんとかしようとするのが無理なんだよ。監督能力のある奴だっていないしさ」
「う……! 確かに……」
水蓮の言い分は最もだ。なにせ、私たち三人はしがないフリーター。そんなフリーターに現場責任者をやらせるなんて、無謀と言わざるを得ない。事実、三人共統率力はなく、好き勝手に作業させた結果、効率はいまいち。
「ワタル様もむちゃくちゃな命令を出してきたものだ」
それに作業の割に人数が少なく、基地建設は早くも暗礁に乗り上げていた。
「ちょっと休憩がてら、お昼にしようか」
ぶっ続けの作業で体も頭もへとへと。これでは効率は落ちるばかりなので、ここいらで休憩がてらお昼ご飯を食べようかと、切り出してみる。
「ラセツの意見に賛成」
水蓮が元気よく立ち上がると、私の考えに賛成してくれる。
「うーん……。その方はいいかも」
渋り気味ではあったが、インドニアも首を縦に振る。
そうと決まればお昼ご飯だ。
「みんなー! お昼ご飯だよぉ」
揃ってお昼休みをとるべく、足軽たちにもこのことを知らせる。
「「「「直ちに参ります」」」」
作業をしていた足軽たちは、私が指示すると作業をほっぽり出して駆け寄ってくる。
正直言って、彼らは 『仕事に忠実』 と言うよりも 『命令に忠実』 な性質の持ち主のようだ。
ま、それはともかく。私たちはブルーシートを敷き、持参したペットボトルのお茶とホイルに包まれたおむすびを出して、お昼ご飯を食べることに。
「腹減ってる時に食べる飯は美味いな♪」
おむすびをほうばりながら、水蓮はそんなこと言ってるが、全くもってその通りだと思う。
シンプルだけどおむすびは美味い。それに大人数の食事を賄うにも最適と言える。
そんなおむすびを皆で黙々食べてると。
「……」
一足先に食べ終えた水蓮が魔法の窯で何かしている。
「スイッチオン!」
なんと水蓮、見よう見まねで魔法の窯を動かしている。
魔法の窯は順調に動き、勢いよく物が飛び出す。
「おー、すげぇ! ポラリス潜水艦の完成だ♪」
出てきたのは全長百メートル以上の原子力潜水艦だった。
思い通りの結果にご満悦な水蓮。どうやら魔法の窯に入れたのは、サボってる時に作った食玩プラモのようだが、魔法の窯よりも遥かにデカい潜水艦がどうやって出てくるのはだろうか? 謎である。
「潜水艦なんぞ山で出してどうする」
インドニアが食事をほっほりだして寄って来て駄目出し。しかし、言ってることは最もだ。この山には小川や池があるものの、百メートルオーバーの潜水艦を使えるような深い場所はなく、無用の長物状態。
「でも、これで魔法の窯ででかい物も出せることがわかった」
自慢げに胸を張る水蓮。
「それがどうだという?」
しかし、インドニアには言葉の意味が理解できないらしく、首を傾げている。
「縮尺も自在に調節できるんだぜ」
「だから、それだどうした?」
「わかんねえかな。城や戦艦のプラモを実体化させれば即座に基地完成だぜ」
「!?」
驚くものの、インドニアは水蓮の言葉の意味を理解した。
「凄いぞ水蓮。お前天才だな」
そして、さっきまでガミガミ言ってた態度をころっと変えて水蓮を褒め称える。
「まあねぇ♪」
水蓮は鼻高々。完全に天狗になっている。
「水蓮、もうプラモはないのか?」
水蓮のやったことが上手くいくと分かると、インドニアは
「持ってきたのはポラリス潜水艦だけだ。でも、家に帰れば昔作ったのがある」
「すぐに持ってきてくれ」
「わかった。取ってくる」
かくして水蓮は拠点になりそうなプラモを持ってくるべく、一旦下山。
『瓢箪から駒』 と言わざるを得ないが、水蓮のやったことは軍団に大きく貢献したことに疑いの余地はない。基地建設は大きく前進するのであった。




